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長鎖PFCA(LC-PFCA)とは何か?ストックホルム条約COP12での規制決定と日本への影響を完全解説

2026.03.30

2025年5月、スイス・ジュネーブで開催されたストックホルム条約(POPs条約)第12回締約国会議(COP12)で、新たなPFASの規制が決定しました。
対象となったのは「長鎖PFCA(LC-PFCA:Long-chain Perfluorocarboxylic Acids)」とその関連物質です。
「長鎖PFCAとは何か」「なぜ今規制されたのか」「日本企業・産業への影響は何か」を詳しく解説します。

長鎖PFCAとは何か

基本的な定義

長鎖PFCA(LC-PFCA)とは、炭素数が9〜21のペルフルオロカルボン酸(PFCA)の総称です。
「ペルフルオロカルボン酸(PFCA)」とは、炭素鎖の水素がすべてフッ素に置換されたカルボン酸の総称です。炭素鎖の長さ(炭素数)によって短鎖・長鎖に分類されます。

炭素数と分類、主な物質例

  • C4〜C8 : 短鎖PFCA  
    (例)PFBA(C4)・PFPeA(C5)・PFHxA(C6)・PFHpA(C7)・PFOA(C8)
  • C9〜C21 : 長鎖PFCA(LC-PFCA)
    (例)PFNA(C9)・PFDA(C10)・PFUnA(C11)・PFDoA(C12)・PFTrA(C13)・PFTeA(C14)等

PFOAは炭素数8のPFCAですが、C8の「境界値」に位置するため、COP12ではC9以上が「長鎖PFCA」として規制対象となりました。

主な長鎖PFCA物質

略称と正式名称 【 炭素数の関係 】
  • PFNA : ペルフルオロノナン酸 【C9】
  • PFDA : ペルフルオロデカン酸 【C10】
  • PFUnA : ペルフルオロウンデカン酸 【C11】
  • PFDoA : ペルフルオロドデカン酸 【C12】
  • PFTrA : ペルフルオロトリデカン酸 【C13】
  • PFTeA : ペルフルオロテトラデカン酸 【C14】
  • PFODA等 : 炭素数15〜21の長鎖PFCA 【C15〜C21】

長鎖PFCAの用途:なぜ広く使われてきたのか

長鎖PFCAはPFOAの代替品・製造中間体として広く使われてきました。

主な用途
  1. フッ素ポリマー(フッ素樹脂)の製造補助剤
    PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やフッ素エラストマーなどのフッ素ポリマーを製造する際に、乳化剤・界面活性剤として使用されます。フッ素樹脂は半導体製造・配管・フライパンのコーティングなど幅広い産業に使われています。
  2. 撥水・撥油加工剤の原料
    繊維・紙・包装材などの撥水・撥油加工に使用される化合物の原料として使われています。
  3. 電子・半導体産業での使用
    フォトレジスト(半導体製造工程で使う感光剤)の添加剤として使用されることがあります。
PFOAとの関係

2019年にPFOAがPOPs条約で廃絶対象となり、代替品を求める動きが加速しました。長鎖PFCAの一部はPFOAの代替として使用が拡大しましたが、同様の残留性・蓄積性・毒性が確認され、今回規制対象となりました。

COP12での決定内容(2025年5月)

開催概要
  • 会議名 : ストックホルム条約第12回締約国会議(COP12)
  • 開催期間: 2025年4月28日〜5月9日
  • 開催地 : スイス・ジュネーブ
  • 参加国 : 186か国+EU
決定内容

COP12において、長鎖PFCA(C9〜C21)とその塩・関連物質を附属書A(廃絶)に追加することが決定されました。
附属書A(廃絶)とは:製造・使用・輸出入を原則禁止する最も厳しい規制区分。PFOA・PFHxSも同じ附属書Aに位置づけられています。

附属書A追加の意味
  • 締約国は原則として長鎖PFCAの製造・使用・輸出入を禁止する義務を負う
  • 条約上の例外措置(エッセンシャルユース等)が適用される場合は一定期間の猶予あり
附属書改正の発効時期

条約の附属書改正は、国連事務局が各締約国に改正内容を通知してから1年後に発効します。COP12での決定(2025年5月)を受けた通知から1年後が発効日となります。

規制の経緯:なぜ今なのか

長鎖PFCAがCOP12で規制対象となった背景には、2020年代に入ってから積み上がった科学的知見があります。

POPRC(残留性有機汚染物質検討委員会)での審査経緯

  • POPRC19(2023年10月): 長鎖PFCAのリスク管理評価を検討。廃絶対象への追加をCOP12に勧告することを決定
  • POPRC20(2024年9月): 適用除外の用途を明確化した上で廃絶対象への追加をCOP12に勧告
  • COP12(2025年5月): 附属書A追加を正式決定

長鎖PFCAが問題視された科学的理由

  1. 環境中での残留性
    長鎖PFCAはPFOAと同様に環境中で分解されにくく、土壌・水・生物の体内に長期間残留します。
  2. 生物蓄積性
    炭素鎖が長いほど生物蓄積性が高くなる傾向があります。長鎖PFCAはPFOAより強い生物蓄積性を示す物質もあります。
  3. 健康影響の懸念
    肝臓毒性・免疫系への影響・発がん性との関連が一部の研究で指摘されています。
  4. EUでの先行規制
    EUでは一部の長鎖PFCA(C9〜C14 PFCA)について2023年からREACH規則で制限が先行的に設けられており、国際条約でも規制強化を求める声が高まっていました。

日本への影響

化審法への反映

日本はPOPs条約の締約国として、条約での規制決定を化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に反映させる義務があります。
2025年6月20日:厚生労働省・経済産業省・環境省の3省合同会議が開催され、長鎖PFCAの化審法第一種特定化学物質への指定に向けた審議が開始されました。

今後のスケジュール(予定):

  • 2025年冬以降 : パブリックコメントの実施
  • 2026年〜 : 化審法施行令の改正・長鎖PFCAの第一種特定化学物質への指定
  • 指定後 : 長鎖PFCAの製造・輸入等が原則禁止
影響を受ける産業・企業
  1. フッ素化学産業
    フッ素ポリマー(PTFE・PVDFなど)の製造工程で長鎖PFCAを使用している場合、代替品への切り替えが必要になります。
  2. 半導体・電子産業
    フォトレジストやエッチング液などの製造工程での使用について確認が必要です。
  3. 繊維・紙・包装産業
    撥水・撥油加工剤の原料として長鎖PFCAが使われている場合、代替材料の検討が必要です。
  4. EU輸出企業
    EUはすでにC9〜C14 PFCAをREACH規則で制限しています。EU向け輸出製品の含有調査・代替対応が急務です。

実務上の確認ポイント

自社の製品・製造工程で長鎖PFCAが使用されていないかを確認するためのチェックリストです。
✅ フッ素ポリマー(PTFE・PVDF・FEP等)を製造・使用しているか
✅ 撥水・撥油加工剤を使用しているか
✅ フォトレジスト・エッチング液を使用しているか
✅ EU向け輸出製品にC9〜C14 PFCAが含まれていないか
✅ サプライヤーへのPFAS含有調査票を送付・回収しているか

EUでの先行規制との関係

EUは2023年からC9〜C14 PFCAについてREACH規則で以下の制限を実施しています。

閾値(2023年2月以降EU市場に投入される物質・混合物・成形品):

  • C9〜C14 PFCAの合計:25ppb(部品・成形品の場合)

さらに2025年のCOP12でC9〜C21の長鎖PFCA全体が附属書Aに追加されたことで、EU POPs規則の改正につながる可能性があります。EU向け輸出を行っている企業は、REACH規制への対応に加えてPOPs規則の動向も継続的に確認する必要があります。

まとめ

長鎖PFCA(LC-PFCA)とCOP12のポイントをまとめます。

  • 長鎖PFCAとは炭素数9〜21のペルフルオロカルボン酸の総称で、PFOAの代替品・製造中間体として広く使われてきた
  • 2025年5月のCOP12で附属書A(廃絶)への追加が決定。同条約で規制されるPFASはPFOS・PFOA・PFHxSに続いて拡大した
  • 発効は国連事務局の通知から1年後
  • 日本では3省合同会議で化審法への反映審議が開始(2025年6月)
  • フッ素化学・半導体・繊維・EU輸出企業への影響が大きい
  • EUではC9〜C14 PFCAがREACH規則で2023年から先行規制済み
  • 「PFASの規制はPFOS・PFOAで終わり」ではなく長鎖PFCAへと拡大が続いている
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