【2026年版・保存版】PFASの血液検査で何がわかる?何がわからない?国際参照値をわかりやすく解説
水道水や井戸水からPFAS(有機フッ素化合物)が検出された地域では、
「自分の体に、どれくらいPFASが入っているのだろう」
「一度、血液検査を受けた方がよいのだろうか」
「検査を受ければ、健康への影響までわかるのだろうか」
と不安を感じる方も少なくありません。
愛知県内でも、豊山町の住民が自主的にPFASの血液検査に取り組むなど、地域の曝露状況を把握しようとする動きがみられます。
しかし、PFASの血液検査は、受ければすべてがわかる検査ではありません。
血液検査でわかるのは、血液中に含まれている一部のPFASの濃度です。一方で、その人が病気になるか、現在の症状がPFASによるものか、どこから体内に入ったのかまでは判断できません。
この記事では、PFASの血液検査で「何がわかり、何がわからないのか」を整理したうえで、アメリカのNASEM、ドイツのHBM値、欧州食品安全機関(EFSA)が示す数値の意味と違いを、できるだけ中立に解説します。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断、治療、医療上の助言を行うものではありません。健康について不安がある場合は、医療機関や自治体の相談窓口へご相談ください。
- この記事のポイント
- 1.PFASの血液検査とは、何を測る検査なのか
- 2.血液中の数値は「今日飲んだ水」の量ではない
- 3.血液検査でわかること
- 4.血液検査でわからないこと
- 5.血中濃度の「基準値」と「参照値」は同じではない
- 6.国際的な考え方①|アメリカ・NASEM(2022年)
- 7.国際的な考え方②|ドイツ・HBM値
- 8.国際的な考え方③|欧州食品安全機関・EFSA(2020年)
- 9.NASEM・ドイツHBM・EFSAの違い
- 10.日本には血中濃度の公式基準があるのか
- 11.血液検査を受ける意味はあるのか
- 12.検査を受ける前に確認したいこと
- 13.検査結果をどう受け止めればよいか
- 14.事業者・井戸利用者・自治体が考えるべき順序
- よくある質問
- まとめ
- PFAS Solutions+からのご案内
- この記事について
- 主な参考資料
この記事のポイント
- PFASの血液検査でわかるのは、血液中に含まれる一部のPFASの濃度
- 数値は、過去から現在までの曝露を考える手がかりになる
- 病気の有無、症状の原因、将来の健康状態は判定できない
- アメリカ、ドイツ、EFSAでは、数値の目的と評価方法が異なる
- 日本には、個人の健康影響を判定する公式な血中濃度基準がない
- 数値は「健康か病気かを分ける線」ではなく、曝露低減や健康管理を考える材料
1.PFASの血液検査とは、何を測る検査なのか
PFASの血液検査では、血清または血漿に含まれるPFOS、PFOA、PFHxS、PFNAなど、特定のPFASの濃度を測定します。
結果は一般に、血液1ミリリットル当たりに何ナノグラム含まれているかを表す「ng/mL」という単位で示されます。
分析には、液体クロマトグラフ・タンデム質量分析法(LC-MS/MS)など、微量な化学物質を測定するための分析技術が用いられます。
ここで重要なのは、検査で測れるのはPFAS全体ではなく、検査項目として設定された一部の物質に限られることです。
PFASには非常に多くの種類があり、環境省も1万種類以上あると説明しています。血液検査の結果が低かったとしても、検査対象外のPFASを含め、すべてのPFASが体内に存在しないことを証明するものではありません。
2.血液中の数値は「今日飲んだ水」の量ではない
PFOSやPFOAなどの一部のPFASは、体内からゆっくり排出されます。
体内に入った物質の血中濃度が半分程度になるまでには、物質や個人差、研究による違いはあるものの、数年単位の時間がかかると考えられています。
そのため、血液検査の数値は、検査の直前に飲んだ水や食べた食品だけを反映するものではありません。
過去から現在までの飲料水、食品、生活環境、職業上の取扱いなど、さまざまな経路から体内に取り込まれ、現在も血液中に残っている量を示します。
したがって、PFASの血中濃度は、長期間の曝露を考えるための「バイオマーカー」の一つとして利用されます。
ただし、血中濃度だけから、いつ、どこで、どの経路から曝露したのかを正確に逆算することはできません。
3.血液検査でわかること
PFASの血液検査で直接わかるのは、採血した時点で、検査対象となったPFASが血液中にどれくらい含まれているかということです。
個人についてわかること
- 検査対象となったPFASの血中濃度
- 一般的な集団と比べて、血中濃度が高いか低いか
- 過去から現在までの曝露を考えるための一つの手がかり
地域や集団についてわかること
同じ地域に住む複数の人を同じ方法で調べれば、地域全体として血中濃度が高い傾向にあるかを検討できます。
飲料水などから継続的な曝露を受けていた可能性のある地域では、血液検査が地域の曝露実態を把握するための資料になる場合があります。
このように、血液検査は個人の病気を診断する用途よりも、個人または集団の「内部曝露」を把握する目的に適した検査です。
4.血液検査でわからないこと
血液検査の限界を理解することは、数値そのものを知ることと同じくらい重要です。
米国のATSDRは、PFASの血液検査について、検査対象となったPFASの量はわかるものの、健康問題の特定、治療方法の決定、将来の健康影響の予測には使えないと説明しています。
将来、病気になるかどうか
血中濃度が高いからといって、その人が将来、特定の病気になると予測することはできません。
反対に、血中濃度が低いからといって、将来の健康影響を完全に否定できるわけでもありません。
現在の症状がPFASによるものか
体調不良や検査値の異常があったとしても、その原因がPFASであると、血液検査だけで個人単位に断定することはできません。
PFASとの関連が研究されている健康影響の多くは、生活習慣、年齢、遺伝、他の化学物質への曝露など、さまざまな要因の影響も受けます。
どこから体内に入ったのか
血液検査だけでは、PFASが水道水、井戸水、食品、生活用品、職場などのどこから体内に入ったのかを特定できません。
汚染源を調べるには、水質検査、食品や環境の調査、過去の居住歴や職業歴など、別の情報が必要です。
体内にあるすべてのPFAS
検査機関によって、測定するPFASの種類は異なります。
検査対象になっていないPFASについては、血液中に含まれていても結果には表れません。また、測定法や対象物質が異なる検査機関同士では、結果を単純に比較できない場合があります。
血液検査でわかること・わからないこと
| わかること | わからないこと |
|---|---|
| 検査対象となったPFASの血中濃度 | 将来、病気になるか |
| 長期間の曝露を考える手がかり | 現在の症状がPFASによるものか |
| 集団や地域の曝露傾向 | PFASがどこから入ったか |
| 一般集団との相対的な比較 | 検査対象外を含むすべてのPFAS量 |
血液検査は「曝露の程度」を知る検査であり、「病名・原因・未来」を診断する検査ではありません。
5.血中濃度の「基準値」と「参照値」は同じではない
PFASの血液検査を理解するうえで、最も注意したいのが「基準値」という言葉です。
飲料水の水質基準や食品の摂取基準と、血液検査の結果を評価する数値は、目的も考え方も異なります。
海外で示されている血中濃度の数値も、必ずしも、
「この値以下なら安全」
「この値を超えたら病気」
という境界線ではありません。
数値によっては、臨床上のフォローを検討する目安、曝露低減を行う目安、集団のリスクを評価するための値、食品からの摂取量を導くための内部濃度など、それぞれ異なる目的で設定されています。
したがって、異なる機関の数値を単純に横並びにして、「どれが最も正しい基準か」と比較することはできません。
6.国際的な考え方①|アメリカ・NASEM(2022年)
米国の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)は2022年、PFASへの曝露歴がある人の検査と臨床的フォローアップについて、医療従事者向けのガイダンスを公表しました。
NASEMは、次の7種類のPFASを合計して評価する方法を示しています。
- PFMeOH(MeFOSAA)
- PFHxS
- PFDA
- PFUnDA
- PFOS
- PFOA
- PFNA
一般には、MeFOSAA、PFHxS、PFDA、PFUnDA、PFOS、PFOA、PFNAの7種類として示されます。
NASEMの段階的な考え方
| 7種類の合計値 | NASEMが示す考え方 |
| 2 ng/mL未満 | 通常の標準的な健康管理を行う |
| 2 ng/mL以上20 ng/mL未満 | 曝露源が確認できる場合は曝露低減を勧め、通常の診療の範囲で関連する健康項目に注意する |
| 20 ng/mL以上 | 曝露低減に加え、通常の健康管理の中で、より幅広い臨床的フォローを検討する |
2〜20 ng/mLの範囲では、脂質異常症、妊娠高血圧症候群、乳がんなどについて、年齢や既往歴などに応じた通常の検診を重視するとされています。
20 ng/mL以上では、これらに加え、甲状腺機能、腎臓がんや精巣がんの兆候、潰瘍性大腸炎などについて、通常の診療の中で注意を払うことが提案されています。
NASEMの数値を読む際の注意
NASEMの値は、病気を診断するためのカットオフ値ではありません。
また、PFASへの曝露と健康影響の関係には不確実性があり、米国のATSDRは、特定のPFAS血中濃度だけをもとに、追加の健康スクリーニングが必要かどうかを判断できる基準は確立していないと説明しています。
つまり、NASEMの提案は、米国における一つの専門家合意にもとづく臨床ガイダンスです。すべての機関が同じ数値と対応方針を採用しているわけではありません。
7.国際的な考え方②|ドイツ・HBM値
ドイツの環境庁に設置されたヒトバイオモニタリング委員会は、PFOAとPFOSについて、血清または血漿中の濃度を評価するHBM-I値とHBM-II値を設定しました。
HBM-I値
HBM-I値は、その値を下回る場合、現在の評価では健康への悪影響は想定されず、健康上の対応を必要としないとされる水準です。
| 物質 | HBM-I値 |
| PFOA | 2 ng/mL |
| PFOS | 5 ng/mL |
HBM-II値
HBM-II値は、その値を超えた場合、健康への影響が起こる可能性を否定できず、曝露源の確認や曝露低減などの対応が必要とされる水準です。
| 対象 | PFOA | PFOS |
| 妊娠可能年齢の女性 | 5 ng/mL | 10 ng/mL |
| その他の集団 | 10 ng/mL | 20 ng/mL |
妊娠可能年齢の女性には、発達への影響や生殖への影響に関する知見を考慮し、より低いHBM-II値が設定されています。
HBM-IとHBM-IIの間はどう考えるのか
HBM-Iを上回っているもののHBM-IIには達していない場合、「健康影響がある」と決まるわけではありません。
一方で、現在の知見では影響を十分な確実性をもって否定できない範囲とされ、曝露源の調査や曝露低減を検討する意味があります。
ドイツのHBM値も、個人の病気を確定する診断基準ではありません。集団を対象とした研究から導かれた評価値であり、個人のリスクを正確に数値化できるものではないことが、ドイツ環境庁の資料でも説明されています。
8.国際的な考え方③|欧州食品安全機関・EFSA(2020年)
欧州食品安全機関(EFSA)は2020年、食品中のPFASによる健康リスクを評価し、次の4種類を合計した耐容週間摂取量を設定しました。
- PFOA
- PFNA
- PFHxS
- PFOS
4種類の合計について、EFSAが設定した耐容週間摂取量(TWI)は、
体重1kg当たり、週4.4 ng
です。
EFSAの6.9 ng/mLとは何か
EFSAの評価では、子どものワクチン接種後の抗体応答に関する研究をもとに、1歳児の4種類合計の血清中濃度として17.5 ng/mLが出発点に用いられました。
そこから、母乳を通じた乳児への移行や体内動態をモデル計算し、母親の血清中濃度として4種類合計6.9 ng/mLが導かれ、それに対応する摂取量としてTWI 4.4 ng/kg体重/週が設定されました。
したがって、6.9 ng/mLは、一般の人が受けた血液検査を直接判定するための臨床基準ではありません。
食品からの長期的な摂取量を評価する過程で、母体と乳児の体内動態を考慮して推定された血清中濃度です。
NASEMやドイツのHBM値とは目的が異なるため、同じ意味の「血液検査基準」として単純比較しないことが重要です。
9.NASEM・ドイツHBM・EFSAの違い
| 機関 | 対象となるPFAS | 主な数値 | 目的・位置づけ |
| NASEM(米国) | 7種類の合計 | 2 ng/mL、20 ng/mL | 臨床上のフォローを考える段階的な目安 |
| HBM委員会(ドイツ) | PFOA、PFOSを個別評価 | HBM-I:2、5 ng/mL/HBM-II:5〜20 ng/mL | 内部曝露の評価と、曝露低減などの対応を考える目安 |
| EFSA(欧州) | PFOA、PFNA、PFHxS、PFOSの合計 | TWI 4.4 ng/kg体重/週、母体血清6.9 ng/mL | 食品からの長期的な摂取リスクを評価するための値 |
3つの機関では、
- 対象物質
- 合計か個別か
- 対象となる集団
- 数値を設定した目的
- 想定している健康影響
が異なります。
そのため、例えばNASEMの「7種合計20 ng/mL」と、ドイツの「PFOS 20 ng/mL」を、同じ意味の数値として比較することはできません。
共通しているのは、いずれも「この数値を超えた人は病気」という診断基準ではないことです。
10.日本には血中濃度の公式基準があるのか
日本には現在、個人の健康影響を判定するためのPFOS・PFOAの公式な血中濃度基準はありません。
環境省は、現時点では、どの程度の血中濃度で、どのような健康影響が個人に生じるかが明らかになっていないため、血中濃度に関する基準を定めることや、血液検査の結果だけから個人の健康影響を把握することは困難だと説明しています。
海外に血中濃度の評価値があることも環境省は認めていますが、これらは数値を超えた個人に健康障害が生じることを直接意味するものではなく、集団の状況把握や曝露低減などの対策を考えるための値だとしています。
つまり、日本では血液検査を受けること自体は可能でも、結果を個人の健康状態に結びつけて判定する「国内のものさし」は整備されていません。
なお、水道水に関する水質基準と、血液中の濃度を評価する基準は別のものです。水道水のPFOS・PFOAの水質基準が定められても、それによって個人の血液検査結果を判定できるようになるわけではありません。
11.血液検査を受ける意味はあるのか
血液検査には限界がありますが、だからといって、まったく意味がないとは言えません。
自分の内部曝露を知る手がかりになる
検査対象となったPFASについて、自分の血中濃度を知ることができます。
飲料水などを通じて長期間の曝露が疑われる場合には、曝露状況を考えるための具体的な資料になります。
地域全体の状況を把握できる
同じ地域の多くの住民を、同じ測定方法で調べることで、地域全体に共通する曝露傾向を検討できます。
その結果は、水質対策、曝露源調査、健康相談体制などを考えるための材料になる可能性があります。
曝露を減らす行動につなげられる
飲料水や井戸水が主な曝露源と考えられる場合には、水質検査を行い、必要に応じて安全が確認された水への切替えや、適切な浄水処理を検討するきっかけになります。
ただし、血液検査だけでは曝露源を特定できないため、水質検査などと組み合わせて考える必要があります。
必要以上の不安が和らぐ場合もある
検査結果を一般的な集団のデータなどと比較し、想定していたほど高くないことがわかれば、不安を整理する一助になることもあります。
ただし、数値が低いことも「絶対に安全」という保証ではありません。
12.検査を受ける前に確認したいこと
血液検査を検討するときは、価格だけでなく、次の点を確認することが重要です。
何種類のPFASを測定するのか
検査会社によって、測定対象となるPFASは異なります。「PFAS検査」と書かれていても、PFOSとPFOAだけの場合もあれば、複数のPFASを測定する場合もあります。
血清か血漿か
国際的な参照値には、血清または血漿を対象として設定されたものがあります。検査試料や分析方法が異なる場合、数値をそのまま比較してよいとは限りません。
分析法と検出下限
使用する分析法、定量下限、精度管理の方法を確認します。数値が小さい領域では、検査方法や検査機関による違いが比較に影響する場合があります。
どの参照値と比較するのか
NASEM、ドイツHBM、EFSAでは対象物質と目的が異なります。例えばNASEMの数値と比べるのであれば、NASEMが対象としている7種類と同じ物質を測定している必要があります。一部の物質しか測っていない結果を、7種類の合計値と比較することはできません。
結果について相談できるか
結果票だけが届き、説明や相談先が用意されていない検査もあります。検査前に、結果を誰と、どのように読み解くのかを考えておくことが大切です。
13.検査結果をどう受け止めればよいか
「高い・低い」だけで病気を判断しない
血中濃度は、健康か病気かを分ける境界線ではありません。高い数値は、曝露が比較的大きかった可能性を示す情報にはなりますが、病気の診断ではありません。
結果だけで曝露源を決めつけない
水道水や井戸水が疑われていても、食品、過去の居住地、職場など、ほかの曝露経路が関係している可能性があります。曝露源を検討する場合は、現在と過去の水質情報、生活歴、職業歴などをあわせて確認します。
減らせる曝露を減らす
現在も高濃度のPFASを含む水を継続して飲んでいる可能性がある場合は、まず水質を確認することが重要です。飲み水に問題が確認された場合は、自治体や水道事業者の情報を確認し、安全が確認された水への切替えなど、現実的な曝露低減策を検討します。
通常の健康管理を丁寧に続ける
PFASだけに注目して、必要以上の検査を自己判断で繰り返すのではなく、年齢、性別、家族歴、既往歴などに応じた通常の健康診断やがん検診を続けることが基本です。
一人で抱え込まない
検査結果に不安がある場合は、かかりつけ医、地域の保健所、自治体の相談窓口などに相談してください。妊娠中の方、妊娠を考えている方、子どもの検査を検討している方は、検査の利点と限界を医療者と相談したうえで判断することが望まれます。
14.事業者・井戸利用者・自治体が考えるべき順序
地下水や井戸水を利用する事業者、地域住民への対応を行う自治体では、血液検査だけを出発点にするのではなく、次の順序で整理することが重要です。
1.水の状況を確認する
- 水源
- 原水
- 浄水後の水
- 蛇口での水
- 過去の測定結果
- 周辺井戸や河川の状況
を確認します。
2.現在の曝露を減らす
飲用水からの曝露が疑われる場合には、水源の切替え、利用制限、適切な浄水処理など、現在の曝露を減らす対策を優先します。
3.曝露範囲を整理する
対象地域、利用者数、利用期間、井戸の使用状況、食品や職業を通じた可能性などを整理します。
4.必要に応じて健康面の対応を検討する
血液検査を行う場合は、
- 何のために行うのか
- どのPFASを測定するのか
- どの集団と比較するのか
- 結果を誰が説明するのか
- 高い結果が出た場合に、どのような相談体制を用意するのか
まで、事前に設計する必要があります。
血液検査は「原因を確定する検査」ではなく、地域の内部曝露を把握する一つの手段として位置づけるのが適切です。
よくある質問
Q.血液検査を受ければ、PFASによる病気かどうかわかりますか?
いいえ。血液検査でわかるのは、検査対象となったPFASの血中濃度です。現在の病気や症状がPFASによるものかを診断したり、将来病気になるかを予測したりすることはできません。
Q.数値が高いと、必ず健康被害が出ますか?
必ずしもそうではありません。
血中濃度と集団レベルの健康影響との関連を示す研究はありますが、個人が病気になるかどうかは、血中濃度だけでは決まりません。
数値が高めの場合は、病気の診断と考えるのではなく、現在の曝露源を確認し、減らせる曝露を減らし、通常の健康管理を丁寧に行うための材料として受け止めます。
Q.数値が低ければ安全ですか?
低いことは一つの参考になりますが、「この値以下なら将来にわたって絶対に安全」と保証するものではありません。また、測定していないPFASについては結果に含まれません。
Q.日本にはPFASの血中濃度基準がありますか?
個人の健康影響を判定するための公式な血中濃度基準は、現在の日本にはありません。海外には評価値を設定している例がありますが、目的や対象物質が異なるため、数値の意味を確認して利用する必要があります。
Q.NASEM、ドイツHBM、EFSAのどれを使えばよいですか?
一つを「正解」として選ぶことはできません。
NASEMは7種類の合計値を用いた臨床フォローの目安、ドイツHBMはPFOAとPFOSの内部曝露に対する評価値、EFSAは食品からの摂取量を評価するための考え方です。
検査対象となった物質と、参照値の目的が一致しているかを確認する必要があります。
Q.EFSAの6.9 ng/mLを超えたら危険ですか?
そのように単純には判断できません。6.9 ng/mLは、EFSAが食品からの耐容週間摂取量を導く際に、母体と乳児の体内動態モデルから推定した、母親の血清中の4種類合計濃度です。一般の血液検査の結果を直接診断するためのカットオフ値ではありません。
Q.検査はどこで受けられますか?
一部の民間検査機関や医療機関が受託しています。ただし、測定項目、採血方法、分析法、料金、結果の説明体制は検査機関によって異なります。検査を申し込む前に、何種類のPFASを測るのか、結果について相談できるのかを確認してください。
Q.検査費用はいくらですか?
測定するPFASの種類や採血方法などにより異なります。料金は検査機関へ直接確認してください。価格だけでなく、測定物質、分析法、精度管理、結果の説明体制を含めて比較することが重要です。
Q.妊娠中や妊娠を考えている場合は、検査を受けた方がよいですか?
一律に受検が必要とは言えません。
国際的な評価では、胎児や乳児への影響を考慮した検討が行われていますが、検査結果だけで健康影響を判断できるわけではありません。地域の水から高濃度のPFASが検出されているなど、具体的な曝露の可能性がある場合には、まず飲み水の安全性を確認し、検査の必要性を医療者や自治体に相談してください。
まとめ
PFASの血液検査でわかるのは、検査対象となったPFASが、採血した時点で血液中にどれくらい含まれているかということです。
一部のPFASは体内からゆっくり排出されるため、血中濃度は過去から現在までの曝露を考える手がかりになります。
一方で、血液検査だけでは、
- 病気かどうか
- 現在の症状がPFASによるものか
- 将来、健康影響が起きるか
- PFASがどこから体内に入ったか
- 検査対象外を含むすべてのPFAS量
を判断することはできません。
アメリカのNASEM、ドイツのHBM値、EFSAが示す数値は、対象物質も目的も異なります。
いずれも、血液検査の数字だけで健康と病気を分けるものではありません。
また、日本には、個人の健康影響を判定するための公式な血中濃度基準がありません。
だからこそ、血液検査の結果を「答え」として見るのではなく、
- 現在も曝露が続いていないか
- 飲み水などの曝露源を確認できるか
- 減らせる曝露があるか
- 通常の健康管理をどう続けるか
を考えるための材料として使うことが大切です。
数字は、病気や未来を決めるものではありません。
必要以上に恐れず、反対に安心しすぎず、正しい意味を理解したうえで、これからの曝露低減と健康管理に役立てることが、PFASの血液検査との現実的な向き合い方です。
PFAS Solutions+からのご案内
地下水や井戸水を利用する事業者、自治体、施設管理者の方に向けて、PFASの水質リスクの整理、検査項目の検討、曝露低減策、除去方法、情報公開の進め方などに関する情報を提供しています。
血液検査だけで原因を判断するのではなく、まず水源・原水・浄水・利用地点の状況を整理し、現在の曝露を減らすことが重要です。
- PFASリスク診断ツール
- PFAS対策の進め方ガイド
- PFASの水質検査・分析
- PFAS除去方法の比較
- 事業者・自治体向け相談窓口
この記事について
この記事は、東海地域を拠点にPFASのリスク評価・対策支援に取り組むPFAS Solutions+が、公表された行政資料、国際機関および専門機関の資料にもとづき、中立的に整理した解説記事です。
記事内には当方のサービスへの案内を含みますが、本文の解説はそれとは独立して、公表情報にもとづいて作成しています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断、治療、医療上の助言を提供するものではありません。国際的な参照値や科学的知見は、今後の研究や評価によって見直される可能性があります。
健康について不安がある場合は、医療機関、保健所または自治体の相談窓口へご相談ください。
主な参考資料
- National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine, “Guidance on PFAS Exposure, Testing, and Clinical Follow-Up”(2022)
- Agency for Toxic Substances and Disease Registry, “Testing for PFAS” および医療従事者向け臨床情報
- German Environment Agency, Human Biomonitoring Commission, HBM-I/HBM-II values for PFOA and PFOS
- European Food Safety Authority, “Risk to human health related to the presence of perfluoroalkyl substances in food”(2020)
- 環境省「PFOS、PFOAに関するQ&A集」
- 環境省「PFASハンドブック」
































