清水建設が粘性土のPFAS汚染土を洗浄する技術を確立
98%除去・95%回収の意味と、土壌対策への示唆
清水建設は2026年6月24日、これまで土壌洗浄による処理が難しいとされてきた「粘性土主体のPFAS汚染土壌」を対象に、洗浄による浄化技術を確立したと発表しました。
室内試験では、土壌中のPFAS含有量の98%以上を除去し、浄化土として95%以上を回収できたとしています。さらに同社は、2026年9月から米国テキサス州に小規模プラントを設置し、プラントスケールでの技術実証に取り組む予定です。
今回の発表は、PFAS汚染土壌対策において重要な意味を持ちます。とくに注目すべきなのは、従来の土壌洗浄では処理が難しいとされてきた「粘性土」に対して、現場処理の可能性を広げる技術である点です。
本記事では、清水建設の発表内容をもとに、この技術が何を意味するのかを、技術の中身、従来の課題、実務上の示唆、そして残る論点に分けて整理します。
清水建設とは
清水建設株式会社は、1804年創業の大手総合建設会社です。現在の本社は東京都中央区京橋にあり、建築・土木を中心に、都市開発、エンジニアリング、環境関連技術など幅広い事業を展開しています。
一般には、オフィスビル、商業施設、病院、工場、インフラなどを手がけるスーパーゼネコンの一社として知られていますが、環境分野でも土壌・地下水浄化、廃棄物処理、再生可能エネルギー、脱炭素関連技術などに取り組んでいます。
PFAS分野では、土壌洗浄技術や泡沫分離技術を活用し、PFAS汚染土壌・汚染水の浄化技術開発を進めています。今回の粘性土主体のPFAS汚染土壌洗浄技術は、同社がこれまで培ってきた土壌浄化・環境エンジニアリング技術をPFAS対策に展開したものと位置づけられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 清水建設株式会社 |
| 創業 | 1804年 |
| 本社所在地 | 東京都中央区京橋二丁目16番1号 |
| 主な事業 | 建築、土木、海外建設、エンジニアリング、都市開発、環境関連技術など |
| PFAS関連の注目点 | PFAS汚染土壌・汚染水の浄化技術開発。土壌洗浄、泡沫分離、粘性土対応技術など |
| 今回の発表 | 粘性土主体のPFAS汚染土壌を対象に、室内試験でPFAS98%以上除去・浄化土95%以上回収を確認 |
| 今後の展開 | 2026年9月から米国テキサス州で小規模プラントによる実証を予定 |
清水建設は何を確立したのか
清水建設が今回確立したのは、PFASが泡に吸着しやすい性質を利用した土壌洗浄技術です。
処理の流れは、大きく二つの工程に分かれます。
まず、汚染土壌に水を加えながら攪拌し、粘性土を泥水、つまりスラリー状にほぐします。粘性土は粒子が細かく、PFASが付着しやすいため、そのままでは洗浄が難しい土壌です。そこで、解泥・分散の工程によって、土に付着しているPFASを水中へ移しやすい状態にします。
次に、下部から泡を供給し、PFASを泡の表面に吸着・濃縮させて回収します。これは「泡浮上分離」や「泡沫分離」と呼ばれる考え方です。PFASを土から水へ、水から泡へと移して集めることで、汚染成分を濃縮し、土壌側を浄化する仕組みです。
室内試験では、PFAS含有量の98%以上を対象土壌から除去し、あわせて浄化土として95%以上を回収できたとされています。
ここで重要なのは、単に「PFASを取れた」というだけではなく、処理後に使える土を高い割合で回収できた点です。土壌対策では、汚染物質の除去率だけでなく、どれだけの土を再利用できるか、どれだけ廃棄物を減らせるかも大きな評価ポイントになります。
なぜ「粘性土」が難しかったのか
土壌洗浄は、一般に砂のような粒の粗い土、つまり砂質土を対象にしやすい技術です。
砂質土は粒子が大きく、水で洗ったり、粒径ごとに分けたりしやすいため、汚染物質を含む細かい成分を分離しやすいという特徴があります。
一方で、粘性土は粒子が非常に細かく、まとまりやすく、汚染物質が付着しやすい土です。清水建設の発表でも、粒径63マイクロメートル未満の細かい粘性土が主体の汚染土壌は、PFASが強く付着しやすく、従来の土壌洗浄では処理が難しいとされています。
このため、粘性土主体のPFAS汚染土壌では、焼却などの処理に頼らざるを得ない場面が多くありました。
しかし、焼却は処理費用が高くなりやすく、汚染土壌を処理施設まで運ぶ必要がある場合には、搬出・運搬コストやCO2排出の問題も生じます。
今回の技術は、こうした「洗浄しにくい粘性土」に対して、解泥・分散と泡浮上分離を組み合わせることで、洗浄処理の可能性を広げるものです。
98%除去・95%回収は何を意味するのか
今回の発表で目を引くのは、「PFAS98%以上除去」と「浄化土95%以上回収」という二つの数字です。
PFAS98%以上除去とは、対象土壌に含まれていたPFASの大部分を土壌から取り除けたことを意味します。
一方、浄化土95%以上回収とは、処理した土壌の大部分を、浄化土として回収できたことを意味します。
この二つは、似ているようで意味が違います。
PFAS除去率は、汚染物質をどれだけ減らせたかを示す数字です。
浄化土回収率は、処理後に使える土をどれだけ残せたかを示す数字です。
土壌対策では、汚染物質を取り除けても、大量の汚染残さや廃棄物が出てしまうと、処理コストや最終処分の負担が大きくなります。そのため、PFASを高率に除去しながら、土壌を高い割合で回収できるという点は、実務上大きな意味があります。
ただし、これらの数値は室内試験の条件下で得られた結果です。
実際の現場では、土質、PFASの種類、濃度、共存物質、地下水条件、処理量などによって結果が変わる可能性があります。
したがって、今回の数値は「実フィールドでも常に同じ結果が保証される」という意味ではなく、「難しいとされてきた粘性土に対して、室内試験で高い有効性が確認された」と読むのが適切です。
何が変わり得るのか
清水建設は、この技術によって汚染現場での処理、つまり場内処理が可能になれば、粘性土主体の汚染土壌を低コストで浄化できる可能性があるとしています。
従来の流れでは、汚染土壌を掘削し、場外の処理施設へ運び、焼却などで処理する方法が中心になりがちでした。
これに対して、場内処理が可能になれば、掘削した土を現場で洗浄し、浄化土として再利用するという選択肢が生まれます。
これにより、期待される効果は大きく三つあります。
一つ目は、処理費用の低減です。焼却量や場外搬出量を減らせれば、処理コストの削減につながる可能性があります。
二つ目は、運搬負荷の低減です。大量の土を処理施設まで運ぶ必要が減れば、トラック輸送やそれに伴うCO2排出の抑制にもつながります。
三つ目は、対策設計の選択肢が増えることです。すべてを焼却するのではなく、洗浄・分離・濃縮・最終処理を組み合わせることで、現場の条件に応じた対策を組み立てやすくなります。
今後の展開
清水建設は、PFAS規制が先行する米国市場で実績を積み上げる方針です。
同社は2023年から米国テキサス州で実汚染土壌を用いたPFAS土壌洗浄の検証に取り組んでおり、今回の粘性土向け技術についても、2026年9月から同州に設置する小規模プラントでプラントスケールの実証を進める予定です。
今後の注目点は、室内試験で確認された性能が、実際のプラント規模でどこまで再現できるかです。
とくに確認すべきポイントは、処理速度、処理コスト、濃縮されたPFASの後処理方法、処理後土壌の品質、現場ごとの土質差への対応です。
米国での実証が進めば、日本国内でのPFAS汚染土壌対策にも応用される可能性があります。とくに、泡消火薬剤の使用履歴がある施設、工場跡地、事業所敷地、地下水汚染と土壌汚染が連動している現場では、今後注目される技術の一つになると考えられます。
押さえておきたい視点
1. これは「分離・回収」であり、「分解」ではない
今回の技術は、PFASを土から取り除き、泡に集めて濃縮する技術です。
つまり、PFASそのものを壊して無害化する「分解技術」ではありません。
この点は非常に重要です。
PFAS対策では、「除去」「浄化」「分解」という言葉が混同されがちです。しかし、実務上はそれぞれ意味が異なります。
除去や浄化は、汚染された場所からPFASを取り除くことを指します。
分離・回収は、PFASを一か所に集めて濃縮することを指します。
分解は、PFASの構造を壊し、別の物質へ変えることを指します。
今回の技術は、このうち「分離・回収」にあたります。
そのため、回収・濃縮されたPFASを最終的にどう処理するかは、別の工程として残ります。実務では、洗浄や泡分離でPFASを集め、濃縮したものを焼却や分解技術などで処理する「トリートメント・トレイン」の考え方が重要になります。
今回の技術は、その前半部分、つまり「広く薄く存在するPFASを集めて、処理しやすくする」工程を担うものと位置づけられます。
2. 現時点では「室内試験」の段階である
今回の98%以上除去、95%以上回収という数値は、室内試験で得られた結果です。
これは大きな前進ですが、実際の現場でそのまま同じ結果が出るとは限りません。
実サイトでは、土壌の種類、粘性土の割合、有機物の量、PFASの種類、汚染濃度、共存する汚染物質、地下水の状態などが複雑に絡みます。
そのため、2026年9月以降に予定されている小規模プラントでの実証が重要になります。
記事としては、「清水建設がPFAS汚染土壌を98%除去」と強く言い切るよりも、「室内試験で98%以上の除去を確認」と表現する方が正確です。
3. 製造業・自治体にとっても重要な技術である
PFAS汚染土壌は、飛行場や基地周辺だけの問題ではありません。
泡消火薬剤を使用してきた施設、PFASを含む材料や薬剤を扱ってきた工場、過去の事業所跡地などでも、土壌や地下水の問題として顕在化する可能性があります。
土壌中のPFASは、地下水へ溶け出す供給源になることもあります。そのため、水質対策だけでなく、土壌側の対策技術を知っておくことは、企業や自治体のリスク管理にとって重要です。
とくに、粘性土主体の土地では、従来の土壌洗浄が使いにくいとされてきました。今回の技術が実用化に近づけば、搬出・焼却だけではない選択肢が増える可能性があります。
これは、製造業の敷地管理、不動産・再開発、自治体の環境対策、土壌・地下水調査の実務にとっても注目すべき動きです。
よくある質問
Q1. 清水建設の技術は、PFASを完全に無害化する技術ですか?
いいえ。今回の技術は、PFASを土壌から分離・回収し、濃縮する技術です。PFASそのものを分解して無害化する技術ではありません。
そのため、回収されたPFASを含む濃縮物については、別途、焼却や分解技術などによる最終処理が必要になります。
Q2. PFAS98%除去ということは、すぐに実際の現場でも使えるという意味ですか?
現時点では、室内試験で高い除去率が確認された段階です。
清水建設は2026年9月から米国テキサス州の小規模プラントでプラントスケールの実証に取り組む予定です。実際の現場での性能やコストは、土質、汚染濃度、処理量、運用条件によって変わる可能性があります。
Q3. 「95%回収」とは何を意味しますか?
浄化処理後に、土壌の95%以上を浄化土として回収できたという意味です。
土壌対策では、汚染物質を除去するだけでなく、処理後にどれだけの土を再利用できるかも重要です。浄化土として回収できる割合が高ければ、場外搬出量や最終処分量を減らせる可能性があります。
Q4. なぜ粘性土のPFAS汚染土壌は処理が難しいのですか?
粘性土は粒子が細かく、PFASが付着しやすい性質があります。また、泥状になりやすく、粒子を分けたり洗ったりする処理が難しいため、従来の土壌洗浄では対応しにくいとされてきました。
今回の技術では、解泥・分散によって粘性土をスラリー状にし、PFASを水中へ移しやすくしたうえで、泡浮上分離によってPFASを回収する点が特徴です。
Q5. 焼却処理は不要になりますか?
すぐに焼却処理が不要になるという意味ではありません。
今回の技術は、PFASを含む土壌全体をそのまま焼却するのではなく、PFASを分離・濃縮し、処理対象を減らすことを狙う技術です。濃縮されたPFASについては、焼却や分解技術などの後処理が必要になる可能性があります。
つまり、焼却を完全に置き換えるというより、焼却すべき量を減らす、または他の分解技術と組み合わせるための前処理技術と見るのが現実的です。
Q6. 日本国内のPFAS汚染土壌対策にも使われる可能性はありますか?
可能性はあります。
清水建設は、米国で実績を積み上げたうえで、国内外でのPFAS汚染土壌浄化事業の展開を目指すとしています。日本国内でも、泡消火薬剤の使用履歴がある施設、工場跡地、事業所敷地、地下水汚染が確認された地域などで、土壌側の対策が課題になる可能性があります。
ただし、国内での適用には、実証結果、コスト、法制度、処理後土壌の扱い、回収濃縮物の最終処理方法などを確認する必要があります。
Q7. 企業や自治体は、今回の発表をどう受け止めればよいですか?
「すぐにすべて解決する技術」と見るのではなく、「PFAS汚染土壌対策の選択肢が広がる可能性がある技術」と見るのが適切です。
とくに、粘性土主体の土地、場外搬出や焼却コストが大きい現場、地下水汚染と土壌汚染が連動している現場では、今後の実証結果を注視する価値があります。
企業や自治体としては、まず自社・自地域のPFAS使用履歴、泡消火薬剤の使用履歴、土壌・地下水調査の有無を整理し、必要に応じて専門機関に相談できる体制を整えておくことが重要です。
まとめ
清水建設は、処理が難しいとされてきた粘性土主体のPFAS汚染土壌を対象に、解泥・分散と泡浮上分離を組み合わせた洗浄技術を確立しました。
室内試験では、PFAS含有量の98%以上を除去し、浄化土として95%以上を回収できたとされています。
この技術の意義は、従来は焼却などに頼らざるを得なかった粘性土主体の汚染土壌に対して、場内処理や土壌再利用の可能性を広げる点にあります。
ただし、今回の技術はPFASを分解するものではなく、分離・回収して濃縮する技術です。回収後のPFASをどう最終処理するかは、別の工程として残ります。
また、現時点の性能値は室内試験の結果であり、プラントスケールでの実証は2026年9月以降に予定されています。
PFAS汚染土壌対策は、水処理、土壌洗浄、分離・濃縮、分解・無害化を組み合わせて考える段階に入っています。清水建設の今回の発表は、その中でも「難しい粘性土をどう扱うか」という実務上の大きな課題に対する、注目すべき一歩といえます。
※出典:清水建設ニュースリリース「粘性土主体のPFAS汚染土壌の洗浄技術を確立」(2026年6月24日)、同社のPFAS汚染土壌・汚染水浄化技術に関する公表資料、および関連報道。性能値は室内試験等の条件下での結果であり、実フィールドでの効果を保証するものではありません。
※フッ素とPFASは別物です。本記事は「PFAS(有機フッ素化合物)」を対象としています。
▼関連:PFAS汚染土壌の浄化技術マップ/【企業プロフィール】清水建設/PFASを分解する技術マップ
▼PFASの簡易チェックは〔無料診断〕へ/ご相談は〔お問い合わせ〕へ






























