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2026年4月1日|PFOS・PFOA 水質検査 義務化スタート 省令公布済(2025年6月30日) 務化で何が変わるか →

【2026年版】愛知県岩倉市のPFAS問題を徹底整理|数値・現在の対応・「なぜここで?」まで

PFAS(有機フッ素化合物)をめぐる報道のなかで、愛知県岩倉市は早い時期から名前が挙がってきた地域の一つです。

2024年に公表された全国調査では、岩倉団地水源に関係する水から、国の当時の暫定目標値50ng/Lに近い49ng/Lが確認されました。「全国で最も高い水準」と報じられ、不安を感じた方も少なくありません。

しかし、数字を見るときには、少なくとも次の点を分けて考える必要があります。

  • どの水源・地点で測定された数値なのか
  • 井戸からくみ上げた「原水」なのか
  • 家庭の蛇口に届く「給水栓水」なのか
  • 測定後、どのような対策が行われたのか

この記事では、岩倉市とその周辺で何が確認され、現在どのような対応が取られているのかを、公表情報をもとに整理します。
あわせて、多くの方が抱く「なぜ岩倉で検出されたのか」という疑問についても、地下水や地形の特徴を手がかりに考えます。

PFAS Solutions+の運営者も岩倉市に住んでいます。
地元の話だからこそ、不安をあおるのでも、安心を急ぐのでもなく、事実と考察を分けて丁寧に見ていきます。

1.PFASとは

PFASは、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称です。
水や油をはじく、熱や薬品に強いといった性質を持つものがあり、過去には泡消火薬剤、金属メッキ、半導体関連、撥水・撥油加工など、さまざまな用途で使われてきました。

PFASには1万種類以上の物質があるとされ、そのなかでもPFOSとPFOAは、環境中で分解されにくく、蓄積しやすく、離れた場所まで移動しうる性質があることから、国内外で規制や管理が進められています。
こうした残留性の高さから、PFASは「永遠の化学物質(forever chemicals)」と呼ばれることがあります。

PFOS・PFOAと健康影響

PFOS・PFOAの健康影響については、断定を避けて理解することが大切です。

環境省は、動物実験や人を対象とした疫学研究で、肝臓への影響やコレステロール値の上昇などとの関連が報告されている一方、どの程度の摂取で人にどのような影響が生じるかについては、なお知見が十分ではないと説明しています。
また、日本国内では、PFOS・PFOAの摂取が主な原因と判断された個人の健康被害事例は確認されていないとされています。

つまり、
健康への影響が完全に解明されたわけではないため、必要な管理を続ける。一方で、検出されたという事実だけから個人の健康被害を断定することもできない。

これが、現時点での基本的な捉え方です。

2.水道水の基準「50ng/L」とは

日本では、PFOSとPFOAの合算値について、2020年から水道水の暫定目標値として1リットルあたり50ng/L以下が設定されてきました。

その後、食品安全委員会の健康影響評価などを踏まえ、2026年4月1日からは、水道法上の水質基準となりました。
現在、水道事業者等には、PFOS・PFOAの検査と、合算50ng/L以下という基準の遵守が求められています。

50ngは、0.00005mgに相当します。

この数値は、PFOS・PFOAの耐容一日摂取量や、体重、飲水量、飲料水以外からの摂取などを考慮して設定されたものです。
大切なのは、50ng/Lが、
少しでも超えた瞬間に健康被害が発生する境界線ではない
ということです。

長期的な摂取を想定し、安全側に立って水道水を管理するための基準です。
ただし、基準をわずかに下回っていれば、原因調査や濃度低減が不要になるという意味でもありません。基準に近い値が継続して確認された場合には、監視や対策が重要になります。

岩倉市で何が確認されたのか

3.岩倉市で何が確認されたのか

問題となったのは、岩倉市にある水源の一つ、岩倉団地水源です。
岩倉団地水源は、川の水ではなく、井戸からくみ上げた地下水を水源としています。
2024年5月の採水では、PFOSとPFOAの合算値として49ng/Lが確認されました。

当時の国の暫定目標値50ng/Lを超えてはいませんでしたが、非常に近い値です。全国調査で供給水の目標値超過が確認されなかったなか、最も高い水準の一つとして大きく報じられました。

ここで注意したいのは、
「岩倉市全体の水道水が49ng/Lだった」という意味ではない
ということです。

49ng/Lは、特定の水源・採水地点に関する数値です。

岩倉団地水源は、市内の約2,600世帯への給水に関係していたとされます。その後の原水検査では50ng/Lを上回る値も確認され、岩倉市は濃度を下げるための対応を進めました。

4.現在、蛇口の水はどうなっているのか

最も重要な点を先に整理します。

家庭に供給されている給水栓水は、PFOS・PFOAの水質基準50ng/L以下となるよう管理されています。

岩倉市は当初、岩倉団地水源の地下水に愛知県営水道の水などを組み合わせ、給水栓での濃度を下げる対応を行いました。
その後、岩倉団地水源の取水を中止し、県営水道やほかの水源を利用する供給体制へ切り替えたと公表されています。

つまり、対応は、
高い値が確認された地下水をほかの水と組み合わせて使う段階から、その水源の取水自体を止める段階へ進んだ
ということです。

「岩倉市の水道水は危険」と一括りにするのは正確ではありません。

現時点で事実として言えるのは、
特定の地下水源で高い値が確認されたが、その後に水源切り替えなどの対策が取られ、家庭に供給される水は基準以下となるよう管理されている
ということです。

5.「原水」と「給水栓水」は分けて考える

PFASのニュースを読むときに、特に重要なのが「原水」と「給水栓水」の違いです。

原水

井戸や河川などから取水した、処理や水源調整を行う前の水です。

浄水・給水栓水

浄水処理、水源の切り替え、ほかの水との組み合わせなどを経て、実際に家庭へ供給される水です。
原水で高い値が確認されていても、その井戸を止めたり、別の水源へ切り替えたりすれば、家庭に届く水の濃度は下げられます。

一方で、
給水栓水が基準以下になったことと、地下水の汚染がなくなったことは同じではありません。
水道水の安全確保と、地下水汚染の原因究明は、別の課題です。
この二つを分けて考えると、ニュースをより正確に読めるようになります。

6.2026年4月から何が変わったのか

PFOS・PFOAの50ng/Lは、2026年3月までは水質管理上の暫定目標値でした。
2026年4月1日からは、水道法上の水質基準となりました。

これにより、水道事業者や専用水道の設置者などには、

  • PFOS・PFOAの定期的な検査
  • 合算50ng/L以下という基準の遵守
  • 基準を超えた場合の原因調査や低減措置

が求められます。

「できる限り目指す目標」から、「法令上守る水質基準」へ、位置づけが変わったことになります。
ただし、公共用水域や環境中の地下水については、水道法上の水質基準とは制度が異なります。
水道水は「水質基準」、河川や環境地下水は「指針値」というように、同じ50ng/Lでも対象と法的な位置づけが異なる点に注意が必要です。

7.なぜ岩倉で高い値が確認されたのか

結論から言えば、岩倉団地水源でPFOS・PFOAが検出された原因は、現時点で公的に特定されていません。
ただし、「原因不明」という言葉の背景を理解する手がかりはあります。
それは、問題となった水源が地下水だという点です。

地下水の流れは見えない

河川であれば、地表の地形や上流・下流の関係を地図で確認できます。
一方、地下水は地中の砂や礫、粘土などの層を通って流れます。

その流れは、

  • 地層の重なり
  • 帯水層の深さ
  • 過去の河川の位置
  • 井戸の深さ
  • 周辺の揚水
  • 降雨や河川からの地下浸透

などによって変わります。

地表で近い場所が、地下水でも直接つながっているとは限りません。
反対に、地表では離れた場所から、同じ帯水層を通って水が移動している可能性もあります。

8.濃尾平野の傾きは、原因を考える手がかりになるか

濃尾平野は、東側が相対的に高く、西側が低い地形を持っています。
東側が隆起し、西側が沈降する地殻変動は「濃尾傾動運動」と呼ばれ、木曽川・長良川・揖斐川が平野の西側に集まっている地形の形成にも関係しています。
地形の大きな傾向から見れば、地表水や一部の地下水は、西ないし南西方向へ向かうと考えられます。

ただし、ここから、
特定の地点のPFASが、どこから流れてきたのか
を判断することはできません。

平野全体の地形的な傾向と、岩倉団地水源が取水している帯水層の局所的な流れは、必ずしも一致しないためです。
したがって、濃尾平野の地形は、地下水を考えるための「大づかみな手がかり」にはなりますが、汚染源を特定したり、特定の施設との関係を否定したりする根拠にはなりません。

9.小牧基地・県営名古屋空港との関係はあるのか

県営名古屋空港と航空自衛隊小牧基地の周辺では、泡消火薬剤に由来する可能性のあるPFAS汚染が問題となってきました。
基地内の泡消火設備に関係する水から、非常に高い濃度のPFOS・PFOAが確認されたと報告されています。

また、豊山町や北名古屋市の地下水・水道水源で確認されたPFASについて、基地や空港で過去に使用された泡消火薬剤との関連を疑う専門家の指摘があります。

しかし、
小牧基地・名古屋空港が、岩倉団地水源のPFASの原因だと確認された事実はありません。
逆に、平野全体の水の流れだけを根拠に、原因ではないと断定することもできません。
現時点では、

  • 豊山町・北名古屋市では、基地・空港との関連が疑われている
  • 岩倉市では、発生源は特定されていない

三つの地域を同一の汚染経路として結ぶ科学的根拠は公表されていない
という整理が適切です。

「近いから同じ原因」と決めつけず、自治体ごとの水源、帯水層、測定地点、対策を分けて確認する必要があります。

10.岩倉市と近隣地域の違い

岩倉市

対象:岩倉団地水源
水の種類:水道水源として利用されていた地下水
確認された値:2024年5月に49ng/L
発生源:公的には未特定
対応:給水栓水の濃度低減、水源切り替え、取水中止
現在:給水栓水は基準以下となるよう管理

豊山町・北名古屋市

対象:配水場や地下水井戸
水の種類:水道水源となる地下水
過去に50ng/Lを超える値を確認
発生源:基地・空港の泡消火薬剤との関連が疑われているが、行政による最終的な原因確定とは区別が必要
対応:該当井戸の取水停止、水源切り替え、継続的な測定
現在:供給水は基準以下となるよう管理

春日井市

春日井市では、鷹来町・大手町周辺の地下水でPFOS・PFOAの指針値超過が確認され、井戸水を飲用しないよう注意喚起が行われました。
ここでの主な対象には、地域の地下水や私設井戸が含まれます。
水道事業者が供給する水道水の問題と、自家用井戸の問題は、分けて考えなければなりません。

岩倉、豊山・北名古屋、春日井では、いずれも地下水からPFASが確認されていますが、利用形態、検出地点、疑われる背景、行政対応は同じではありません。
「尾張地域の水は危険」と一括りにすることはできません。

11.それでも残る二つの課題

課題1 発生源が分かっていない

岩倉団地水源の取水を止めても、地下水中のPFASや、その発生源そのものがなくなったとは限りません。
原因の究明には、複数地点・複数深度での採水、地下水位の測定、地質調査、PFASの組成分析、周辺の土地利用履歴などを組み合わせる必要があります。
時間と専門的な調査を要する課題です。

課題2 継続的な監視が必要

水道水質基準への移行後は、検査と基準遵守が制度上求められます。
ただし、水源を切り替えたから監視が不要になるわけではありません。
新たな水源や供給系統を含め、継続的に水質を確認し、結果を分かりやすく公表していくことが重要です。

12.住民が確認できること

不安なときは、見出しだけで判断せず、自治体や水道事業者の公表資料を確認してください。

検索するときは、
「自治体名 PFAS 水質検査」
と入力すると見つけやすくなります。

確認したいのは、次の四点です。

  • 数値は原水か、給水栓水か
  • 採水日はいつか
  • PFOSとPFOAの合算値か
  • 検出後にどのような対策が取られたか
  • 自家用井戸を飲用している場合は、水道水の検査結果だけでは判断できません。

自治体の注意喚起を確認し、必要に応じてPFOS・PFOAを含む水質検査を検討してください。
健康上の心配がある場合は、自治体の相談窓口や、かかりつけ医に相談してください。血液検査の数値だけで健康影響の有無を判断することは難しいため、検査の目的や結果の解釈も含めて慎重に考える必要があります。

13.地下水を利用する事業者・井戸所有者へ

岩倉市の事例が示しているのは、地下水の発生源が分からなくても、水質管理上の対応が必要になることです。
地下水を飲用、食品製造、洗浄、農業、事業用水などに使用している場合は、次の点を確認しておくことが重要です。

  • 井戸の深さと取水している帯水層
  • 水の用途
  • 周辺の土地利用や過去の事業履歴
  • 自治体・都道府県のPFAS測定結果
  • PFOS・PFOAの自主検査の必要性
  • 検出された場合の代替水源
  • 活性炭やイオン交換樹脂などによる処理の適用可能性
  • 使用済み吸着材や濃縮水の適切な管理
  • 地下水が地形上の「上手側」か「下手側」かという情報だけでは、リスクを判断できません。

地下水の深さ、地質、井戸の構造、周辺の揚水などを含めて評価する必要があります。

PFAS Solutions+からのご案内

事業者・井戸利用者の方に向けて、PFASリスクの確認や対策検討に役立つ情報をご用意しています。

  • PFASリスク診断ツール
  • PFAS対策の進め方ガイド
  • 豊山町・北名古屋市のPFAS解説全国
  • 水道調査の読み方

よくある質問

Q.岩倉市の水道水は飲めますか?

岩倉市が家庭へ供給する給水栓水は、水源の調整や切り替えによって、PFOS・PFOAの水質基準50ng/L以下となるよう管理されています。ただし、自家用井戸は市の水道水とは別です。飲用している場合は、岩倉市や愛知県の注意喚起と検査情報を確認してください。

Q.岩倉市のPFASの原因は特定されていますか?

現時点で、公的に特定・公表された発生源はありません。地下水は地層や帯水層を通って移動するため、汚染源の追跡には専門的で長期的な調査が必要です。

Q.小牧基地や名古屋空港が原因ですか?

岩倉団地水源の原因だと確認された事実はありません。豊山町・北名古屋市では基地・空港の泡消火薬剤との関連が疑われていますが、岩倉市まで同じ経路で汚染されたことを示す公表資料は確認されていません。

一方、地形だけを根拠に関連を完全に否定することもできません。岩倉市の発生源は、現時点では不明です。

Q.原水と給水栓水は何が違いますか?

原水は井戸などから取水した段階の水です。
給水栓水は、浄水処理、水源の切り替え、ほかの水との組み合わせなどを経て、実際に家庭へ供給される水です。
原水の値が高くても、その水源を止めることで給水栓水を基準以下にすることができます。

Q.50ng/Lを超えると、すぐに健康被害が出ますか?

50ng/Lは、少し超えた瞬間に健康被害が発生することを示す数値ではありません。
生涯にわたる飲用などを想定し、水道水を長期的に管理するために安全側に設定された基準です。
ただし、基準超過が確認された場合は、原因調査、濃度低減、代替水源への切り替えなどの対応が必要です。

まとめ

岩倉市で注目された49ng/Lは、市全体のすべての蛇口から出た数値ではなく、特定の地下水源に関係する測定値です。
その後、給水栓水の濃度を下げる対応が行われ、さらに問題となった水源の取水中止と水源切り替えが進められました。
現在の状況を理解するうえで、特に大切なのは次の三点です。

  • 原水と給水栓水を分けて考える
  • 基準以下と汚染の消失を同じ意味にしない
  • 近隣で検出されたPFASを、すべて同じ発生源と決めつけない
    濃尾平野の地形や地下水の大まかな動きは、「なぜここで」という疑問を考える手がかりになります。

しかし、それだけで岩倉団地水源の発生源を特定したり、特定の施設との関係を肯定・否定したりすることはできません。
岩倉市の発生源は、いまも未特定です。
だからこそ、取水を止めた後も、地下水の調査と水道水の継続的な監視、そして分かりやすい情報公開が求められます。

  • 数値の強さだけが独り歩きしないように。
  • 地元の話だからこそ、冷静に、そして正確に。

この記事が、岩倉市や近隣地域に住む方が状況を理解するための手がかりになれば幸いです。

この記事について

この記事は、PFAS Solutions+が、岩倉市、愛知県、国の機関、水道事業者などの公表情報と、地下水・地形に関する一般的な知見をもとに整理した解説記事です。

特定の施設、企業、自治体、団体を汚染源として断定するものではありません。地形や地下水に関する記述は、発生源を特定する結論ではなく、地下水汚染を理解するための一般的な説明を含みます。
水道水では水道法上の「水質基準」、公共用水域や環境地下水では「指針値」と、制度上の位置づけが異なります。

数値や対応状況は、採水・公表時点の情報です。最新の情報は、岩倉市、愛知県、環境省、水道事業者の公表資料をご確認ください。
健康や医療に関する個別の判断は、自治体の相談窓口や医療機関へご相談ください。

主な出典

岩倉市「水道事業におけるPFASへの対応状況等について」
環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」
環境省「PFOS、PFOAに関するQ&A集」
環境省「水質基準に関する省令の一部を改正する省令等の公布について」
環境省・国土交通省「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査の結果について」
内閣府食品安全委員会「有機フッ素化合物(PFAS)に係る食品健康影響評価」
愛知県・北名古屋水道企業団・豊山町・北名古屋市の公表資料
防衛省による航空自衛隊小牧基地のPFOS・PFOA調査資料
春日井市「鷹来町及び大手町地内における地下水汚染について」
濃尾平野の地形・地質・地下水に関する国・自治体・研究機関の資料

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