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PFASの適用除外・経過措置とは|SEAC意見案の分野別の扱いを整理【2026年版】

2026.05.17

EUのPFAS規制では、「すべてが一律にすぐ禁止される」わけではありません。用途ごとに、適用除外(デロゲーション)や経過措置が議論されています。製造業の現場でいちばん知りたいのは、「自社の用途は、どれくらいの猶予を得られるのか」という一点でしょう。

この記事では、欧州化学品庁(ECHA)の社会経済分析委員会(SEAC)の意見“案”をもとに、塗料・電線・ケーブル・シーリング・電池・潤滑剤といった分野ごとの扱いを、早見表とともに整理します。

本記事の内容はすべてSEAC意見の“案”(ドラフト)段階であり、最終決定でも法的助言でもありません。具体的な該非判断や対応は、用途・製品ごとに異なります。EU PFAS規制の全体像はEUのPFAS規制とはをご覧ください。

【早見表】分野別の適用除外・経過措置(現時点のSEAC案)

用途・分野 SEAC案での扱い(現時点) 関連するRO 確定度・注記
一般的な塗料(自動車用・建築用 等) 分野別の猶予は提案されていない。条件に当たれば移行期間18か月後に禁止 適用除外なし(実質RO1) 案段階。添加剤・樹脂の該非は個別判断
電線・ケーブルの絶縁材(低・中温/超高周波を除く) 適用除外(RO2)は正当化されない方向 RO2は不要との判断 温度・発生頻度の区分は困難とも。目安は −40〜100℃±20℃
電子機器・半導体(全般) RO3(厳格な条件下での使用継続)が比例的とされた分野 RO3 使用周波数100GHz以上は代替不可とされる
シーリング(ガスケット・Oリング・パッキン) 提案国は13.5年を提案。ただしSEACは詳細評価をしていない RO2提案(RO3は「十分有効でない」との整理も) 2025年8月追加の8セクター。評価途中で結論未定
電池用電解質(エネルギー分野) RO2(約13.5年)が正当化される公算が高い RO2/RO3 個別化合物の該非は自己判断。RO3は要原文確認
潤滑剤(フッ素オイル・金型離型剤) 潤滑剤(5aa)扱い。半導体セクターからは除外 RO2(猶予の最終結論は未定) 離型剤の猶予は不確実性により結論保留

※「確定度」はあくまで現時点のSEAC案の状況です。最終意見・規制本文で変わり得ます。

PFAS規制は 一律禁止ではない

まず押さえる:RO1・RO2・RO3とは

EUのPFAS規制案は、大きく3つの「規制オプション(RO)」で議論されています。自社の用途がどのROで扱われるかで、見通しが大きく変わります。

  • RO1:18か月の移行期間つきの全面禁止(適用除外なし)。科学的にはこれが最も排出削減に有効とされます。
  • RO2:用途ごとの「期限つき適用除外」を伴う禁止。除外期間は多くが5年または12年(移行期間18か月を含めると 6.5年/13.5年)。SEACは原則としてRO2を最も適切としつつ、データ不足から全体の比例性は確認できないとしています。
  • RO3:全面禁止ではなく、ライフサイクル全体で排出を最小化する厳格な条件下での使用継続。分析された範囲では、電子機器・半導体には比例的、エネルギー等にはおそらく比例的、輸送・シーリング・機械用途には十分に有効でない、と整理されています。

「13.5年」という数字だけが独り歩きしがちですが、これはRO2の話で、用途・分野ごとに扱いが違うという点に注意が必要です。

RO1・RO2・RO3 とは?

分野別に見る、適用除外・経過措置の現在地

① 一般的な塗料には、猶予が提案されていない

自動車用・建築用などの一般的な塗料には、分野別の経過措置が提案されていません。塗料にPFASに該当する添加剤(表面調整剤・消泡剤など)やフッ素樹脂が含まれ、制限の条件に当てはまれば、移行期間(18か月)後に製造・使用・上市などが禁止される方向です。「特殊な用途ではないから大丈夫」と考えていた塗料こそ、成分の確認が必要です。

② 電線・ケーブルの絶縁材は、温度と周波数で線引き

電子機器・半導体の電線・ケーブル(コネクタを含む)の絶縁材については、低・中温用途(超高周波を除く)では適用除外(RO2)は正当化されない、という方向で議論されています。前回のパブリックコメントの分析からは、低温/中温の範囲は製造時・使用時を含めて おおむね −40〜100℃±20℃、使用周波数 100GHz以上 の用途では代替が不可能、といった目安が示されています。電線・ケーブル以外の電子部品の絶縁材については、まだ十分な情報がありません。PFASの対象範囲そのものについては「PFASの定義(CF3・CF2)」もあわせてご確認ください。

③ シーリング(ガスケット・Oリング)は“評価の途中”

物質の移動防止・圧力保持・汚染回避などの目的で使うガスケット・シール・パッキンは(輸送用途・建設製品用途を除き)「シーリング用途」に整理される方向です。この分野は2025年8月の改訂で追加された8セクターに含まれ、提案国は13.5年の猶予を提案しています。

ただし重要なのは、今回のSEAC意見案では、この追加8セクターについて詳細な評価が行われていないこと。「評価が行われるまで」という期限つきの扱いが議論されているにとどまり、最終的な結論は出ていません。「13.5年で確定」ではなく「提案はされているが評価途中」という段階です。自動車部品では使用頻度の高い領域だけに、数字だけで判断しないことが大切です。

13.5年で確定 ではない

④ 電池用電解質は「化合物」ではなく「用途」で評価

リチウムイオン電池の電解質については、SEACは化合物を一つずつ評価しているわけではなく、PFASの定義と用途でまとめて評価しています。「電池の電解質として使われるPFAS」という範囲では、RO2(約13.5年)が正当化される可能性が高いとされる一方、より手厚いRO3については、情報不足で結論を出せないという評価もあります(分野全体としての扱いは原文の確認が必要です)。

個別の電解質(LiPF6・LiFSI・LiTFSI など)がPFASに該当するかは、最終的にPFASの定義に照らして各社が判断する必要があります。EVシフトとPFAS規制が交差する、もっとも難しい論点の一つです。

⑤ フッ素オイル・金型離型剤は「潤滑剤」セクター

半導体製造工程の真空ポンプ用フッ素オイルは、原則「潤滑剤(5aa)」として扱うのが妥当とされています。半導体セクターは「製造プロセス」自体を対象としますが、そこで使われる潤滑剤は半導体セクターから除外され、潤滑剤セクター扱いと用途マッピングに明記されています。フッ素含有の金型離型剤も同じく潤滑剤に含まれると考えられますが、その猶予についてはSEAC意見草案でも「正当化されうる可能性はある」としつつ、不確実性のため最終結論には至っていません。

⑥ 「総PFAS」と「総フッ素量」は意味が違う

混同されやすいのが、2つの閾値です。総PFAS(高分子PFASを含む)50ppm以上は上市の禁止、一方で総フッ素量 50mg F/kg 超は禁止ではなく報告義務です。「総PFAS」は制限対象のPFASだけの量、「総フッ素量」は無機フッ素など制限対象外も合算した数値のため、総フッ素量が閾値を超えた場合は、そのフッ素がPFAS由来か否かを説明できるエビデンスが求められると理解されています。

分野ごとの扱い

よくある質問(FAQ)

Q. PFASの経過措置「13.5年」は確定ですか?

A. いいえ。13.5年はRO2で議論されている期間で、用途・分野ごとに扱いが異なります。特にシーリングなど2025年8月に追加された分野は、SEACが詳細評価をしておらず、結論は出ていません。現時点はすべてSEAC意見“案”の段階です。

Q. 一般的な塗料は適用除外になりますか?

A. 一般的な塗料には分野別の猶予が提案されていません。PFASに該当する添加剤やフッ素樹脂を含み、制限の条件に当たれば、移行期間(18か月)後に禁止される方向です。

Q. 総PFASと総フッ素量は何が違うのですか?

A. 総PFAS 50ppm以上は「上市禁止」、総フッ素量 50mg/kg超は「報告義務」です。後者は制限対象外のフッ素も合算するため、フッ素の由来を説明できるエビデンスが求められると理解されています。

Q. 半導体の真空ポンプ用フッ素オイルはどのセクターですか?

A. 原則「潤滑剤(5aa)」として扱うのが妥当とされています。半導体セクターからは除外され、潤滑剤セクター扱いと整理されています。

Q. 電池の電解質(LiPF6・LiTFSIなど)はPFASですか?

A. SEACは化合物ごとに該非を確定していません。最終的にはPFASの定義に照らして各社が判断する必要があります。用途としての電解質はRO2(約13.5年)が正当化される公算が高いとされています。

まず必要なのは 自社用途の整理

自社の用途は、どこに当てはまる?

ここで整理したのは、あくまで「SEAC案の読み解き方」です。実際の該非判断・対応方針は、製品の構成・用途・取引先からの要求によって一つひとつ異なり、最終的には弁護士や規制当局の判断、定量分析が必要になる場面もあります。

まずは自社のPFAS使用状況を把握するところから始められます。

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PFAS Solutions+ は、愛知・東海地域の自動車部品メーカーをはじめとする製造業の現場で、「自社製品がどのセクター・どの経過措置に当てはまりそうか」「Tier1から届いた調査票にどう向き合うか」といった整理と検討に伴走しています。

参考(一次ソース)

※本記事はECHA公式資料およびSEACの分野別評価書をもとに整理したものです。いずれもSEAC意見の“案”段階の内容であり、最終決定・法的助言ではありません。

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