地方自治体管理空港のPFAS泡消火剤7万リットル超|保有・処分・情報管理の3つの課題を整理
有害性が懸念されるPFASを含む泡消火剤について、2026年6月末から7月にかけて、空港の保有実態に関する報道が相次ぎました。
共同通信などの報道によると、地方自治体が管理する空港では、18都道県・延べ42空港が、計72,702リットルのPFAS含有泡消火剤を保有していたことが明らかになりました。これは、国の2024年度調査時点の数字です。
さらにその直後、国の全国調査そのものに記載漏れがあったことも報じられました。公表資料に記載のなかった大阪国際空港、いわゆる伊丹空港が、PFOA含有泡消火剤4,210リットルを保有していたというものです。
本記事では、これらの報道と環境省の公表資料をもとに、「保有」「処分」「情報管理」という3つの課題に分けて整理します。
この記事のポイント
2024年度の国の調査で、地方自治体が管理する延べ42空港、18都道県が、計72,702リットルのPFAS含有泡消火剤を保有していたと報じられました。
このうちPFOS含有泡消火剤は、14都道県・22空港で計46,171リットルとされています。保有量が多い空港として、佐賀空港6,120リットル、秋田空港5,520リットル、松本空港3,480リットルなどが報じられています。
PFAS含有泡消火剤の既存在庫を保管していること自体が、直ちに違法というわけではありません。ただし、環境汚染の未然防止のため、厳格な管理と、代替・処分の計画化が求められています。
一方で、自治体管理空港では、処分の判断や費用負担が自治体に委ねられやすく、対応の進み方に差が出る可能性があります。
大阪国際空港、いわゆる伊丹空港のPFOA含有泡消火剤4,210リットルが、公表資料から漏れていたことも報じられました。在庫の正確な把握そのものが、今後の大きな課題です。
なぜ空港に泡消火剤があるのでしょうか
PFASは、熱や化学反応に強く、油をはじく性質を持つため、航空機火災のように水だけでは消火が難しい火災に備える泡消火剤に使われてきました。
特に、燃料火災では、燃えている液体の表面を泡で覆い、酸素を遮断して消火する必要があります。そのため、空港、石油コンビナート、消防機関、自衛隊施設などでは、PFOSやPFOAを含む泡消火剤が長く使用・保管されてきました。
代表的なPFASであるPFOSは、国内では2010年に化審法の第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が原則禁止されました。PFOAも2021年に同じく第一種特定化学物質に指定されています。
ただし、すでに設置・保管されている泡消火剤については、安全確保の観点もあるため、単純に「すぐに全部なくす」という対応はできません。火災時の消火能力を維持しながら、PFASを含まない代替消火剤への切り替えや、適正な処分を計画的に進める必要があります。
課題① 保有:どこに、どれだけ残っているのか
第一の課題は、「どこに、どれだけ残っているのか」を正確に把握することです。
共同通信などの報道によると、国交省の調査資料をもとに自治体管理分を集計した結果、地方自治体が管理する空港では、18都道県・延べ42空港で、計72,702リットルのPFAS含有泡消火剤が保有されていました。これは2024年度調査時点の数字です。
内訳として、PFOS含有泡消火剤は、14都道県・22空港で計46,171リットルとされています。保有量が多い空港として、佐賀空港6,120リットル、秋田空港5,520リットル、松本空港3,480リットルなどが報じられています。
環境省が2024年11月に公表した全国在庫量調査では、全国合計のPFOS含有泡消火薬剤量は185.0万リットル、PFOA含有泡消火薬剤量は23.9万リットルでした。また、PFHxSを含有する泡消火薬剤は全国で確認されなかったとされています。
つまり、全国全体では減少傾向が見られる一方で、空港、消防、事業所などには、なお一定量のレガシー在庫が残っているということです。
なお、今回報じられた空港ごとの保有量は、2024年度調査時点の数字です。その後に処分・交換が進んでいる可能性もあるため、現在の在庫量とは異なる場合があります。
課題② 処分:国管理は進み、自治体管理は判断が分かれやすい
第二の課題は、処分です。
PFOSやPFOAを含む泡消火剤は、漏えい・流出すれば、土壌や地下水の汚染につながるおそれがあります。そのため、国は厳格な管理と、PFASを含まない泡消火剤への代替を進めています。
環境省の在庫調査マニュアルでも、PFOS等含有泡消火薬剤による環境汚染の未然防止を目的として、地方公共団体が在庫量を把握することの重要性が示されています。
一方で、自治体管理の空港については、処分や交換の判断、費用負担、代替消火剤の導入時期が、自治体側の判断に委ねられやすい構造があります。
処分が進みにくい背景には、主に次のような事情があります。
- PFAS含有泡消火剤の無害化処理ができる施設が限られる
- 代替消火剤への交換には、薬剤費だけでなく、設備の洗浄・検証コストがかかる
- 消火性能を維持したまま切り替える必要がある
- 処分費用の財源や国の支援のあり方が明確でない
- 空港ごとに保有量、設備、運用条件が異なる
泡消火剤は、単なる在庫ではありません。航空機火災に備える安全設備の一部です。
そのため、PFAS対策として処分を進めることと、火災時の消火能力を維持することを、同時に満たす必要があります。ここが、自治体や空港管理者にとって難しい点です。
課題③ 情報管理:国の調査に記載漏れ
第三の課題は、情報管理です。
PFAS含有泡消火剤の処分を進める大前提は、「どこに、何が、どれだけあるか」を正確に把握することです。しかし、今回の報道では、その基礎データ自体に漏れがあったことが明らかになりました。
環境省が2024年11月に公表した資料では、空港会社が管理する成田・中部・関西は「所有していない」とされ、大阪国際空港、いわゆる伊丹空港については記載自体がありませんでした。都道府県別の公表でも、大阪府・兵庫県の空港は「ゼロ」とされていたと報じられています。
しかし実際には、伊丹空港はPFOA含有泡消火剤4,210リットルを保有していました。報道によれば、空港を所管する国土交通省の調査内容が、結果を取りまとめる環境省に伝達されていなかったことが原因とされています。
このほか、北海道の空港では在庫の一部が重複計上されていた可能性、佐賀空港では公表資料と薬剤の種類が異なるとの指摘も報じられています。
在庫量の把握は、処分計画の基礎です。
その基礎データの精度に疑問が生じたことは、個別空港だけの問題ではありません。国全体のPFAS在庫管理の仕組みそのものが問われているといえます。
自治体・空港管理者が今できること
今回の報道を踏まえると、自治体、空港管理者、施設管理者が確認しておきたいポイントは大きく4つあります。
1. 自施設の泡消火剤を棚卸しする
まず必要なのは、薬剤名、型式、製造年、メーカー、設置場所、容量を整理することです。
そのうえで、PFOS、PFOA、PFHxSを含む可能性があるかを確認します。表示や仕様書だけで判別できない場合には、メーカー照会やサンプリング検査を検討します。
2. 保管状態を点検する
PFAS含有泡消火剤は、漏えい・流出した場合、土壌や地下水汚染につながる可能性があります。
貯蔵槽、配管、容器、泡消火設備、水槽の状態を確認し、雨水系統や排水系統に流れ込むおそれがないかを点検することが重要です。
「持っているかどうか」だけでなく、「どのように保管されているか」が大切です。
3. 処分・交換を計画化する
PFAS含有泡消火剤の処理には、対応できる処理施設、運搬、法令確認、消火設備の洗浄、代替薬剤の性能確認などが必要になります。
そのため、「いつか処分する」ではなく、予算措置を含めて、年次計画に落とし込むことが重要です。
また、代替消火剤に切り替える際には、対象火災に対する消火性能、既存設備との適合性、訓練時の使用管理も確認する必要があります。
4. 記録と公表内容の整合を確認する
今回の伊丹空港の記載漏れが示すように、在庫情報の食い違いは、それ自体が信頼問題になります。
国の調査への回答内容、自治体の公表資料、議会答弁、空港管理者の内部資料、実際の現場台帳が一致しているかを確認する必要があります。
数字が合わないと、処分計画も、住民説明も、対外的な信頼も揺らぎます。
事業所・施設管理者にも関係する問題です
今回の記事は空港を中心にしていますが、PFAS含有泡消火剤の問題は、空港だけに限られません。
次のような施設でも、過去にPFOSやPFOAを含む泡消火剤が使われていた可能性があります。
- 石油コンビナート
- 化学工場
- 大型倉庫
- 危険物施設
- 自衛隊・米軍関連施設
- 消防機関
- 大規模商業施設や地下駐車場
- 一部の泡消火設備を持つ事業所
「うちは空港ではないから関係ない」と考えるのではなく、泡消火設備や消火薬剤の履歴を一度確認しておくことが重要です。
大切な注意点
今回報じられた保有量の数字は、いずれも2024年度調査時点のものです。現在の在庫量とは異なる可能性があります。
PFAS含有泡消火剤の既存在庫を保管していること自体が、直ちに違法というわけではありません。本記事は、保有している空港や自治体を批判するものではなく、管理・処分・情報管理の課題を整理するものです。
泡消火剤は、火災時の安全確保という重要な役割を持ちます。処分・交換は、消火能力を維持しながら、計画的に進める必要があります。
また、泡消火剤の種類によって、PFOS、PFOA、PFHxSなどの含有状況は異なります。表示やSDSだけで判断できない場合には、メーカー確認や分析による確認が必要です。
よくある質問
Q1. PFAS含有泡消火剤を保管しているだけで違法ですか?
既存在庫を保管していること自体が、直ちに違法というわけではありません。
ただし、PFOSやPFOAは化審法上の第一種特定化学物質に指定されており、製造・輸入・使用には厳しい制限があります。保管中の漏えいや流出を防ぎ、適切に管理し、代替・処分を計画することが求められます。
Q2. なぜ空港では泡消火剤が必要なのですか?
航空機火災や燃料火災では、水だけでは十分に消火できない場合があります。
泡消火剤は、燃えている液体燃料の表面を泡で覆い、酸素を遮断して火を消す役割があります。そのため、空港では安全確保のために泡消火剤が備えられてきました。
問題は、過去に使われてきた泡消火剤の一部に、PFOSやPFOAなどのPFASが含まれていたことです。
Q3. PFOSとPFOAの違いは何ですか?
PFOSもPFOAもPFASの一種です。
PFOSは、泡消火剤などで使われてきた代表的なPFASです。PFOAは、フッ素樹脂製造などに関連して使われてきた物質ですが、一部の泡消火剤や消火器用薬剤にも含まれている場合があります。
いずれも環境中で分解されにくく、国際的・国内的に規制が進められてきました。
Q4. 家庭用の消火器にもPFASが入っていますか?
一般的な粉末消火器には、PFOAは含有されていないとされています。
一方で、機械泡消火器や中性強化液消火器の一部には、PFOAを含むものがあります。家庭や事業所で古い消火器を保有している場合は、メーカーや型式を確認することが大切です。
Q5. 処分するときは普通の廃棄物として捨てられますか?
いいえ。PFASを含む泡消火剤は、適切な処理が必要です。
自己判断で排水に流したり、通常の廃棄物として処分したりすると、土壌・地下水・公共用水域への流出につながるおそれがあります。処分する場合は、メーカー、専門処理業者、自治体、関係機関に確認し、適切な方法で行う必要があります。
Q6. 代替消火剤に交換すれば、それで終わりですか?
交換だけでは不十分な場合があります。
既存設備の配管、タンク、泡原液槽、水槽などにPFAS含有薬剤が残っている可能性があるため、洗浄や残留確認が必要になることがあります。また、代替消火剤が既存設備で必要な消火性能を発揮できるかも確認が必要です。
Q7. 自治体や施設管理者は、まず何から始めるべきですか?
まずは棚卸しです。
薬剤名、メーカー、型式、製造年、設置場所、容量、保管状態を一覧化し、PFOS・PFOA・PFHxSの含有可能性を確認します。そのうえで、保管状態の点検、処分・交換計画、国や自治体への報告内容との整合確認を進めます。
まとめ
今回の一連の報道が示したのは、「規制は始まったが、在庫は残り、責任の所在が曖昧」という日本のPFOS・PFOA泡消火剤問題の現在地です。
製造・輸入を禁止することは、入口の規制です。
しかし、すでに社会に存在している在庫、いわばレガシーPFASをどう安全に減らしていくのか。その把握、費用、期限、処分方法を誰が担うのか。ここが決まらない限り、空港や事業所の数字は残り続けます。
そして、伊丹空港の記載漏れが示すように、データの信頼性は制度の信頼性そのものです。
数字が合わないところに、住民や利用者の安心は生まれません。
PFAS対応では、「検出されたかどうか」だけでなく、「持っているものを正確に把握しているか」「流出させない管理ができているか」「いつ、どう処分するか」が問われます。
pfasreach.jpは、空港・消防・事業所に残るPFAS含有泡消火剤の在庫と処分の動きを、引き続き定点観測していきます。
当サイトでは、PFOS・PFOA含有泡消火剤の含有確認、在庫棚卸し、処分・代替に向けた整理の支援を行っています。必要に応じて、PFOS消火剤対策サービスページもご覧ください。
出典・参考情報
- 共同通信・信濃毎日新聞「【独自】PFAS泡消火剤7万リットル超 自治体の管理空港、対応遅く」(2026年6月27日)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/gfkn2026062701000948 - 共同通信「PFAS泡消火剤調査で記載漏れ 大阪空港保有分、省庁間伝達ミス」(2026年7月2日・秋田魁新報配信)
https://www.sakigake.jp/news/article/20260702CO0146/ - 共同通信「PFAS泡消火剤 規制開始も処分負担重く 空港保有分、自治体任せ」(2026年6月・Web東奥配信)
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/2305708 - 環境省「PFOS等含有泡消火薬剤全国在庫量調査の結果について」(2024年11月1日)
https://www.env.go.jp/press/press_03919.html - 環境省・消防庁「PFOS等を含有する消火器・泡消火薬剤等の取扱い及び処理について」
https://www.env.go.jp/chemi/kagaku/pfos.html - 信濃毎日新聞「PFAS泡消火剤、松本空港に3480リットル 地方自治体管理の空港、計7万リットル」(2026年6月)
- 消防庁「PFOS等含有泡消火薬剤に関する調査への協力について」
- 日本消火器工業会「PFOA等を含有する消火器・消火薬剤の取扱いについて」































