PFASフリー駐車場用泡消火薬剤の最新動向|能美防災・日本ドライケミカル製品比較と施設管理者向け切替検討ガイド【2026年6月版】
「自社の駐車場の泡消火設備は、このままで大丈夫なのだろうか?」
PFAS規制の進展により、多くの施設管理者や防災担当者が、そう考え始めています。
2026年5月から6月にかけて、国内消火器・消火薬剤業界ではPFASフリー製品の連続的な投入が起きました。
5月19日に能美防災が「グリーンスコール」を発表。
続いて6月1日には、日本ドライケミカルが「グリーンパーキングフォーム」を発表しました。
これは単なる新製品発表ではありません。
国内の駐車場用泡消火設備市場が、PFAS含有薬剤からPFASフリー製品へ本格的に移行し始めたことを示す重要な動きです。
本記事では、商業施設・物流倉庫・マンション・自社工場など、屋内駐車場の泡消火設備を保有する施設管理者向けに、
・なぜPFASフリー化が進んでいるのか
・主要メーカー3社は何が違うのか
・何から確認すればよいのか
・切替はいつまでに考えるべきなのか
を整理します。
1. なぜ今、PFASフリー消火薬剤への切替が必要なのか
1-1. 水成膜泡消火薬剤(AFFF)に含まれてきたPFAS
長年、屋内駐車場・空港・タンクヤード・化学プラントの油火災対策に使用されてきた水成膜泡消火薬剤(AFFF:Aqueous Film Forming Foam)には、強力な界面活性能力を持つPFAS(有機フッ素化合物)が含まれてきた。油の表面に薄い膜を形成して酸素を遮断する性能は、半世紀以上にわたり世界中の防災現場を支えてきた基幹技術である。
しかし、PFASは自然界でほぼ分解されず、消火剤が使用された場所の地下水・土壌から、何十年経過してもPFASが検出される事例が世界各地で報告されている。日本国内でも、米軍基地、空港、自衛隊駐屯地、消防訓練施設の周辺でPFASによる汚染が確認されている。
1-2. 国内の規制動向
日本国内では、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)において、以下の物質が第一種特定化学物質に指定されている:
- PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸):2010年指定
- PFOA(ペルフルオロオクタン酸):2021年指定
- PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸):2024年指定
- LC-PFCA(長鎖ペルフルオロアルカン酸):2026年5月19日閣議決定、2026年11月22日適用
第一種特定化学物質に指定された物質は、原則として製造・輸入が禁止される。この措置を受けて、日本ドライケミカル株式会社は2026年6月1日のプレスリリースにおいて、明確にこう記している:
「今後、国内で水成膜泡消火薬剤の供給は順次終了する見込みです」
つまり、業界全体が、従来の水成膜泡消火薬剤の終売を前提に動き始めている。施設管理者にとっては、「いつ切り替えるか」ではなく、「どの製品に、いつまでに切り替えるか」を判断するフェーズに入ったということだ。
1-3. 国際的な規制動向
国際的にも、米EPAのTSCA PFAS報告義務(2026年4月13日〜10月13日報告期間)、EU REACH規則のPFAS制限案最終局面、フランスのPFAS法(2026年1月施行)など、規制強化が同時並行で進んでいる。日本国内で水成膜泡消火薬剤の輸入元となっていた海外メーカーの供給判断にも影響が及ぶ可能性が高い。
PFAS規制の最新動向については、当社の「2026年5月 PFAS規制・国内検出・産業動向トピックス」で月次レポートとして整理している。
2. 国内主要3社の動向比較
2026年4月〜6月にかけて、国内主要3社が立て続けにPFASフリー製品・代替システムを発表した。
2-1. 製品・技術一覧(時系列)
| 発表日 | 企業 | 製品/技術 | カテゴリ |
|---|---|---|---|
| 2026年4月27日 | ヤマトプロテック株式会社 | 泡噴霧消火ヘッド/泡噴霧消火システム | 消火システム(システム側アプローチ) |
| 2026年5月19日 | 能美防災株式会社 | グリーンスコール(Green Squall) | PFASフリー泡消火薬剤(特定駐車場用) |
| 2026年6月1日 | 日本ドライケミカル株式会社 | グリーンパーキングフォーム | ふっ素フリー駐車場用泡消火薬剤 |
2-2. 日本ドライケミカル「グリーンパーキングフォーム」の特徴
2026年6月1日に発表された日本ドライケミカル株式会社の「グリーンパーキングフォーム」は、以下の3つを主要特長として打ち出している(同社プレスリリースより):
特長①:環境にやさしいふっ素フリー
PFOS、PFOA、PFHxSをはじめとするPFASを一切含まない、合成界面活性剤泡消火薬剤。
特長②:設備交換不要でコスト削減
既設の駐車場用泡消火設備において、同社製フォームヘッド(FH-35・FHC-35)が設置されている場合、性能評定により既設のフォームヘッド・配管・ポンプなどの設備を改修する必要がなく、低コストで薬剤を交換できる。
特長③:従来と同等の消火性能
従来の水成膜泡消火薬剤と同じ放射レートで同等の消火性能を有する。既設の消火薬剤の交換だけでなく、新設にも対応する。
製品仕様:
- 種別:泡消火薬剤
- 型式:合成界面活性剤泡3%(-5℃〜+30℃)
- 型式番号:泡第2025〜1号
- 使用温度範囲:-5℃〜+30℃
2-3. 能美防災「グリーンスコール」の位置づけ
能美防災のグリーンスコールは、特定駐車場用PFASフリー泡消火設備として、国内で最初に本格上市された代替製品である。能美防災は国内消火器メーカーの大手であり、商業施設・マンション・物流倉庫における設置実績が豊富。同社の発表が業界全体の代替化の口火を切る形となった。
2-4. ヤマトプロテックの「システム側」アプローチ
ヤマトプロテックの新型「泡噴霧消火ヘッド/泡噴霧消火システム」は、薬剤そのものではなく消火システム側から効率化を図るアプローチ。直進性の高い泡放射で短時間消火を実現するもので、消火薬剤の使用量自体を抑える方向で代替化に対応する。
2-5. 3社のアプローチの違い
| 観点 | 能美防災 | 日本ドライケミカル | ヤマトプロテック |
|---|---|---|---|
| アプローチ | 薬剤の代替 | 薬剤の代替 | システムの効率化 |
| 対象範囲 | 特定駐車場用 | 駐車場用 | 駐車場用ほか |
| 既設設備対応 | 製品評価次第 | 同社ヘッド設置時は薬剤交換のみ | 新規システム導入 |
| 発表日 | 2026年5月19日 | 2026年6月1日 | 2026年4月27日 |
施設管理者にとっての判断ポイントは、「現在使用している消火薬剤・設備のメーカーと、新製品の互換性」である。特に既設設備に大手メーカー製のフォームヘッドを使用している場合、同メーカーのPFASフリー製品への切替が最もスムーズな選択肢となる。
こんな施設は早めの確認をおすすめします
特に以下に該当する施設では、PFAS含有泡消火薬剤の有無や、将来的な切替方針を早めに整理しておくことをおすすめします。
- 2010年以前に設置した泡消火設備がある
- 地下駐車場を保有している
- 商業施設や物流施設を運営している
- 工場や危険物施設を保有している
- ESG・サステナビリティ開示を進めている
- EU向け輸出や海外取引先との取引がある
実際には、
「自社設備がPFAS含有か分からない」
「設備メーカーが複数あり整理できていない」
「どこまで対応すれば十分なのか判断できない」
というケースも少なくありません。
まずは現状把握から始めることが重要です。
3. 施設管理者がいま確認すべき3つの実務項目
PFASフリー製品が市場に投入され始めた今、施設管理者・防災担当者が直ちに確認すべき3つの項目を整理する。
3-1. 自社設備の泡消火薬剤の組成確認
まず、現在使用している泡消火薬剤がPFAS含有か否かを確認する。確認方法は以下の通り:
- 薬剤メーカー名・型式の確認:設備管理台帳または現地点検記録から取得
- メーカーへの照会:型式名を伝え、PFOS・PFOA・PFHxS含有の有無を確認
- SDS(安全データシート)の取得:化学組成情報の文書取得
特に、2010年以前から設置されている泡消火設備で、定期点検以外に薬剤交換を行っていない場合、PFOS含有の旧型薬剤が現役で残っている可能性が高い。
3-2. 薬剤の供給継続期間の確認
メーカーに対し、以下を照会する:
- 現在使用中の薬剤の製造・販売の継続予定
- 在庫補充・追加発注の可否
- 終売・移行スケジュール(公式発表があれば)
メーカー側でも、PFAS含有薬剤の終売時期を段階的にアナウンスする動きが今後増える見込みである。施設管理者は自社のスケジュール(次回更新時期、修繕計画、設備リプレース計画)と照合し、無理のない切替時期を検討する必要がある。
3-3. 代替製品への切替検討
切替検討においては、以下の観点でメーカーへの問い合わせ・見積取得を行う:
- 互換性:現在の設備(ヘッド、配管、ポンプ)との適合性
- 消火性能:従来薬剤と同等の消火能力が確保できるか
- 消防法・条例適合:所轄消防署との事前協議事項の有無
- コスト:薬剤費、設備改修費(必要な場合)、評価・試験費用
- 工期:切替工事に要する期間と営業への影響
日本ドライケミカルの「グリーンパーキングフォーム」のように、「既設フォームヘッド維持で薬剤交換のみ」で対応可能なケースは、コスト・工期ともに最小化できる選択肢となる。
4. 切替計画の立て方
PFASフリー消火薬剤への切替は、単なる薬剤交換ではなく、法令対応・コスト管理・運用継続を含めた包括的なプロジェクトとして進めるべきである。
4-1. 切替計画の基本フロー
ステップ1:現状把握(1〜2か月)
- 全施設の泡消火設備リストアップ
- 各設備の薬剤組成・PFAS含有有無の確認
- メーカー・型式・設置年・次回更新時期の整理
ステップ2:代替製品の選定(2〜3か月)
- 候補メーカー2〜3社からの提案・見積取得
- 互換性・性能・コストの比較評価
- 所轄消防署との事前協議
ステップ3:切替実施計画の策定(1か月)
- 施設ごとの優先順位付け(築年数、利用状況、リスク順)
- 工期・予算計画の確定
- 関係部署(防災、財務、施設管理、テナント対応)との調整
ステップ4:段階的切替の実行(6か月〜2年)
- 計画に従った薬剤交換・設備改修
- 完了後の消防検査・性能評価
- 切替済み設備のドキュメント整備
4-2. コスト試算の考え方
切替コストは以下の要素で構成される:
- 薬剤費:従来薬剤と比較して同等〜やや高額となる傾向
- 設備改修費:互換性のないヘッド・配管の交換が必要な場合に発生
- 評価・試験費:性能評定、消防法令適合確認の費用
- PFAS含有旧薬剤の処分費:適切な処理ルートでの廃棄費用(後述)
複数施設を運営する企業の場合、ロット交渉によるコスト最適化と、法定点検サイクルとの統合による工事費圧縮を組み合わせると、トータルコストを抑えやすい。
4-3. 切替タイミングの判断軸
切替をいつ実施するかの判断は、以下の軸で考える
| 判断軸 | 切替を急ぐべき条件 | 切替を待っても良い条件 |
|---|---|---|
| 設備の経年劣化 | 設置から15年以上経過、近々更新予定 | 比較的新しく、当面の更新予定なし |
| 薬剤の補充状況 | 補充が必要だが、メーカーが終売をアナウンス | 在庫が安定供給されている |
| 規制スケジュール | EU向け事業がある/公共調達対応が必要 | 国内民間施設のみ |
| 自社のESG方針 | サステナビリティ報告書での開示が必要 | 開示要請が現時点でない |
ただし、上記の「待っても良い条件」に該当する場合でも、遅くとも2028年までには切替計画を確定しておくことを推奨する。供給継続期間と工事日程の調整余裕を考えると、2027年中の計画策定・2028年以降の段階的実施が現実的なスケジュールとなる。
5. PFAS含有薬剤の処分方法と注意点
切替に伴って発生するPFAS含有旧薬剤の処分は、技術的・法的に慎重な対応が求められる。
5-1. 処分方法の選択肢
PFAS含有泡消火薬剤の処分方法としては、以下が想定される:
- 高温焼却処理:1,100℃以上の高温焼却炉でPFASを熱分解する方法。専用処理施設での処理が必要。
- メーカー回収:薬剤メーカーが切替時に旧薬剤を回収するサービスを提供するケース。
- 専門処理業者への委託:PFAS含有廃棄物を扱う認定業者への委託処理。
5-2. 処分時の注意点
PFAS含有薬剤の処分にあたっては、以下に注意が必要である:
- 不適切な廃棄を避ける:一般の下水道、土壌、河川への流出は環境汚染リスクが大きい
- 処分業者の認定確認:適切な許可・認定を有する業者を選定
- マニフェスト管理:産業廃棄物として適正にマニフェストを発行・管理
- 記録の保管:PFAS含有量、処分量、処分日、処分業者の記録を一定期間保管
不適切な処分は、後年に土壌汚染対策法や水質汚濁防止法に基づく責任追及を招くリスクがある。費用が多少かかっても、認定処理ルートでの処分を選択することが、長期的なリスク管理上重要である。
5-3. 処分計画は切替計画と同時に立てる
切替工事の見積取得時に、「旧薬剤の引き取り・処分」までを含めた一括見積をメーカー・施工業者から取得することを推奨する。後から個別に処分業者を探すよりも、メーカー経由の方が処分ルートが確立されているケースが多い。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 自社の駐車場の泡消火薬剤がPFAS含有かどうか、簡単に確認する方法はありますか?
- 設備管理台帳または定期点検記録に記載されている薬剤名・型式を、メーカーに照会するのが最も確実です。型式名を伝えれば、メーカー側でPFAS含有の有無を即答できる場合が多いです。
Q2. 現在使用中の薬剤がPFAS含有でも、すぐに切り替える必要がありますか?
- 法律上、現在使用中の設備からの即時撤去義務はありません(既存設備への遡及適用は段階的)。ただし、薬剤の追加発注・補充ができなくなる時期が近づいているため、遅くとも2028年までに切替計画を確定することを推奨します。
Q3. 切替工事中、消防法上の駐車場運用は継続できますか?
- 切替工事は通常、設備の一時停止を伴います。所轄消防署との事前協議により、工事期間中の代替防火措置(仮設消火器の配備、火気使用制限、巡回監視等)を講じることで、運用継続が可能なケースが多いです。
Q4. PFASフリー製品の消火性能は、従来製品と同等ですか?
- 各メーカーの製品仕様において、従来薬剤と同等の消火性能が確認されています(型式認定取得済み)。ただし、特殊な火災種別(航空燃料、特殊溶剤等)への適合性は個別確認が必要です。
Q5. PFAS含有旧薬剤の処分費用は、誰が負担しますか?
- 原則として、廃棄物排出事業者である施設管理者(保有者)の負担となります。切替工事のメーカー提案に、処分費用を含めて見積を依頼することを推奨します。
Q6. EU向けの輸出事業を行っていますが、自社駐車場の消火剤も影響しますか?
- 直接の規制対象は製品・部品ですが、サステナビリティ報告書やESG開示において、自社施設のPFAS含有設備の保有状況が問われるケースが増えています。海外取引先からのサプライチェーン全体での開示要請にも備えて、早期の切替計画策定をお勧めします。
PFAS含有設備の確認でお困りではありませんか?
実際の現場では、
- 薬剤名は分かるがPFAS含有か判断できない
- 設備図面が古く現在の構成が分からない
- メーカーへ何を確認すれば良いか分からない
- 切替時期の優先順位が決められない
というご相談が増えています。
PFAS規制への対応は、「何を確認すればよいか」よりも、「自社の場合はどう判断すればよいか」が難しいケースが少なくありません。
PFAS Solutions+では、まず現状整理のお手伝いを行っています。
設備メーカー名や薬剤型式が分かる資料があれば、確認すべきポイントの整理からご支援可能です。
7. PFAS Solutions+によるサポート
PFAS Solutions+(運営:ArtsWeb株式会社)では、製造業・施設管理者の皆さまのPFAS含有設備の現状把握から切替計画策定までを、初回無料でサポートしています。
サポート可能な領域
- 現状把握支援:自社設備の泡消火薬剤組成確認、メーカー照会の手順整理
- 代替製品選定支援:複数メーカー製品の比較整理、見積取得時の検討項目整理
- 切替計画策定支援:施設別優先順位の整理、コスト試算、工程管理
- 処分計画支援:PFAS含有薬剤の適正処分ルートの整理
- 規制動向の整理:国内外PFAS規制の最新動向の継続フォロー
関連サービス
- PFOS消火剤対策支援:在庫確認・代替計画策定
- 製造業向けPFASサポート:排水検査・含有調査票・EU輸出規制への対応
- 水道・PFAS対策支援:自治体・水道事業者向けの検査体制構築
※当社は法律事務所ではなく、個別の法的判断は提供しておりません。必要に応じて専門の弁護士・コンサルタントと連携の上、規制動向と対応方向の整理を行います。
関連情報
▶ 2026年5月 PFAS規制・国内検出・産業動向トピックス(月次レポート) 本記事のベースとなる規制動向・産業動向の全体像を、64件のニュースから整理した月次レポート。
▶ 環境省・有機フッ素化合物(PFAS)について PFASに関する国の公式情報源。
▶ 日本ドライケミカル株式会社プレスリリース(2026年6月1日) 「グリーンパーキングフォーム」の製品詳細。




























