ng/L(ナノグラム・パー・リットル)とは何か|PFAS濃度単位を東京ドームで徹底解説
ng/L(ナノグラム・パー・リットル)とは何か|PFASの濃度単位をわかりやすく解説
PFAS(有機フッ素化合物)の報道では「50ng/L以下」「4ng/L」という数字が頻繁に登場します。でも「ng/L」という単位、どのくらいの量なのかイメージできますか?
「ナノグラム・パー・リットル」という言葉を聞いただけでは、その小ささが全くピンとこないのが正直なところだと思います。この記事では、ng/Lという単位の意味と、なぜPFASの濃度管理にこの単位が使われるのかを、具体的なたとえ話を使って徹底的に解説します。
単位の仕組みから理解する
ng/Lは「ナノグラム・パー・リットル」と読み、水1リットルの中に含まれる物質の量をナノグラム(ng)という単位で表したものです。
まず「ナノ」という言葉の意味から整理しましょう。
「ナノ」とは10億分の1を意味する接頭語です。
- 1メートルの10億分の1 = 1ナノメートル(nm)
- 1グラムの10億分の1 = 1ナノグラム(ng)
つまり1ngとは、1グラムの10億分の1の重さです。
日常的な単位と比べてみると、その小ささがわかります。
| 単位 | 1グラムとの比較 |
| 1グラム(g) | 基準 |
| 1ミリグラム(mg) | 1グラムの1,000分の1 |
| 1マイクログラム(μg) | 1グラムの100万分の1 |
| 1ナノグラム(ng) | 1グラムの10億分の1 |
1mgなら目に見えるかもしれませんが、1ngは電子顕微鏡でも見えないほど小さな量です。
日常のたとえで理解する
「10億分の1グラム」と言われても実感がわきにくいと思います。いくつかのたとえで考えてみましょう。
たとえ①:砂糖1粒の重さ
砂糖1粒の重さはおよそ1mg(ミリグラム)です。これを1,000,000粒に分割した重さが1ng。砂糖1粒を100万個に分けた1個分の重さ、これが1ナノグラムです。
たとえ②:東京ドームの水
環境省の資料では、ng/Lの小ささを以下のように表現しています。
「1ng/L=東京ドーム1個分の容積の水(約120万立方メートル)に、1.2グラムが溶けているときの濃度」
東京ドームはおよそ124万立方メートルの容積があります(水で満たした場合)。そこにわずか1.2グラム(小さじ1/4程度)の物質が溶けている状態が、1ng/Lという濃度です。
たとえ③:プールで考える
25メートルプール(水量約750立方メートル)で考えると
- 1ng/L(1兆分の1g/mL)は、25メートルプール約1,333杯分の水に、たった1グラムの物質が溶けている濃度
これほど微量の物質が、人体や環境に影響を与え得るということが、PFASの問題の難しさのひとつです。
なぜこんなに微量で問題になるのか
「そんな微量で本当に問題になるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
実はPFASの難しさはまさにここにあります。非常に微量であっても問題になる理由は2つあります。
理由①:蓄積するから
PFASは体内で分解されにくく、少しずつ体内に蓄積していきます。1回の摂取量が非常に少なくても、毎日飲む水や食べ物から少しずつ体内に取り込まれ、年単位・十年単位で蓄積することで、無視できない量になっていきます。
特にPFOSの体内での半減期は平均約5.7年とされています。つまり今体内にある量が半分になるまでに約6年かかるということです。
理由②:最新の分析技術がng/Lレベルを検出できるようになったから
かつての分析技術ではng/Lレベルの濃度を測定することができませんでした。技術が進歩したことで「こんなに微量でも検出できる」ようになり、問題が明らかになったという側面があります。
検出されるようになった=以前は問題がなかったわけではなく、以前から存在していたけれど検出できなかっただけです。
各国の基準値をng/Lで比較する
ng/Lという単位がわかったところで、各国の水道水のPFAS基準値を改めて見てみましょう。
| 国・機関 | PFOS | PFOA | 備考 |
| 日本(2026年4月〜) | 合算50ng/L | 合算50ng/L | PFOS+PFOAの合算値 |
| 米国(2024年) | 4ng/L | 4ng/L | 各物質個別に設定 |
| WHO(暫定ガイドライン案) | 100ng/L | 100ng/L | 最終確定前 |
| 英国(2022年) | 100ng/L | 100ng/L | — |
| ドイツ(2017年) | 100ng/L | 100ng/L | 2026年以降は更に厳しい値を適用予定 |
日本の50ng/Lは、東京ドーム1杯分の水に60グラムが溶けている濃度。米国の4ng/Lは、東京ドーム1杯分の水にわずか4.8グラムが溶けている濃度です。
これほど微量の差を問題にしているのが現在の国際的なPFAS規制の実態です。
50ng/Lという日本の基準値はどう計算されたか
日本の暫定目標値(現在は水質基準値)50ng/Lがどのように計算されたかを理解することで、ng/Lという単位の意味がさらに深く理解できます。
計算のプロセス
- 動物実験から「安全な1日摂取量(TDI)」を計算する
→ TDI=0.00002mg/kg/日(体重1kgあたり0.00002mg) - 体重50kgの人が毎日2リットルの水を一生飲み続ける場合を想定
- 水からの摂取量はTDIの10%まで、という安全係数を適用
- 上記の条件で計算すると、PFOS・PFOAそれぞれ50ng/Lになる
- さらに安全側に立って、PFOSとPFOAの「合算値」で50ng/Lとする
このように、様々な安全係数を積み重ねて計算された値が50ng/Lです。「なんとなく決まった数字」ではなく、科学的な計算プロセスを経た値です。
ng/Lと他の濃度表記の換算
水質に関するニュースでは、ng/L以外の単位が使われることもあります。換算表を示します。
| 表記 | 意味 | ng/Lとの関係 |
| 1ng/L | 1ナノグラム/リットル | 基準 |
| 1μg/L(マイクログラム/リットル) | — | 1μg/L = 1,000ng/L |
| 1mg/L(ミリグラム/リットル) | — | 1mg/L = 1,000,000ng/L |
| 1ppt(parts per trillion) | 1兆分の1 | 1ppt ≒ 1ng/L(水の場合) |
| 1ppb(parts per billion) | 10億分の1 | 1ppb ≒ 1μg/L = 1,000ng/L |
| 1ppm(parts per million) | 100万分の1 | 1ppm ≒ 1mg/L = 1,000,000ng/L |
米国のニュースでは「ppt(parts per trillion)」という単位がよく使われます。「米国の基準値4ppt」というのは「4ng/L」と実質的に同じ意味です。
ng/mLとng/Lの違い:血中濃度の場合
PFAS問題では水の濃度(ng/L)だけでなく、血中濃度(ng/mL)という単位も登場します。
- ng/L:水1リットル中のナノグラム数(水道水・河川水など)
- ng/mL:血液1ミリリットル中のナノグラム数(血中濃度)
1mL=0.001Lですので、1ng/mL=1,000ng/Lに相当します。
つまり血中濃度の単位は水中濃度より1,000倍「大きく見える」ことになります。
例えば環境省の調査では日本人の血中PFOS濃度の平均が3〜4ng/mL程度と報告されています。一方で水道水の基準は50ng/Lです。
「血中濃度4ng/mLと水道水50ng/Lを比べると血液の方が低い?」と思うかもしれませんが、単位が異なるため単純比較はできません。4ng/mL=4,000ng/Lと換算すると、血中濃度の方が水道水基準値よりはるかに高い濃度であることがわかります(これは体内に蓄積する性質があるためです)。
まとめ
ng/L(ナノグラム・パー・リットル)のポイントを整理します。
- ng/Lとは水1リットル中の物質量をナノグラム(10億分の1グラム)で表した単位
- 1ng/Lは「東京ドーム1杯分の水に1.2グラムが溶けた濃度」という極めて微量
- これほど微量でも問題になるのは「蓄積する性質」と「分析技術の進歩」が理由
- 日本の水道水基準50ng/Lは科学的な計算プロセスを経て設定された値
- 米国は4ng/L・WHO案は100ng/Lと、国際的に基準値が異なる
- 血中濃度のng/mLと水中濃度のng/Lは単位が異なるため直接比較できない









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