お問い合わせ
2026年4月1日|PFOS・PFOA 水質検査 義務化スタート 省令公布済(2025年6月30日) 務化で何が変わるか →

PFOS・PFOA水道水問題|全国12自治体の対応事例を徹底比較まとめ【2024年最新】

2026.03.26

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)——「永遠の化学物質」とも呼ばれるこれらの有機フッ素化合物(PFAS)が、水道水の安全性をめぐる重大な問題として全国各地で顕在化しています。
国土交通省は令和6年11月29日、全国の水道事業者等による対応事例12件を「水道事業者等によるこれまでのPFOS及びPFOA対応事例について」として取りまとめ公表しました。本記事では、その12事例のすべてを横断的に比較・分析し、水道事業者・自治体担当者・研究者・そして一般市民の皆さんにとって役立つ情報をお届けします。

PFOS・PFOAとは何か:基礎知識

物質の特性

PFOSとPFOAは、有機フッ素化合物の一種で、炭素とフッ素の化学結合が極めて強固であることから、自然環境ではほとんど分解されません。主な特性は以下の通りです。

  • 難分解性:土壌・水中・生物体内で分解されにくい
  • 高蓄積性:生物の体内に蓄積しやすい
  • 長距離移動性:大気・水を通じて遠方まで運ばれる
  • 水溶性・不揮発性:水系環境に移行しやすい

これらの特性から、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の規制対象となり、PFOSは2010年、PFOAは2021年に国内で製造・輸入等が原則禁止されています。

主な汚染源

  • 泡消火薬剤(軍・空港・石油コンビナートで使用)
  • 半導体・液晶ディスプレイ製造
  • 金属メッキ処理
  • フッ素コーティング製品の製造工程

健康影響と規制値

PFOSとPFOAは、動物実験で肝臓機能への影響などが確認されており、人においてはコレステロール値の上昇との関連が報告されています。ただし、どの程度の摂取量で健康影響が生じるかについては、いまだ科学的知見が集積中です。
日本の水道水暫定目標値:PFOS+PFOAの合算値で50ng/L以下(2020年設定)
この値は、体重50kgの人が一生涯にわたって毎日2リットルの水を飲み続けても健康への悪影響が生じないと考えられる水準を基に設定されたものです。
なお、各国の規制値を比較すると以下のようになります。

国・機関 PFOS  PFOA
日本(2020年) 50ng/L(合算値) 50ng/L(合算値)
米国(2024年) 4ng/L  4ng/L
英国(2022年) 100ng/L 100ng/L
ドイツ(2017年) 100ng/L 100ng/L
WHO(暫定案)  100ng/L 100ng/L

全12自治体の対応事例一覧

事例一覧表
No. 自治体 事業規模 水源種別 最大検出濃度 主な対応
兵庫県明石市 大規模 湖沼・深井戸・受水 超過(原水) 水源比率変更・活性炭強化・水源切り替え計画
沖縄県企業局 大規模 表流水・ダム・浅井戸・海水 937ng/L(大工廻川) 低濃度水源取水増量・粒状活性炭改善・取水堰工事
神奈川県座間市 中規模浅・深井戸・受水 100ng/L(第3水源) 第3水源取水停止・受水増量
群馬県渋川市 中規模 表流水・伏流水・深井戸等 超過(原水) バルブ操作で揚水量減少・水質検査強化
岐阜県各務原市 中規模 深井戸 99ng/L(原水) 既設曝気槽活用の粒状活性炭システム整備
愛知県北名古屋水道企業団 中規模 深井戸・受水 175ng/L(豊山原水) 高濃度井戸取水停止・受水増量
三重県桑名市 中規模 深井戸 290ng/L(給水栓) 多度中部送水場の停止・別系統切り替え
大阪広域水道企業団(四條畷) 中規模 深井戸・受水 超過(浄水場出口・給水栓) 田原浄水場廃止・受水恒久化
兵庫県宝塚市 中規模 浅・深井戸55ng/L(原水) 54ng/L(給水栓) 取水量半減→完全停止・他系統増強
岡山県吉備中央町 小規模 ダム・浅井戸・受水 超過(給水栓) 飲用制限措置・広域受水全量化工事
沖縄県金武町 小規模 表流水・ダム・浅井戸・受水複 数水源で超過 全地下水源廃止・沖縄県企業局全量受水

対応パターンの分類と分析

国土交通省の事例集では、対応を「応急的対応」と「中期的対応」に大別しています(新たな施設整備を伴わないものを応急的対応、施設整備を伴うものを中期的対応と整理)。

【対応パターン1】水運用による対応(最多)

最も多くの事業者が採用した対応が「水源の切り替えや取水量の調整による水運用」です。

具体的な手法:
  • 高濃度水源からの取水停止・減量
  • 代替水源(他の井戸・受水・河川水等)への切り替え
  • 水源間の混合比率の調整

採用事例: 長野市(①)、座間市(④)、渋川市(⑤)、北名古屋水道企業団(⑦)、桑名市(⑧)、四條畷(⑨)、宝塚市(⑩)、金武町(⑫)
この対応は即効性が高く、施設整備を伴わないため迅速に実施できる点が最大のメリットです。一方で、代替水源の確保が前提となるため、代替がない場合は他の対応が必要になります。

【対応パターン2】活性炭処理による浄水処理強化

次に多く採用されたのが、粒状活性炭(GAC)または粉末活性炭(PAC)を用いた浄水処理の強化です。

粒状活性炭(GAC)の活用:
  • 交換周期の短縮(明石市②)
  • 高性能炭への変更(沖縄県企業局③)
  • 既設曝気槽への充填(各務原市⑥)
  • ろ過池への敷設(金武町⑫)
粉末活性炭(PAC)の活用:
  • 原水への直接投入(明石市②の鳥羽浄水場)

活性炭処理はPFAS除去に有効な技術として確認されており、既存施設を活用できる場合は比較的低コストで実施可能です。ただし、活性炭の交換・廃棄には適切な管理が必要です。

【対応パターン3】受水への全面切り替え・浄水場廃止

汚染が深刻または原因特定が困難な場合、より抜本的な対応として「浄水場廃止と受水への全面切り替え」が選択されています。
採用事例: 四條畷水道事業(⑨)、金武町(⑫)、吉備中央町(⑪)
これらの事例に共通するのは、汚染が複数水源・広範囲に及ぶか、または原因特定が困難で浄水処理強化での対応が困難と判断されたことです。

【対応パターン4】浄水処理システムの新規整備

各務原市(⑥)のように、既存施設を改造して新たな浄水処理システムを整備する対応です。代替水源がなく、活性炭処理を恒久的に組み込む必要がある場合に選択されます。

水質検査・情報公開の取り組み比較

水質検査の強化

すべての事例において、PFOS・PFOA問題の発覚後に水質検査の頻度と地点数を強化しています。主な取り組みとしては:

  • 原水・中間・給水栓の全段階での検査(超過箇所の絞り込み)
  • 月1回以上の高頻度検査(問題水源の継続監視)
  • 年1回の全水源検査(日常的なベースライン確認)

長野市が設けた独自の管理基準(25ng/L未満)は、国基準の半分という厳しいもので、他の自治体の参考になります。

住民・関係機関への情報公開

すべての事例で共通しているのが、積極的な情報公開です。

具体的には:

  • ホームページでの水質検査結果の随時公表(全事例)
  • マスコミへの情報提供(長野市①、渋川市⑤等)
  • 自治会・回覧板を通じた住民周知(桑名市⑧、四條畷⑨等)
  • 住民説明会の開催(吉備中央町⑪等)
  • 定例記者会見での報告(長野市①、各務原市⑥等)
  • まちづくりミーティングでの説明(各務原市⑥)

関係機関との連携

  • 都道府県・環境部局との情報共有
  • 隣接する消防・泡消火薬剤取扱事業者への通知
  • 日本水道協会への協力要請(吉備中央町⑪)

処理技術の最新動向

主要な処理技術

PFOS・PFOA を除去するための処理技術として、現在以下の方法が実用化・研究されています。

処理技術 特徴  実用事例
粒状活性炭(GAC 実績豊富・比較的低コスト 複数事例で活用
粉末活性炭(PAC) 既存施設に応用可能 明石市②等
イオン交換樹脂 高い除去性能 各務原市⑥で試験中
NF膜/RO膜(膜分離) 高除去性能・濃縮廃水の処理が課題 研究段階
電気分解装置  PFASの分解(各務原市で試験) 試験段階

各務原市(⑥)では民間企業を公募して複数の技術の性能試験を実施しており、その結果が今後の技術選定の参考になると期待されています。

廃棄物処理の重要性

使用済み活性炭・膜・イオン交換樹脂等の水処理で生じる廃棄物については、廃棄物処理法に基づき適正に処理することが重要です。PFAS含有廃棄物の取り扱いは、環境省の「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」を参照してください。

全12事例から学ぶ教訓とポイント

教訓1:早期発見・早期対応の重要性

沖縄県企業局(③)は国の規制設定より6年前から自主的な監視を実施し、宝塚市(⑩)は規制設定と同時期に検査を行いました。いずれも問題の早期把握に成功しており、定期的な水質モニタリングの重要性を示しています。

教訓2:代替水源の確保が最大の鍵

問題発覚後の迅速な対応には、利用可能な代替水源の存在が不可欠です。各務原市(⑥)や吉備中央町(⑪)のように代替水源が限られる場合は、浄水処理強化や広域水道との連携が解決策となります。平時から水源のバックアップ体制を整えておくことが重要です。

教訓3:設備管理の変更は水質への影響を事前確認

渋川市(⑤)では、取水ポンプの更新工事がPFOS・PFOA濃度上昇のきっかけとなりました。設備変更や更新の際は、水質への影響を事前に確認する手順を標準化することが求められます。

教訓4:段階的な対応と継続的な評価

多くの事例で「応急的対応→中期的対応」という段階的アプローチが取られています。最初の対応の効果を継続的に評価しながら、必要に応じてより根本的な対策へと移行することが現実的な対応です。

教訓5:透明性の高い情報公開が住民の信頼を生む

全事例において、ホームページでの水質検査結果公開・住民説明・行政機関との情報共有が徹底されています。「飲料水の安全性」という住民の最大関心事に対し、迅速かつ誠実な情報発信が信頼維持の基盤となっています。

教訓6:環境部局・関係機関との横断的連携

水道部局だけで対応するのではなく、環境部局・保健所・関係省庁・水道協会等との横断的な連携が、より効果的な対応につながっています。特に汚染源の特定や周辺環境調査には、環境部局との連携が不可欠です。

今後の課題と展望

水質基準の見直し

現在、内閣府食品安全委員会による有機フッ素化合物の食品健康影響評価(2024年6月に評価書を公表)などの最新知見を踏まえ、専門家による暫定目標値の見直し検討が進められています。米国が2024年4月にPFOS・PFOA各4ng/Lという厳しい規制を設定したことも、日本の基準見直し議論に影響を与えています。

汚染源の特定と除去

多くの事例で汚染源の特定が課題となっています。特に基地・空港・工場など複数の潜在的汚染源が存在する地域では、排出源の特定と除去対策が根本的な解決に向けて不可欠です。

処理技術の高度化

各務原市での民間技術試験をはじめ、より高性能・低コストなPFAS処理技術の開発が進んでいます。公益財団法人水道技術研究センターでは「AquaPFASプロジェクト」(令和6年9月開始)として水処理におけるPFAS除去等に関する研究を実施しており、今後の成果が期待されます。

小規模事業体への支援

吉備中央町(⑪)や金武町(⑫)の事例が示すように、小規模水道事業体はPFAS問題への対応において技術的・財政的に大きな制約があります。広域水道との統合・連携の促進や、国・都道府県からの技術的・財政的支援の充実が求められます。

各事例の詳細記事へのリンク

長野県長野市の対応事例
兵庫県明石市の対応事例
沖縄県企業局の対応事例
神奈川県座間市の対応事例
群馬県渋川市の対応事例
岐阜県各務原市の対応事例
愛知県北名古屋水道企業団の対応事例
三重県桑名市の対応事例
大阪広域水道企業団(四條畷)の対応事例
兵庫県宝塚市の対応事例
岡山県吉備中央町の対応事例
沖縄県金武町の対応事例

まとめ

水道水のPFOS・PFOA問題は、特定の地域に限定された問題ではなく、全国各地の水道事業者が直面しうる課題です。本記事で紹介した12事例はすべて、現時点で給水栓においてPFOS・PFOAの暫定目標値(50ng/L)以下での給水が実現されています。
各事業体の対応は水源の種類・規模・地理的条件によって異なりますが、共通しているのは「迅速な初動」「継続的なモニタリング」「透明性の高い情報公開」「関係機関との連携」という4つの要素です。
水道水の安全性に不安を感じている方は、お住まいの自治体や水道局のホームページでPFOS・PFOAの最新水質検査結果を確認することをおすすめします。

参考資料

この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事

お問い合わせ

状況に応じた最適な対応をご提案します

自治体・企業・個人それぞれに最適な対応方法があります。
目次