環境省「PFASハンドブック」とは?住民が知っておくべき内容をわかりやすく解説【令和7年12月版】
「PFASってよく聞くけど、結局どういうものなの?」
「水道水は本当に安全なの?」
「フライパンや食品は大丈夫なの?」
こうした疑問に答えるために、環境省は「PFASハンドブック(令和7年12月版)」を公表しています。
このハンドブックはもともと地方自治体向けに作られたものですが、内容はPFASに関心を持つすべての人にとって役立つ情報が詰まっています。PFAS Solution+ (旧PFAS研究所)が、住民の方が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
PFASハンドブックとは何か
環境省が2025年4月に初版を公表し、2025年12月に最新版(令和7年12月版)に更新した「PFASに関するハンドブック」です。
本文と参考資料の2冊構成で、PFASに関する基礎知識から環境中の実態、健康影響、国の対応方針までを体系的にまとめています。
作成の目的は「地域行政でのリスクコミュニケーション促進」です。自治体が住民に説明する際の参考資料として作られているため、住民の疑問に答えるという視点で整理されており、一般の方にも読みやすい内容になっています。
令和7年12月版での主な更新点
- 2026年4月施行の水質基準改正の内容を反映
- フォローアップ調査の最新結果を追加
- PFOS・PFOA以外のPFASに関する最新の国際動向を追加
第1章:PFASの基礎知識
PFASとは何か
PFASとは「有機フッ素化合物」の総称で、1万種類以上の物質が含まれます。炭素とフッ素の結合で作られており、水も油もはじく・熱に強い・化学的に安定という優れた性質を持つため、長年にわたり様々な製品に使われてきました。
その一方で「分解されにくい」「生き物の体内に蓄積しやすい」「遠くまで運ばれる」という3つのやっかいな性質も持っています。
PFOS・PFOAとは
PFASの中でも特に問題視されているのが**PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)**の2種類です。
- PFOS:半導体製造・金属メッキ・泡消火薬剤などに使用
- PFOA:フッ素ポリマーの製造補助剤・界面活性剤などに使用
いずれも「難分解性・高蓄積性・長距離移動性」を持つとして、国際条約(POPs条約)の規制対象となり、日本でも製造・輸入が原則禁止されています(PFOSは2010年、PFOAは2021年)。
国際条約による規制の流れ
- 2009年 PFOSがPOPs条約の規制対象に
- 2010年 日本でPFOSの製造・輸入等を原則禁止
- 2019年 PFOAがPOPs条約の規制対象に
- 2021年 日本でPFOAの製造・輸入等を原則禁止
- 2022年 PFHxSがPOPs条約の規制対象に
- 2024年 日本でPFHxSの製造・輸入等を原則禁止
第2章:環境と身の回りのPFAS
環境中の現状:全体的には減少傾向
環境省の長期モニタリングによると、2009年以降、河川・底質・大気中のPFOS・PFOA濃度は全体的に減少傾向にあります。製造禁止の効果が環境中のデータに表れています。ただし過去の汚染が残る地域(軍の基地・工場周辺など)では今も高濃度が検出されることがあります。
水道水のPFAS
水道水については、2026年4月からPFOS・PFOAの合算値で50ng/L以下という水質基準が法的に義務化されました。全国調査の結果、大部分の水道事業者で基準値以下であることが確認されています。
身の回りの製品は?
| 製品 | PFOS・PFOA | 結論 |
| フライパン(フッ素コーティング) | フッ素樹脂はPFOS・PFOAとは別物質 | 特段の心配不要 |
| 撥水スプレー・撥水加工製品 | 基本的に含まれていない | 特段の心配不要 |
| 古いカーペット | 過去にPFOAが使用例あり | 現在継続使用してもリスクは懸念レベルでない |
| 住宅用消火器 | 含まれていない | 問題なし |
| 泡消火薬剤(業務用) | 古いものに含まれる場合あり | 施設での適切な管理・交換が必要 |
フライパンのフッ素コーティングに使われるフッ素樹脂はPFOS・PFOAとは「別の物質」です。「フッ素=PFAS」という誤解がありますが、フッ素を含むすべての化合物がPFASに当たるわけではありません。
食品中のPFAS
農林水産省の調査では、国内の農畜水産物からもPFOS・PFOAが微量検出されることがあります。現時点では食品に関する基準値は設定されていませんが、水・食品・大気など複数の経路からの摂取を総合的に評価して、健康影響の検討が続けられています。
第3章:健康への影響
現時点でわかっていること
食品安全委員会が2024年6月に公表した評価書によると
コレステロール値の上昇・出生時体重の低下・ワクチン応答性の低下との関連は「否定できない」
ただしこれらを健康影響の判断基準として採用するには「証拠が不十分」
発がん性については「ヒトに当てはめられるかどうか判断できない」
また、国内でPFOS・PFOAの摂取が主たる原因とみられる個人の健康被害が発生したという事例は確認されていません。
体に入ったら一生残るの?
残り続けるわけではありません。PFOS・PFOAは体内から徐々に排泄されていきます。新たな摂取がない場合に体内濃度が半分になるまでの時間(半減期)はPFOSで平均約5.7年、PFOAで平均約3.2年とされています。摂取量が減れば体内濃度も下がります。
血液検査を受けるべき?
現時点では血中濃度を測定することはできますが、その数値だけで個人の健康影響を判断することは難しいのが現状です。「何ng/mL以上から健康に影響が出る」という科学的に確立した基準がまだないためです。不安な場合は、お住まいの自治体の保健所・環境担当窓口に相談することをおすすめします。
第4章:国の対応と今後の方向性
これまでの主な対応
時期対応内容2010年PFOSの製造・輸入等を原則禁止2020年水道水の暫定目標値(50ng/L)を設定2021年PFOAの製造・輸入等を原則禁止2023年7月「PFASに関する今後の対応の方向性」を取りまとめ2024年2月PFHxSの製造・輸入等を原則禁止2026年4月PFOS・PFOAの水道水質基準が法的義務化
今後の課題
ハンドブックでは今後の課題として以下が示されています。
- PFOS・PFOA以外のPFASについての実態把握と規制の検討継続
- PFAS一斉分析法(多数のPFASを効率的に測定する手法)の開発
- 科学的知見のさらなる充実
- 汚染地域での地下水管理の継続
- 住民向けリスクコミュニケーションの強化
まとめ:住民として今できること
①水道水は基本的に安全
2026年4月から法的義務化された基準値(50ng/L)のもとで管理されています。今まで通り飲んでいただいて問題ありません。
②井戸水を使っている場合は確認を
自家井戸水は個人管理のため、お住まいの自治体に相談して検査を依頼することをおすすめします。
③身の回りの製品への過度な心配は不要
フライパン・撥水スプレーなどへの過度な不安は必要ありません。ただし正確な情報をアップデートし続けることが大切です。
④情報を継続的に確認する
環境省のPFASページ(https://www.env.go.jp/water/pfas.html)で最新情報が公開されています。
ハンドブックへのリンク
PFASハンドブック(令和7年12月版)本文:https://www.env.go.jp/content/000368188.pdf
PFASハンドブック(令和7年12月版)参考資料:https://www.env.go.jp/content/000368186.pdf
環境省PFASページ:https://www.env.go.jp/water/pfas.html









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