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長野市のPFOS・PFOA対応事例|水源調査から専門家会議設置まで徹底解説

2026.03.18

長野県長野市は、人口約37万人を擁する長野県の県庁所在地です。水道水源に深井戸水を使用し、塩素消毒のみの浄水処理で給水を行っていました。2020年(令和2年)8月に水道水からPFOS・PFOAが暫定目標値を超えて検出されたことで、長野市は段階的かつ丁寧な対応を積み重ねてきた先進的な事例として注目されています。

PFOS・PFOAとは何か

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、有機フッ素化合物(PFAS)の一種で、かつて泡消火薬剤・半導体製造・フッ素コーティング製品などに幅広く使われてきた化学物質です。難分解性・高蓄積性・長距離移動性という特性を持つことから「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」とも呼ばれ、環境中への排出が続くと地球規模で蓄積されていきます。
国内では、水道水におけるPFOS・PFOAの合算値について、2020年(令和2年)度より「50ng/L以下」を暫定目標値として設定しています。この値は、体重50kgの人が一生涯にわたって毎日2リットルの水を飲み続けても健康への悪影響が生じないと考えられる水準を基に算出されたものです。

検出の経緯

2020年(令和2年)8月、長野市は市内3か所の主要な給水区域の給水栓(蛇口)で水質調査を実施しました。その結果、松代町寺尾の地点において58ng/Lという暫定目標値(50ng/L)を超える濃度のPFOS・PFOAが確認されました。
この結果を受けて同年10月、長野市上下水道局は詳細な水源調査を実施。川合新田水源(6本の井戸で構成)を調査したところ、そのうちの1号井・4号井の2本において特に高濃度のPFOS・PFOAが検出されていることが判明しました。

応急的対応(令和2年)

①高濃度井戸の取水停止

2020年10月、濃度が特に高かった川合新田水源の1号井・4号井の2本について即座に取水を停止しました。残る4本の井戸については稼働時間を延長し、取水量を増やすことで水量を確保しました。
ただし、この対応には課題も伴いました。2本の井戸を停止したことで、計画取水量24,000m³/日に対して実際の取水量が18,000m³/日まで低下。また、残る4本の井戸やポンプ設備に通常以上の負荷がかかる状態となりました。こうした状況から、新たな水源の確保が緊急の課題として浮上しました。

②水質検査の強化

取水停止後は、各井戸・水源出口・給水栓の水質を毎月検査する体制に強化し、暫定目標値を超過していないことを継続的に確認する仕組みを整えました。

③住民への情報公開

2020年12月、上下水道局はウェブサイト(ホームページ)に緊急対応の内容と水質試験結果を掲載し、その後も給水栓水におけるPFOS・PFOAの水質試験結果を随時公表する透明性の高い情報発信を続けています。

中期的対応(令和3年〜現在)

①市独自の管理基準設定(令和3年3月)

2021年3月、長野市は水安全計画の中でPFOS・PFOAの水質管理基準を25ng/L未満と定めました。これは国の暫定目標値(50ng/L)の半分という、より安全側に立った自主的な管理基準です。この基準に基づいて監視を強化し、運転管理を実施しています。

②給水区域の縮小(令和4年11月)

2022年11月、他の水源からの取水を増やすことで川合新田水源の給水区域を縮小し、リスクの低減を図りました。

③情報の継続的な公開

2023年2月には定例記者会見で長野市の対応経過を報告。同年6月には定例市議会(建設企業委員会)でも経過を報告しました。

④地下水調査の本格実施(令和5年6月〜)

2023年6月から川合新田水源およびその周辺部での本格的な地下水調査を開始。同年7月には「長野市川合新田水源の取水方法等検討専門家会議」を設置し、専門家の知見を取り入れた対策検討の場を設けました。
この専門家会議の設置と取り組みはホームページでも公表され、市民への透明性を確保しています。

⑤観測孔の設置(令和5年7月〜令和6年3月)

2023年7月には水源地内に観測孔を6本設置(2地点に3段階の深度)し、地下水位の連続測定とPFOS・PFOAのモニタリングを開始。さらに2024年3月には水源地外にも観測孔を4地点追加設置し、地下水の動態を詳細に把握する体制を構築しました。

⑥環境部局との連携

長野市の環境部局と水道部局が連携し、市内の泡消火薬剤取扱事業者および消防設備の設置者に対して「取扱い適正・処分通知」を発送。また、川合新田水源から半径500m以内の井戸および用水での水質調査を実施し、暫定指針値を超過する井戸や環境水がないことを確認しています。

今後の方針

長野市は引き続き「長野市川合新田水源の取水方法等検討専門家会議」に意見を求め、上下水道局として以下の対策の中から最良の方針を決定する計画です。

  • 新たな井戸の掘削
  • 浄水処理施設の設置
  • 水運用の変更

現在の状況

長野市の給水栓では、現在PFOS・PFOAの暫定目標値(50ng/L)以下で給水が行われています。市独自の管理基準(25ng/L未満)の下、継続的な監視と情報公開を続けながら、長期的な水源対策に取り組んでいます。

まとめ

長野市の事例は、暫定目標値超過の発見から即座の取水停止、市独自の管理基準設定、専門家会議の設置、地下水の多層的モニタリングまで、段階的かつ体系的な対応の模範例として評価されます。特に国の基準より厳しい自主基準を設けたこと、そして継続的な情報公開と住民への透明性を確保してきた姿勢は、他の自治体にとっても大きな参考となります。

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