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2026年4月1日|PFOS・PFOA 水質検査 義務化スタート 省令公布済(2025年6月30日) 務化で何が変わるか →

明石市の水道料金が最大56%値上がりへ|なぜPFAS汚染が家計を直撃するのか【初心者向け解説】

2026.04.16

明石市の水道料金が最大56%値上がりへ
なぜPFAS汚染が「家計の問題」になったのか、チラシの内容を徹底解説

2026年4月15日、明石市上下水道局が全戸配布した新聞折込チラシに「令和9年度から水道料金を約21%値上げする」という内容が記されていました。値上げの背景には老朽化・人口減少だけでなく、長年にわたるPFAS汚染による「水源の切り替え」という大きなコストが横たわっています。チラシに書かれていないことも含め、初心者にもわかるよう丁寧に解説します。

「水道料金が上がる」というニュースは、一見するとお金の話に見えます。でも今回の明石市の値上げには、川の水がPFASという化学物質で汚染され、もう使えなくなっていくという、深刻な環境問題が深く関わっています。チラシには「経営が苦しいから値上げします」とあっさり書かれていますが、その「経営が苦しくなった理由のひとつ」を丁寧に読み解くと、明石川のPFAS汚染問題と一本の線でつながります。

まず「チラシ」に書いてあることを整理しよう

2026年4月15日(今日)、明石市上下水道局が新聞折込で配布したチラシ「あかしの上下水道」には、大きく3つのことが書かれています。

チラシの主な内容(3点)

  • 審議会(専門家や市民代表の会議)から「水道料金の値上げが必要」という答申(提言)を受け取った
  • 令和9年度(2027年度)から約21%の値上げを行う方針
  • 市民から意見を募集する(意見公募)説明会を2026年5月17日〜5月26日に開催する

チラシの裏面には、世帯別の具体的な値上げ額が示されています。

 これは1カ月あたりの水道料金(税込み)です。

実際の請求書は2カ月分まとめて届くため、この約2倍の金額+下水道使用料が加算されます。各家庭の実際の使用量により変わります。

なぜ値上げが必要なの? ── チラシが説明している3つの理由

チラシには、値上げが「避けられない」理由として3つが挙げられています。ひとつずつ、噛み砕いて説明します。

理由① 水道の使用量が減っている(収入が減った)

節水機器の普及や人口の減少によって、家庭・企業が使う水の量が年々減っています。水道局は水を売って収入を得る事業ですが、売れる量が減ればそのまま収入が減ります。明石市は平成17年(2005年)から約20年間、料金を上げずに維持してきましたが、収支がとうとう赤字に転落しそうな状況になっています。

理由② 水道管などの設備が老朽化している(支出が増えた)

高度経済成長期に整備された水道管は、全国的に老朽化が進んでいます。明石市も例外ではなく、古い水道管の更新(交換)工事が必要になっています。これに加えて物価高騰が工事費を押し上げており、支出が増えています。

理由③ 水源を切り替えなければならない(追加コストが発生)

そしてこれが、PFAS問題と直結する部分です。チラシには「水源転換による安定的な水源の確保が必要」と書かれています。これは明石川からの取水をやめ、阪神水道企業団から水を買うという計画のことです。

なぜ水源を切り替えなければならないのか?

明石市の水道水の主な水源は明石川です。しかしその明石川が、PFAS(有機フッ素化合物)という化学物質で高濃度に汚染されていることがわかっています。浄水処理で基準値以下には抑えられているものの、住民の血中PFAS濃度が全国有数の高さを示しており、市は2028年度中に明石川からの取水を完全に廃止する方針を決定。その代替として阪神水道企業団から水を購入することにしました。この「新たな水の調達コスト」が経営を圧迫する大きな要因のひとつです。

PFASって何? なぜ危ないの? ── 初めての方へ

このチラシを読んで「PFASって何?」と思った方も多いはずです。改めて基本から説明します。

PFASとは何ですか?

PFAS(ピーファス)とは、人間が作り出した化学物質の一種で、1万種類以上の物質の総称です。フライパンのコーティング(テフロン加工)、防水スプレー、泡消火剤、半導体の製造など、さまざまな製品に使われてきました。水や油をはじく性質があり、熱にも強いため、長い間「便利な素材」として使われてきました。

なぜ危険と言われているのですか?

PFASは自然界ではほとんど分解されません。一度環境中に放出されると、土や川、地下水にずっと残り続け、水や食べ物を通じて人間の体内に入り込み、長期間にわたって蓄積されます。このため「永遠の化学物質」とも呼ばれています。欧米の研究では、腎臓がんや免疫機能の低下、子どもの発育への悪影響などとの関連が報告されており、WHO(世界保健機関)の下部機関は代表的なPFASについて「ヒトに対して発がん性がある」と分類しています。

日本の水道水には規制がありますか?

2026年4月(今月)から、水道法の水質基準に正式に追加され、PFOSとPFOAの合計で1リットルあたり50ナノグラム(ng/L)以下という基準値が法的に義務化されました。これまでは「努力目標」に過ぎませんでしたが、今後は超えた場合に改善が法的に求められます。ただし、米国の基準(4 ng/L)と比べると日本の基準値は約12倍緩く、今後のさらなる見直しが議論されています。

明石川のPFAS汚染 ── これまでの経緯をわかりやすく整理

明石川のPFAS問題は、ある日突然起きたわけではありません。少なくとも2019年頃から高濃度の汚染が確認されていましたが、市民に伝わるまでに長い時間がかかりました

2019年度:環境省の全国調査で明石川のPFAS濃度が105〜145 ng/Lと基準値(50 ng/L)の2〜3倍に達することが判明。明石市は浄水場の活性炭交換を増やして対応するが、市民への説明はほとんどなかった。
2021年12月:神戸市が明石川に流れ込む水路で33,000 ng/L(基準値の660倍)を検出。しかしこの事実は市民に公表されず、情報公開請求によって後日発覚。
2023年10月:丸尾牧・兵庫県議が独自調査を実施。神戸市西区押部谷の水路から10万 ng/L(基準値の2,000倍)を検出。周辺に産業廃棄物最終処分場が存在することから、産廃由来の汚染が強く疑われる。
2024年7月:情報公開請求をきっかけに朝日新聞・読売新聞・神戸新聞が一斉報道。明石川のPFAS汚染が初めて広く市民に知られる。
2024年9月:市民団体が明石市民33人の血液検査結果を発表。4種PFASの合計平均値が22.9 ng/mLで、約半数がアメリカの「要注意ライン(20 ng/mL)」を超えていた。東京・多摩地区の平均(3.8 ng/mL)を大幅に上回る深刻な数値。
2025年2月:神戸市・明石市が共同で環境大臣に要望書を提出。規制強化・財政支援・汚染源除去を求める。
2025年6月:明石市内の井戸2カ所(魚住町・二見町)から基準値超えのPFASを検出。10月の追跡調査でも再確認。地下水への汚染拡大が判明。
2026年4月:水道法改正施行(PFAS検査が法的義務化)。明石市は阪神水道企業団からの受水に切り替えて明石川取水を大幅削減。そして本日(4/15)、水道料金値上げのチラシが全戸配布される。

チラシが「書いていないこと」─ PFAS Solution+ (旧PFAS研究所)の視点

今回のチラシには「経営が苦しい」「水源転換が必要」と書かれていますが、その背景にあるPFASという言葉は一切登場しません。PFAS Solution+ (旧PFAS研究所)として、チラシから読み取れる「行間」を3点指摘します。

視点① 「水源転換」の本当の理由はPFAS汚染

チラシには「水源転換による安定的な水源の確保が必要」と書かれています。しかしなぜ水源を転換しなければならないのか、その理由は書かれていません。明石川のPFAS汚染がなければ、この多額のコストは発生しませんでした。市民が「なぜ値上げなのか」を正確に理解するためには、PFAS汚染の存在を知ることが不可欠です。

視点② 汚染した側のコストは?

水道料金の値上げは市民が負担します。しかし、汚染の原因とされる産業廃棄物処分場の事業者には、現時点で排水のPFASを規制する法的基準が存在しません。汚染を生み出したコストを市民が水道料金として払うという構造は、果たして公平なのでしょうか。神戸市・明石市が国に求めている「排水規制の整備」と「汚染源除去への財政支援」が実現しない限り、この問題は続きます。

視点③ 取水をやめても川の汚染は残る

2028年度に明石川からの取水を廃止すれば、水道水へのPFAS混入リスクは下がります。しかし、明石川そのものの汚染はなくなりません。川の水を農業用水として使っている農家、明石川で漁をする漁業関係者、川辺で遊ぶ子どもたちへの影響は続きます。「蛇口の先を変える」だけでは、問題の根本は解決していません。

市民ができること ── 意見公募に参加しよう

今回のチラシには、市民が意見を言える機会が明記されています。水道料金の値上げについて、あるいはPFAS問題の解決について、声を届けることができます。

意見公募の概要(チラシより)

  • 募集期間:令和8年(2026年)5月11日(月)〜6月12日(金)
  • 提出方法:Webフォーム・郵送・ファクシミリ・Eメール・持参
  • 提出先:明石市上下水道局 経営管理室 水道経営課(TEL:078-918-5064)
  • Eメール:meisuikei@city.akashi.lg.jp
説明会

説明会も全6回、開催されます(事前申込不要・⑥のオンラインのみ要申込)。

回 日時        : 会場
①5月17日(日)10時〜 : 花と緑の学習園 講習室
②5月17日(日)14時〜 : 市役所南会議室棟1階会議室
③5月23日(土)14時〜 : 大久保市民センター2階会議室
④5月24日(日)10時〜 : 魚住市民センター3階会議室
⑤5月24日(日)14時〜 : 二見市民センター1階会議室
⑥5月26日(火)19時〜 : オンライン(要事前申込)

まとめ ── 「水道料金値上げ」を入口に、もっと大きな問題を知ってほしい

今日届いたチラシ1枚には、表面には書かれていない大きな背景があります。整理すると、こうなります。

PFASで汚染された川に依存していた水道システムを切り替えるコストが、市民の水道料金に転嫁されています。汚染源に対する法的な排出規制がなく、浄化費用を市民が負担するという構造は、まだ変わっていません。このチラシを受け取ったら、ぜひ説明会に参加し、「値上げの理由」の背景まで問いかけてみてください。

出典:明石市上下水道局「あかしの上下水道」折込チラシ(2026年4月15日発行)、明石市上下水道局経営管理室 水道経営課、神戸新聞(2024年5月・7月・9月)、環境省「水質基準に関する省令の一部改正」(2025年6月30日)、農林水産省「令和6年度国産農畜水産物PFAS含有実態調査」(2025年8月)。本記事はPFAS Solution+ (旧PFAS研究所)が公開情報および配布資料をもとに独自に解説したものです。

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