【第3回】PFAS専門家会議(2023年6月15日)完全解説|Q&A集9問の骨格確定と対応の方向性の合意内容
2023年6月15日、東京・八重洲の「AP東京八重洲 ROOM P」。「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」の第3回が開催されました。
この回は「住民への情報発信」が中心テーマ。PFASに不安を感じている人々に科学的に正確でわかりやすい情報をどう届けるかが本格的に議論され、Q&A集の内容骨格が確定しました。
この記事では、第3回の会議について、公式資料をもとに詳しく解説します。
第3回が開かれた背景
第2回(2023年3月)でPFAS全体への対応方針の骨格が固まったことを受け、第3回では「国民へどう伝えるか」という実践的な課題が焦点になりました。
当時、各地でPFAS汚染が報道されるたびに住民から「健康への影響は?」「水道水は飲んで大丈夫?」「血液検査を受けるべき?」という声が相次いでいました。しかし国としての統一的な回答がなく、自治体ごとに対応がばらついていました。
こうした状況を解消するため、第3回では「国が責任を持って住民の疑問に答えるQ&A集」の内容を固めることが最大の目標となりました。
会議の基本情報
- 開催日時 2023年(令和5年)6月15日(木)10:00〜12:00
- 開催場所 AP東京八重洲 ROOM P(東京都中央区八重洲2丁目)
- 開催形式 対面・オンライン併用/YouTube公開事務局環境省 水・大気環境局 水環境課基準係
※第3回から会場が霞が関の環境省庁舎から民間会議室(AP東京八重洲)に変わりました。
配付資料一覧
資料1 国民への情報発信のためのQ&A集(案)
資料2−1 PFASに関する今後の対応の方向性(案)
資料2−2 PFOS・PFOA以外のPFASへの対応(案)(優先順位付けの考え方)
参考資料1 PFOS及びPFOAに関する対応の手引き
参考資料2 化学物質の人へのばく露量モニタリング調査・エコチル調査の概要
参考資料3 国内のPFAS関連研究について
参考資料4 土壌におけるPFOS・PFOA・PFHxSの測定方法について
参考資料5 環境基準項目・要監視項目・要調査項目について
参考資料6 PFOS・PFOAに係る国際動向
参考資料7 PFOS・PFOA以外のPFASに係る国際動向
参考資料8 第2回会議資料抜粋・議事録
議事次第
- 開会
議題 - (1)国民への情報発信及びリスクコミュニケーションの在り方について
(2)PFASに対する対応の在り方について
(3)その他 - 閉会
第3回で確認・決定されたこと
決定事項①:Q&A集9問の内容骨格の確定
住民向けQ&A集について、以下の9問の骨格と各回答の方向性が確定しました。
- Q1 なぜ製造・輸入禁止になったのか 難分解性・高蓄積性・長距離移動性という3つの性質から予防原則で規制
- Q2 環境中の濃度は増えるのか → 製造禁止後は全体的に減少傾向。ただし局所汚染は継続
- Q3 体に入ったら一生残るのか → 残り続けるわけではない。半減期はPFOS約5.7年、PFOA約3.2年
- Q4 水道水は大丈夫なのか → 暫定目標値以下で管理。国内で摂取が原因の健康被害は確認されていない
- Q5 日本の基準50ng/Lは甘すぎないか → 2020年時点の科学的知見に基づく計算値。現在も見直し検討中
- Q6 血液検査で健康影響がわかるか → 濃度測定は可能だが個人の健康影響判断は困難
- Q7 家庭の消火器は危ないか → 住宅用消火器には含まれていない
- Q8 泡消火薬剤の代替は進んでいるか → 各省庁で代替を推進中
- Q9 日用品(フライパン等)は危ないか → フッ素コーティングはPFOS・PFOAとは別物質。特段の心配不要
決定事項②:「対応の方向性」骨格の委員間合意
次回第4回での正式取りまとめに向け、主な合意内容は以下の通りです。
合意点1:水質基準への格上げを方向性として盛り込む
「暫定目標値を水質基準に格上げする」ことを「対応の方向性」に明記することで委員間の合意が得られました。
合意点2:自治体への技術支援の強化
汚染地域の自治体が対応に困っているという実態を受け、国が対応手引き・技術支援を充実させることが確認されました。
合意点3:血液検査への対応方針の確定
住民から「血液検査を受けたい」という声が多い一方で、個人の健康影響判断が困難という科学的限界を正直に伝えることが方針として確定しました。
合意点4:健康状態把握の方法
個人の血液検査に依存せず、「地域全体の健康指標(既存統計)を活用して集団としての健康状態を把握する」という公衆衛生的アプローチを採用することが決定しました。
確認事項③:リスクコミュニケーションの3原則
委員間の議論を通じて、住民への情報発信における以下の3原則が確認されました。
- 科学的誠実さ:科学的に不確かな部分は「わかっていない」と正直に伝えること
- 不安への寄り添い:住民の不安に寄り添いながら、過度な恐怖を煽らないこと
- 過剰反応の防止:行政・水道事業者・住民の三者間の信頼関係を構築すること
第3回の重要ポイント
ポイント①:「血液検査」への対応が難問だった
「PFAS汚染地域の住民が血液検査を受けたいと思っている」という現実に対し、専門家会議は慎重な立場を取りました。
理由は「血中濃度が測定できても、それだけで個人の健康影響を判断することができない」という科学的事実です。
「検査を受けたい」という住民の気持ちを尊重しながら、「検査結果が出ても個人への具体的な対処につながらない可能性がある」という限界を、誠実に伝えることの重要性が確認されました。
ポイント②:健康状態把握の方法論が確立された
個人の血液検査に頼るのではなく、「地域全体としての健康指標(がん罹患率・低体重児の割合など)を既存統計で追跡する」という公衆衛生的なアプローチが提案されました。これが後に「自治体による健康状態の把握」の方針として具体化されていきます。
ポイント③:「正確さ」と「わかりやすさ」のバランス
Q&A集の内容検討では、科学的に不確定な部分についてどの程度まで断言できるか、専門家の間で慎重な検討が行われました。「正確であること」と「住民にわかりやすく伝えること」の両立が、この会議の最大の挑戦でした。
第3回で示された今後の方向性
第3回を受けて、以下の方向性が示されました。
- Q&A集を第4回までに完成させ、「対応の方向性」と同時に公表する
- 「対応の方向性」を第4回で正式に取りまとめる
- 自治体が既存統計を使って地域の健康状態を把握する具体的な方法を整理する
- 対応の手引きを充実させ、自治体への技術支援を強化する
まとめ
第3回専門家会議は「国民への情報発信の質と方針を確立した」回です。
特にQ&A集の内容骨格が確定したことで、「国として何を・どう伝えるか」という情報発信の基準が生まれました。「科学的に不確実な部分を正直に伝えながら、住民の不安に誠実に応える」というリスクコミュニケーションの姿勢がここで固まり、以降の自治体・水道事業者の住民対応の参考資料になっています。
次の第4回では、この会議の最大の成果物「PFASに関する今後の対応の方向性」が正式に取りまとめられます。
資料・議事録へのリンク
議事次第・配付資料:https://www.env.go.jp/water/pfas/pfas_00003.html
議事録:https://www.env.go.jp/content/000144326.pdf









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