PFASは除去の先へ クボタの高温溶融炉による分解技術を解説
株式会社クボタが、有機フッ素化合物(PFAS)を溶融技術で分解する実証に成功したと発表し、注目を集めています。
SNSでは「PFOS・PFOA・PFNAの3種類を99.999%分解した」という形で拡散していますが、一次情報を確認すると、現時点で確認・公表されている内容はやや異なります。
本記事では、発表のポイントと「99.999%」という数字の正確な意味、そして製造業・自治体・水道事業者にとっての示唆を整理します。
何が発表されたのか
クボタは2026年6月16日、廃棄物処理に用いる溶融分離技術を活用し、PFASを分解する実証実験に成功したと発表しました。
報道によれば、国際基準が定める分解効率99.999%以上を達成し、国内に加えて米国など海外での事業展開を目指すとしています。
米国が定める方式で分析した場合も、同等の分解率であることが確認されたとされています。
この成果の技術的な裏付けとなっているのが、同社が2026年1月22日に公表した実証試験の結果です。
溶融分離技術とは
クボタは、廃棄物の適正処理と資源化を目的に、回転式表面溶融炉を用いた溶融分離技術を開発・提供しています。
この溶融炉は1250〜1400℃という高温で運転され、高温下で元素を分離・濃縮することにより廃棄物を無害化します。
PFASは炭素とフッ素の強固な結合を持ち、自然界では分解されにくい物質です。
分解処理の方法のひとつとして、環境省は約1,100℃以上(推奨は約1,100℃以上)の高温での焼却処理を想定していますが、クボタの溶融炉はそれを上回る温度で運転されているため、この高温環境を分解に活用できる、という点が技術の核心です。
「99.999%」という数字の意味
「99.999%(ファイブナイン)」という数字は、バーゼル条約の技術ガイドラインが、残留性有機汚染物質(POPs)を環境上適正に分解処理するための要件として定めている分解効率です。
環境省の「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」でも、分解効率99.999%以上であることが確認の基準とされています。
クボタが2026年1月に公表した実証試験では、PFNA(ペルフルオロノナン酸)を対象に、この要件を満たすことが確認されました。
具体的には、PFNAを添加した焼却灰を溶融炉へ投入し、処理後に排出されるスラグ・飛灰・排ガス中のPFNA量を測定したところ、処理前に9,611.53mg/h含まれていたPFNAが、処理後は合計0.00649mg/h未満となり、分解効率は99.99993%超と算出されました。
これはPFNAを添加していない場合とほぼ同程度の水準であり、添加したPFNAがほぼ完全に分解されたと考えられる、という結果です。
なお、この研究は国立環境研究所と共同で行われ、国際水連盟(IWA)の国際会議で優秀ポスター賞を受賞しています。
正確に読むべきポイント:実証範囲は段階的に広がっている
クボタが2026年1月に公表した実証試験では、まずPFNAを対象に99.99993%超の分解効率が確認されました。
その後、2026年6月の発表ではPFOS・PFOAを含む3物質へ対象を拡大し、いずれも99.999%以上の分解効率を確認したとしています。
注目すべきなのは、単に「分解できた」という点だけではありません。
どの物質を対象に、どの条件で、どのような測定方法で確認したのかまで含めて評価することが重要です。
PFASは1万種類以上存在するとされており、今回確認されたのはその中の一部です。
技術を評価する際は、対象物質の範囲もあわせて確認する必要があります。
なぜこの技術が重要なのか
PFAS対策の議論は、水道水や地下水から「どう除去するか」に注目が集まりがちです。しかし、活性炭などで吸着・除去したPFASは、最終的に適切に分解・処分する必要があります。除去はあくまで途中段階であり、「除去したPFASをどう処理するか」という”出口”の課題が残るのです。
2026年4月から水道水でPFOS・PFOAの合算50ng/Lが基準値として義務化され、各地で井戸水や環境水のPFAS検出が相次いで報じられるなか、PFASを含む廃棄物(焼却灰、使用済活性炭、汚染土壌など)の処理ニーズは今後さらに高まると考えられます。溶融による分解・資源化は、こうした”出口”を担う選択肢のひとつとして位置づけられます。
製造業・自治体・水道事業者への示唆
製造業:自社工程で発生するPFAS含有廃棄物や使用済活性炭の処理ルートを、いまのうちに確認しておくことが重要です。分解技術を比較検討する際は、対象物質・分解効率・測定方法を必ず確認しましょう。
自治体・水道事業者:浄水処理で使用した活性炭の最終処分は、今後の論点になり得ます。除去技術だけでなく、その先の分解・処分まで含めた一連の流れで対策を考える視点が求められます。
PFASの分解技術は急速に進展していますが、報道やSNSの要約だけでは、対象物質や実証の範囲を正確につかみにくいのが実情です。自社の状況に技術がどこまで適合するかを判断するには、一次情報の確認と、PFAS対策では、測定・除去だけでなく、使用済活性炭や汚染土壌などの最終処理まで含めて検討することが重要です。PFAS Solutions+では、国内外の技術動向や規制情報の提供を行っています。
出典
株式会社クボタ ニュースリリース「PFASの一種PFNAを99.999%を超える高効率で分解」(2026年1月22日)
日本経済新聞「クボタ、PFASの高効率分解に成功 廃棄物の溶融技術活用で」(2026年6月16日)
環境省「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」(令和4年9月)
環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」(要調査項目・水質基準関連)
※公開前に、最新のクボタ公式発表(6月16日分のリリース有無)と各数値を再確認のうえご利用ください。































