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PFAS調査票に「成分は企業秘密」と返されたら|発注側が取るべき5つの対応手順

PFAS調査票に「成分は企業秘密」と返された時、発注側が取るべき5つの手順

この記事でわかること

  • なぜサプライヤーは「企業秘密」と回答するのか(隠しているとは限らない3つの理由)
  • 「企業秘密」で開示を拒否できる範囲と、できない範囲【早見表】
  • 回答が返ってきやすくなる依頼文の書き方(コピペ用テンプレートあり)
  • それでも回答が得られないときの実務5ステップ
  • よくある質問(FAQ)

取引先やサプライヤーにPFAS含有調査票を送ったところ、「成分については企業秘密のため開示できません」と返ってきた—。
EUのPFAS規制対応が本格化するなか、この”開示拒否”の壁に直面する発注企業が増えています。
結論から言えば、打てる手はあります。
そして多くの場合、サプライヤーは何かを隠しているわけではないのです。
本記事では、その理由と、回答率を上げる具体的な聞き方、それでも返ってこないときの手順までを中立的に整理します。

なぜ「企業秘密」と返ってくるのか(隠しているとは限らない)

企業秘密=隠しているとは限らない

この回答の裏には、悪意ではなく3つの構造的な理由があることが多いのです。

① 海外サプライヤーには開示義務が直接かからない

部材の多くは海外で製造され、上流のメーカーが国外にあることも珍しくありません。
後述するREACHの情報伝達義務が直接かかるのはEU/EEA域内の供給者であり、域外のサプライヤーには直接の法的義務が及ばないことが多いのです。
つまり「答えたくない」のではなく「答える義務がない」場合があります。

② そもそも把握していない

PFASは1万種類を超えるとも言われる物質群の総称。
サプライヤー自身が「自社の薬剤・部材にどのPFASがどれだけ含まれているか」を正確に把握できていないこともあります。
「企業秘密です」が、実は「把握していません」を含んでいるケース。

③ 配合(レシピ)は正当な営業秘密

洗浄剤・コーティング剤・界面活性剤などの配合は、メーカーの競争力そのもの。
全成分の開示を求められれば営業秘密の核心に触れるため、身構えるのは自然な反応とも言えます。

「企業秘密」で守れる範囲・守れない範囲【早見表】

企業秘密で守れる範囲・守れない範囲

対応の出発点は、この線引きを理解することにあります。

開示しなくてよい 開示が求められる
対象 全配合・正確な配合比率(レシピそのもの) 規制対象物質(SVHC)の含有有無/物質名/安全な使用に必要な情報
根拠 営業秘密として保護される REACH第33条(成形品中に0.1重量%超でSVHCを含む場合。消費者からの請求には45日以内に回答義務)

ここに、よくあるすれ違いの原因があります。
発注側が「全成分を出してください」と求めると、相手は営業秘密への踏み込みと受け取り「企業秘密」と返しやすいです。
逆に「規制対象物質の含有有無と名称だけ」に問いを絞れば、回答のハードルは大きく下がります。

補足:工程内薬剤と成形品中の物質は別物

第33条が直接対象とするのは「成形品中に含まれる物質」。
製造工程で使う薬剤(工程内薬剤)が最終製品に残らない場合は、第33条の直接の対象ではありません。
ただし検討が進むEUのPFAS包括規制は製造・上市・使用そのものを対象とするため、工程でのPFAS使用も将来的に問われる方向にあります。

なぜ今、調査票が殺到しているのか(EU規制タイムライン)

なぜ今、調査票が増えているのか

背景には、EUのPFAS包括的制限(ユニバーサル制限)の進展があります。

  • 2023年1月:独・デンマーク・蘭・ノルウェー・スウェーデンの5カ国が制限提案を提出。1万種類超のPFASを対象とする、REACH史上最大規模の制限案。
  • 2026年3月2日:リスク評価委員会(RAC)が最終意見を採択。
  • 2026年3月26日〜5月25日:社会経済性分析委員会(SEAC)の意見案について60日間のパブリックコンサルテーションを実施。
  • 2026年末:SEACの最終意見が採択される見込み。その後、欧州委員会が附属書XVII改正案を作成し、加盟国・欧州議会・理事会の手続きへ。
  • 発効は早くて2029年ごろとの見方が多い。

発効はまだ先でも、川下の企業(最終製品メーカー、輸出企業)は「自社の製品・工程にPFASがあるか」をいま確認しようと、川上へ一斉に調査票を出し始めています。
“開示拒否”の壁が各所で生じているのは、この動きの裏返しでもあります。

返ってくる確率を上げる「依頼文」の書き方

聞き方を整えるだけで、回答率は変わります。そのまま使える依頼文の型を示します。

コピペ用テンプレート

件名:【ご協力のお願い】貴社納入品のPFAS(規制対象物質)含有確認について

平素より大変お世話になっております。
EUのPFAS規制動向を受け、弊社では納入いただいている部材・薬剤について、
規制対象物質の含有状況を確認させていただいております。

なお、本依頼は全成分の開示をお願いするものではなく、
規制対象物質の含有有無の確認を目的としています。

つきましては、下記についてご回答いただけますでしょうか。

1. 対象(部材名/型番):
2. 規制対象PFAS等の含有有無: □有 □無 □不明
3.「有」の場合:物質名(CAS番号があれば)/含有部位/おおよその含有量
4. 回答にあたって必要な手続き(NDA締結の要否など):

ご回答は、可能であれば業界標準のchemSHERPA形式でいただけますと幸いです。
難しい場合は本様式のままで差し支えありません。
ご不明点はお気軽にお問い合わせください。

この型が効く4つの理由

目的を「規制対象物質の確認」に限定し、レシピを求めていないと明記しています。
「全成分は求めない」と先に伝えることで、相手の警戒を下げています。
「不明」という選択肢を用意し、答えやすくしています。
業界標準フォーマット(chemSHERPA)を提示し、回答の負担を減らしています。

それでも回答が得られない時の5ステップ

回答が得られない時の実務5ステップ

手順 内容 なぜ効くか
①【今日できる】
標準様式で再依頼
chemSHERPA(製造業)/GADSL(自動車部品)で送り直す 独自様式より相手が回答しやすく、返答率が上がる
②【今日できる】
問いの粒度を下げる
「全成分」ではなく「規制対象物質の有無・名称・部位」に絞る 営業秘密に踏み込まないため、警戒が解ける
③ NDAを用意する 機微情報が必要なら守秘義務契約を結ぶ 「外に出ない」担保があると開示しやすい
④【最後の手段】
実測分析で確かめる
フッ素全量でスクリーニング→必要に応じ個別PFASを定量 「聞いてもわからない」で止まらずに済む
⑤ 回答が得られない=リスクとして扱う 代替材料・代替サプライヤーの検討を並行 将来の規制で供給停止になりうる芽を早めに摘める

よくある質問(FAQ)

Q. 「企業秘密」と言われたら、法的に開示させられますか?

A. レシピ全体の開示は法的に求められません。
ただし規制対象物質(SVHC)を成形品中に0.1重量%超で含む場合、EU/EEA域内の供給者には第33条で物質名・安全使用情報を提供する義務があります。
一方、海外サプライヤーには直接の義務が及ばないことが多く、その場合の調査票は「取引上の要請」として機能します。

Q. 小さな部品でも対象になりますか?

A. なります。
欧州司法裁の解釈(2015年)により、0.1%の判定は完成品全体ではなく「成形品(部品)ごと」に行います。
小さな部品単位で見る点に注意してください。

Q. サプライヤーが「不明」と答えてきたら?

A.「不明」も回答として記録し、リスク要因として扱いましょう。確認が必要なら実測分析に進めてください。

Q. 分析にはどのくらいの手間がかかりますか?

A. 確認したい項目数によって段階が分かれます。
まずフッ素全量で当たりをつけ、必要に応じて個別PFASを定量する進め方が一般的です。
範囲を絞るほど費用と期間は抑えられます。

Q. PFASは1万種類以上あるのに、分析で確認できるのですか?

A. 1万種類を個別に測るのではなく、2段階で行うのが実務的です。
まず全有機フッ素(EOF)や全フッ素測定などのスクリーニング手法で「全フッ素(PFASに共通するフッ素の総量)」をまとめて測り、含有の有無と概量を把握する(スクリーニング)。
次に、規制対象物質を特定する必要がある場合のみ、LC-MS/MSでPFOS・PFOA・PFHxSなど特定のPFASを個別に定量する(ターゲット分析)。
「広く当たりをつけてから、狭く深く」の二段構えにより、全種類を測らずに確認できます。
なお全フッ素スクリーニングは、REACH等の規制適合の当たりをつける用途で実際に用いられています。

PFAS分析は2段階

一社で抱え込まないために

「規制対象が動いている」
「自社のどの部材・工程が引っかかるのか判断できない」
—この”判断”の部分こそ、一社・一担当者だけで抱えるには重いです。
現実的な順序は、まず含有の有無を知ること。
そのうえで、自社だけでは判断しきれない部分を専門家と確認して行きましょう。
調査票が返ってこないこと自体は、担当者やサプライヤーの落ち度ではなく、構造的に起こりうる問題です。
聞き方を整え、標準様式を使い、必要なら分析で確かめます。
打てる手は、確実に存在します。

PFAS Solutions+では、調査票の作成支援、サプライヤーへの確認方法の整理、分析機関の選定支援など、初期段階の実務整理も行っています。

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