米国EPAがPFAS飲料水規制の一部撤回を提案|PFOA・PFOSは維持、3物質と混合規制を見直し
アメリカがPFAS規制を撤回した」という報道や投稿が広がっています。
しかし、米国のPFAS飲料水規制がすべて撤回されるわけではありません。
米国環境保護庁(EPA)が2026年5月に公表したのは、PFOAとPFOSの基準値を維持する一方で、PFHxS、PFNA、GenXの3物質と、PFBSを含む混合物に対する規制を撤回するという提案です。
さらに、PFOA・PFOSについても、一定の要件を満たして申請した水道システムに限り、遵守期限を2029年から2031年まで延長する別の提案が示されています。
つまり今回の動きは、PFAS規制全体の撤回ではなく、
「残す規制」「撤回する規制」「適用を猶予する仕組み」が混在する部分的な巻き戻し
と見るのが正確です。
本記事では、EPAの一次情報をもとに、提案の内容、背景、法的な争点、日本の水質基準との違いを整理します。
1.2024年、米国初の全国PFAS飲料水規制が成立
今回の動きを理解するには、2024年に成立した規制までさかのぼる必要があります。
2024年4月、当時のバイデン政権下のEPAは、米国で初めてとなる全国的なPFAS飲料水規制「National Primary Drinking Water Regulation(NPDWR)」を最終決定しました。
設定された最大汚染物質濃度、MCLは次のとおりです。
| 規制対象 | 2024年に設定されたMCL |
|---|---|
| PFOA | 4 ng/L |
| PFOS | 4 ng/L |
| PFHxS | 10 ng/L |
| PFNA | 10 ng/L |
| HFPO-DA(GenX chemicals) | 10 ng/L |
| PFHxS・PFNA・HFPO-DA・PFBSの混合物 | ハザード指数1 |
※ng/Lは、1リットル当たりのナノグラムです。水中濃度では、ppt(parts per trillion)とほぼ同じ数値になります。
このうち、PFOAとPFOSについて設定された4ng/Lという値は、非常に低い濃度です。
2024年の規則では、公共水道システムに対し、原則として2029年4月26日までにMCLを遵守することが求められていました。

2.2026年5月、EPAが2つの規則案を発表
政権交代後、EPAはPFAS飲料水規制の見直しを進めました。
2025年5月14日、EPAはPFOA・PFOSのMCLを維持する一方、PFHxS、PFNA、HFPO-DAおよび混合物の規制について再検討する方針を公表しました。
その後、2026年5月18日、EPAは次の2つの規則案を発表しました。
規則案1
PFHxS、PFNA、HFPO-DAと、PFBSを含む混合物の規制決定および関連基準を撤回する案
規則案2
一定の要件を満たす水道システムについて、PFOA・PFOSのMCL遵守期限を2029年4月26日から2031年4月26日まで延長できるようにする案
両規則案は2026年5月20日に連邦官報へ掲載されました。
撤回案のドケット番号は「EPA-HQ-OW-2025-0654」、期限延長案のドケット番号は「EPA-HQ-OW-2025-1742」です。
重要なのは、これらが2026年7月時点では、いずれも提案段階だということです。最終規則として確定したものではありません。
3.撤回が提案されたのは「3物質と混合規制」
EPAが撤回を提案している対象は、次のとおりです。
- PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)
- PFNA(ペルフルオロノナン酸)
- HFPO-DAおよびそのアンモニウム塩(一般にGenX chemicalsと呼ばれるもの)
- PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSのうち、2種類以上を含む混合物に対するハザード指数規制
したがって、「4つのPFAS物質を撤回する」というよりも、
3つの個別物質と、4物質を対象とした混合物規制を撤回する
と表現するほうが、制度の内容を正確に伝えられます。
撤回案が最終決定された場合、これらに設定された最大汚染物質濃度目標値(MCLG)、MCL、監視・報告・遵守に関する関連規定が連邦規則から削除されます。
一方、PFOAとPFOSのMCL、監視、報告に関する規定は、この撤回案の対象ではありません。
4.PFOA・PFOSの基準は維持。ただし一部に2年間の免除
PFOAとPFOSについては、それぞれ4ng/LというMCL自体を維持する方針です。
ただし、EPAが提案しているのは、すべての水道システムの期限を自動的に2031年へ変更する仕組みではありません。
一定の条件を満たす水道システムが申請し、要件を満たした場合に、2029年4月26日から2031年4月26日までの2年間、MCL遵守義務の免除を受けられる制度です。
免除を申請しない、または免除の対象にならない水道システムについては、原則として2029年4月26日が遵守期限のままです。
免除を求める水道システムには、例えば次のような情報の提出が求められます。
- 経済的またはその他のやむを得ない事情により、2029年までに遵守できないこと
- 利用可能な代替水源がないこと
- 管理体制の変更や広域化だけでは対応できないこと
- 基準を満たすために、実行可能な対策を進めていること
- 最新のPFOA・PFOS測定結果
さらに、PFOAまたはPFOSの測定結果が12ng/L以上の場合は、免除期間中に少なくとも2つの暫定的な管理措置を実施することが提案されています。
管理措置の例として、EPAは次のような選択肢を挙げています。
- 代替水やボトル水の提供
- 蛇口などに設置する浄水装置の導入
- PFAS低減性能が認証されたピッチャー型浄水器の提供
- 水源対策
- 住民向けの情報提供
- 地域への教育・周知活動
したがって、12ng/Lは新しいMCLではありません。
あくまで、2年間の免除を受ける水道システムに、追加の暫定対策を求めるかどうかを判断するための基準案です。
この免除は二段構えです。まず、非primacy地域にあり2024年6月25日以前から運転しているといった「申請できる対象条件」を満たしたうえで、次に挙げる「免除が認められるための事情」を示す必要があります。
5.なぜEPAは撤回を提案したのか
EPAが撤回理由として示しているのは、PFASの健康影響に関する新たな科学的評価ではなく、主に安全飲料水法(SDWA)上の手続きです。
EPAは、2024年の規則制定時に、PFHxS、PFNA、HFPO-DAなどについて、
- 規制する必要があるかを判断する「規制決定」
- 具体的な飲料水基準を設定する「規則制定」
を、本来必要とされる段階的な手続きに従わず、同時並行で進めたと説明しています。
EPAの現在の解釈では、まず規制決定案について意見募集を行い、規制決定を確定した後で、飲料水基準案について改めて意見募集を行う必要があります。
つまり、2段階の手続きと2回の意見募集が必要だった、というのがEPAの主張です。
EPAは、今回の撤回案について、健康リスク、毒性、発生状況、規制費用などの科学的・実質的な判断を再評価した結果ではないと明記しています。
あくまで、2024年の規則制定過程に法的な問題があったため、その手続きを是正するという立場です。
EPAは撤回後、追加のPFASについて、改めて将来の規制対象として評価する可能性も示しています。ただし、現時点でその結論をあらかじめ決めることはできないとしています。
6.公衆衛生、実施可能性、法的安定性をめぐる対立
今回の提案に対する評価は、大きく分かれています。
撤回を懸念する立場
環境団体や公衆衛生を重視する立場からは、PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSにも健康影響の懸念がある中で、法的拘束力のある基準を撤回することへの批判があります。
EPA自身も連邦官報の中で、これらの物質について、発達・生殖毒性、免疫系への影響、肝臓への影響、甲状腺への影響などとの関連を示す科学的知見があることを認めています。
また、安全飲料水法には、飲料水規制を改定するときに健康保護水準を低下させてはならないという、いわゆる「後退禁止」の規定があります。
撤回に反対する側は、すでに成立した基準を削除することが、この規定に反する可能性を指摘しています。
EPAの立場
これに対しEPAは、今回の措置は適法に成立した規則を政策判断で緩めるものではなく、違法な手続きで成立した部分を是正するものだと主張しています。
また、撤回対象となる基準の遵守期限はまだ到来しておらず、現時点ではこれらのMCLによる実際の健康保護が始まっていないため、「後退禁止」には該当しないという解釈を示しています。
実施期限の延長を求める立場
水道事業者や州当局などからは、2029年までに調査、資金調達、設計、パイロット試験、建設、運転開始までを完了することが難しいという指摘があります。
特に小規模な水道システムでは、専門人材、処理設備、施工事業者、活性炭やイオン交換樹脂などの供給能力、財源の確保が課題となります。
このため、PFOA・PFOSの数値基準は維持しながら、条件付きで導入期限を延ばすことには、一定の支持もあります。
7.裁判との関係
2024年のPFAS飲料水規制をめぐっては、米国水道協会などがEPAを相手取り、D.C.巡回区連邦控訴裁判所で訴訟を起こしています。
事件番号は「American Water Works Association, et al. v. EPA, et al., No. 24-1188」です。
実際に同裁判所は、2026年1月12日、EPAが求めた4項目の基準の無効化(vacatur)を認めませんでした。さらに3月19日には、混合物(Index PFAS)に関する請求だけを切り離して審理を止める申立ても退けています。つまり裁判所は、EPAが行政手続きとして規則の撤回・見直しを進める一方で、司法手続きによる早期の無効化には慎重な姿勢を示しており、2024年基準は係争中も引き続き有効です。
今回の撤回案は、この係争中の規則の一部をEPA自身が見直そうとするものでもあります。
今後は、EPAが最終規則をどのような内容で確定するかに加え、裁判所が2024年規則の制定手続きやEPAの権限をどのように判断するかも重要になります。
一方、連邦規制が見直されても、州が独自に設けたPFAS基準が自動的に失効するわけではありません。
州独自の基準や規制が維持・強化されれば、米国内でも州によって異なる規制が併存する可能性があります。
8.今後のスケジュール
2026年7月時点で公表されている主な日程は次のとおりです。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026年5月18日 | EPAが2つの規則案を発表 |
| 2026年5月20日 | 連邦官報に掲載 |
| 2026年7月7日 | オンライン公聴会を開催 |
| 2026年7月20日 | パブリックコメント締め切り |
| 規則確定から180日以内(提案上) | 延長免除の申請期限(対象となる水道システムが申請する場合) |
| 2029年4月26日 | 原則的なPFOA・PFOSのMCL遵守期限 |
| 2031年4月26日 | 提案された免除を受けた水道システムの遵守期限 |
オンライン公聴会は、すでに2026年7月7日に開催されています。
一方、書面によるパブリックコメントは、2026年7月20日まで受け付けられる予定です。
EPAは提出された意見を検討したうえで、提案をそのまま確定するか、修正するか、撤回するかを判断します。
したがって、2026年7月時点では、
- 3物質と混合規制の撤回
- PFOA・PFOSの条件付き期限延長
のいずれも確定事項ではありません。
9.日本の水質基準との違い
日本では、2026年4月1日から、PFOSとPFOAが水道法上の水質基準項目となりました。
基準値は、PFOSとPFOAの合計で50ng/L以下です。
水道事業者や専用水道の設置者には、基準値の遵守と定期的な水質検査が義務付けられています。
米国と日本の基準を単純に並べると、次のようになります。
| 対象 | 米国の2024年規制 | 日本の2026年基準 |
|---|---|---|
| PFOA | 4ng/L・単独 | - |
| PFOS | 4ng/L・単独 | - |
| PFOS+PFOA | - | 合計50ng/L以下 |
数値だけを見ると、米国のPFOA・PFOS基準は日本よりも低く、厳しい値です。
ただし、両国では基準値の算定方法、健康影響評価、測定・評価方法、対象となる水道システム、規制制度の構造が異なります。
そのため、単純に「米国のほうが安全」「日本のほうが緩い」と結論付けることには注意が必要です。
また、今回EPAが提案しているのは、PFOA・PFOSの4ng/Lという数値そのものの引き上げではありません。
PFOA・PFOSのMCLは維持したまま、一定の水道システムに対し、条件付きで遵守期限を延長する仕組みです。
日本が2026年4月からPFOS・PFOAの水質基準を施行した直後に、米国では一部規制の撤回と実施期限の見直しが提案されました。
表面的には日米が逆方向へ進んでいるようにも見えますが、実際には、対象物質、基準値、法的手続き、実施可能性をそれぞれ分けて見る必要があります。
10.まとめ
今回のEPAの提案を整理すると、次のようになります。
- EPAは2026年5月、PFAS飲料水規制に関する2つの規則案を発表した
- PFOA・PFOSの4ng/LというMCLは維持する
- PFHxS、PFNA、HFPO-DAの3物質と、PFBSを含む混合物のハザード指数規制は撤回を提案
- 撤回理由は、主として安全飲料水法上の規則制定手続きに問題があったというEPAの判断
- 健康影響に関する科学的評価を否定したり、再評価したりした結果ではない
- PFOA・PFOSの期限延長は一律ではなく、要件を満たして申請した水道システムを対象とする免除制度
- 免除を受けない水道システムの期限は、原則として2029年4月26日のまま
- PFOAまたはPFOSが12ng/L以上の免除対象システムには、追加の暫定対策を求める案
- いずれの規則案も2026年7月時点では確定していない
- 日本では2026年4月1日から、PFOSとPFOAの合計50ng/L以下という水質基準が施行された
「米国がPFAS規制を撤回した」という一言だけでは、今回の動きの本質を捉えられません。
正確には、
PFOA・PFOSの厳しい数値基準は残しながら、3物質と混合物の規制を手続き上の理由で撤回し、PFOA・PFOSについては一部の水道システムに実施猶予を設けようとしている
という内容です。
規制の「撤回」だけでなく、何が維持され、誰に期限延長が認められ、どの部分が法的に争われているのかを分けて見ることが重要です。
今後の焦点は、2026年7月20日までに提出されるパブリックコメント、EPAによる最終規則の内容、そしてD.C.巡回区連邦控訴裁判所で続く訴訟の行方です。
よくある質問
Q1.そもそもPFASとは何ですか?なぜ問題になっているのですか?
PFAS(ピーファス)は、有機フッ素化合物と呼ばれる人工的な化学物質の総称で、数千種類以上あるとされます。
撥水性や熱・薬品への強さから、泡消火薬剤、フッ素樹脂を使った調理器具の加工、撥水加工の衣類、食品包装、金属メッキ、半導体製造など、幅広い用途で使われてきました。
一方で、炭素とフッ素の結合が非常に強く、自然界でほとんど分解されないため、「永遠の化学物質(forever chemicals)」とも呼ばれます。
環境や体内に蓄積しやすく、一部のPFASでは発達・生殖・免疫・肝臓・甲状腺などへの影響が指摘されており、各国が飲料水などの基準づくりを進めています。
Q2.PFHxS・PFNA・GenX・PFBSとは、どんな物質ですか?
いずれもPFASの一種で、用途や構造が少しずつ異なります。
PFHxSは主に泡消火薬剤などに、PFNAはフッ素ポリマーの製造などに使われてきた物質です。
GenX(HFPO-DA)は、規制が進んだPFOAの代替として開発された、フッ素ポリマー製造の加工助剤です。
PFBSは、PFOSの代替として使われてきた、分子の鎖が短いPFAS(短鎖PFAS)です。
このように、代替として登場した物質にも健康影響の懸念が指摘されており、規制の対象に含まれてきました。
Q3.「4 ng/L」「50 ng/L」とは、どのくらいの濃度ですか?
ng/L(ナノグラム毎リットル)は、水1リットルあたりに含まれる量を、10億分の1グラム単位で表したものです。
質量比でみると、ppt(1兆分の1)とほぼ同じで、水ではおおむね1 ng/L ≒ 1 pptとなり、いずれもきわめて微量な水準です。
数字が小さいほど厳しい基準を意味しますが、これは健康影響の評価に加えて、実際に分析・検出できる技術の限界とも関係しています。
そのため、各国で採用する数値や測定方法は必ずしも同じではありません。
Q4.米国はPFASの飲料水規制をすべて撤回したのですか?
いいえ。米国EPAが2026年5月に発表したのは、PFAS飲料水規制の一部を撤回する提案です。
PFOAとPFOSについては、それぞれ4ng/Lという最大汚染物質濃度(MCL)を維持する方針です。
撤回が提案されているのは、PFHxS、PFNA、HFPO-DAの3物質と、これらにPFBSを加えた混合物のハザード指数規制です。
そのため、「米国がPFAS規制をやめた」と表現するのは正確ではありません。
Q5.PFOA・PFOSの基準値も緩和されるのですか?
現時点の提案では、PFOA・PFOSの基準値そのものは緩和されません。
PFOA、PFOSともに、4ng/LというMCLを維持する方針です。
見直しが提案されているのは、一定の条件を満たす水道システムについて、基準を満たす期限を2029年4月26日から2031年4月26日まで延長できる仕組みです。
つまり、数値基準の引き上げではなく、一部の水道システムに対する期限の猶予です。
Q6.米国のすべての水道システムの期限が2031年まで延びるのですか?
いいえ。一律に延長される案ではありません。
この連邦免除は、①2024年のPFAS規則(NPDWR)の対象であること、②2024年6月25日以前から運転している水道システムであること、③小規模システム向けの猶予(SDWA第1415条(e)のバリアンス)を受けていないこと、④その州・準州・部族が2024年PFAS規則の一次的な規制権限(primacy)をまだ取得していない地域にあること、が対象条件です。
さらに、対象システムは測定結果やシステム情報とあわせて、「2029年4月26日までにPFOA・PFOSのMCLを達成できない」とする認証文書を提出する必要があります。
これらに当てはまらない水道システムは、原則として2029年4月26日が遵守期限のままです(州や部族の制度による免除を別途申請できる場合があります)。
Q7.「12ng/L」という数値は、新しいPFAS基準値ですか?
いいえ。12ng/Lは、新しいMCLではありません。
提案では、期限延長の免除を受ける水道システムで、PFOAまたはPFOSが12ng/L以上検出された場合に、追加の暫定対策を求めるための目安として使われています。
代替水や浄水器の提供、住民への情報提供、水源対策などから、少なくとも2つの措置を実施することが想定されています。
PFOA・PFOSの正式なMCLは、引き続きそれぞれ4ng/Lです。
Q8.なぜPFHxS、PFNA、GenXなどの規制を撤回するのですか?
EPAが示している主な理由は、健康影響の評価が否定されたからではなく、安全飲料水法上の規則制定手続きに問題があったというものです。
EPAは、規制対象にするかどうかを決める「規制決定」と、具体的な基準を定める「規則制定」を、適切な順序で行う必要があったと説明しています。
2024年の規則では、この2つの手続きが同時に進められたため、法的な手続きを是正する必要があるというのが現在のEPAの立場です。
Q9.撤回対象となったPFASは、安全だということですか?
いいえ。規制の撤回提案は、それらのPFASが安全だと判断されたことを意味しません。
EPAも、PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSなどについて、発達、生殖、免疫系、肝臓、甲状腺などへの影響に関する科学的知見があることを認めています。
今回の撤回案は、主として法的手続きの問題を理由とするものであり、健康リスクそのものを否定する内容ではありません。
Q10.PFBSの規制も単独で撤回されるのですか?
PFBSには、2024年の規則で単独のMCLは設定されていません。
PFBSは、PFHxS、PFNA、HFPO-DAと組み合わせた混合物のハザード指数規制に含まれていました。
今回撤回が提案されているのは、PFBS単独の基準ではなく、PFBSを含む混合物の評価制度です。
Q11.「ハザード指数1」とは何ですか?
ハザード指数は、複数の化学物質が混合して存在する場合の影響を評価するための方法です。
それぞれのPFASについて、検出濃度を基準となる濃度で割り、その値を合計します。
合計値が1を超える場合は、混合物として基準を超えていると判断する仕組みです。
2024年の米国規制では、PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBSの混合物に対して、このハザード指数が採用されました。
Q12.EPAの提案は、パブリックコメントのあと、どうなりますか?
EPAは、2026年7月20日までに集まったパブリックコメントや、7月7日の公聴会での意見を踏まえて、最終規則を検討します。
提案どおりに確定するとは限らず、内容が一部修正されたり、決定が遅れたりする可能性があります。
また、2024年規制をめぐる裁判の行方も、最終的な規制内容に影響し得ます。
読者としては、①最終規則の公表時期と内容、②PFOA・PFOSの遵守期限、③州独自の規制、④追加PFASの扱い、を継続して確認するとよいでしょう。
Q13.EPAの提案は、すでに確定しているのですか?
いいえ。2026年7月時点では提案段階です。
パブリックコメントや公聴会で寄せられた意見を踏まえ、EPAが最終規則を決定します。
提案内容がそのまま確定するとは限らず、一部が修正されたり、最終決定が遅れたりする可能性もあります。
Q14.米国の裁判によって規制が無効になる可能性はありますか?
可能性はありますが、2026年7月時点で裁判所の最終判断は出ていません。
2024年のPFAS飲料水規制については、水道事業者団体(AWWAなど)や化学業界団体がEPAを相手取り、規則制定手続きやEPAの判断を争っています。
一方でD.C.巡回控訴裁判所は、2026年1月12日にEPAが求めた4物質基準の無効化を認めず、3月19日には混合物に関する請求だけを切り離して審理を止める申立ても退けました。
つまりEPAは規則の撤回・見直しを進めていますが、裁判所はEPAの近道による無効化を認めておらず、2024年基準は係争中も引き続き有効です。
最終的な規制内容は、行政手続きと司法判断の双方に影響される可能性があります。
Q15.連邦基準が撤回されれば、米国全土で規制がなくなるのですか?
いいえ。米国では、州が連邦基準とは別に、独自のPFAS基準を定めている場合があります。
連邦規制の一部が撤回されても、州独自の基準や規制が自動的に廃止されるわけではありません。
そのため、今後は州によって対象物質や基準値が異なる状態が、さらに広がる可能性があります。
Q16.自分が住む地域の水道水のPFAS濃度は、どうやって調べられますか?(日本)
多くの水道事業者や自治体が、PFOS・PFOAの水質検査結果を公表しています。
お住まいの市区町村や水道局のウェブサイトで、「PFOS PFOA 水質」などと検索すると、地域の測定値を確認できる場合があります。
東京都など一部の自治体は、PFASに関するQ&Aや地域ごとのデータも公開しています。
2026年4月からは水道法上の水質基準となったため、今後は検査と結果の管理が、より明確な形で行われる仕組みです。
Q17.家庭でPFASを減らす方法はありますか?
一般に、粒状活性炭を使ったフィルターや、逆浸透膜(RO)方式の浄水器は、PFASの低減に効果があるとされています。
一方で、水を煮沸してもPFASは分解・除去されず、水分が蒸発する分、かえって濃度が高くなる可能性があります。
浄水器を使う場合は、PFAS(またはPFOS・PFOA)への対応をうたった製品かどうか、フィルターの交換時期を守れているかが重要です。
まずはお住まいの地域の水道水の測定値を確認し、必要に応じて対策を検討するのが現実的です。
Q18.米国と日本では、どちらのPFAS基準が厳しいのですか?
数値だけを比較すると、PFOA・PFOSについては米国のほうが低い基準値を設定しています。
米国ではPFOAとPFOSをそれぞれ4ng/L、日本ではPFOSとPFOAの合計を50ng/L以下としています。
ただし、対象物質、基準値の算定方法、測定方法、健康影響評価、法制度が異なるため、数値だけで単純に優劣を決めることはできません。
Q19.日本のPFOS・PFOA基準は、いつから義務化されたのですか?
日本では、2026年4月1日からPFOSとPFOAが水道法上の水質基準項目となりました。
基準値は、PFOSとPFOAの合計で50ng/L以下です。
これにより、水道事業者や専用水道の設置者には、基準値の遵守と定期的な水質検査が義務付けられています。
Q20.今回の米国の動きは、日本のPFAS規制にも影響しますか?
米国の規制変更が、そのまま日本の水質基準を変更するわけではありません。
日本の基準は、日本国内の法令や専門家会議での評価に基づいて定められています。
ただし、米国の科学的評価、処理技術、費用、訴訟、規制手続きの議論は、日本の今後のPFAS政策や追加物質の検討に影響を与える可能性があります。
Q21.日本の「50 ng/L」は、どの制度の基準ですか?(水道・環境・食品の違い)
日本では、PFOSとPFOAの合計50 ng/Lという数字が、複数の制度に登場します。
水道水については、2026年4月から水道法上の水質基準(合計50 ng/L以下)となりました。
河川や地下水などの公共用水域については、環境省が同じ合計50 ng/Lを暫定的な指針値として管理しています(水道とは別の制度です)。
さらに、殺菌・除菌を行うミネラルウォーター類についても、合計50 ng/Lの規格基準が設けられています。
同じ「50 ng/L」でも、対象や根拠となる制度が異なる点に注意が必要です。
Q22.PFAS規制への対応は、水道料金やコストに影響しますか?
PFASを除去するには、活性炭やイオン交換樹脂、膜処理などの設備が必要で、導入や運転に相応の費用がかかります。
米国でEPAが遵守期限の延長を提案した背景にも、設備の設計・建設や資金の確保、専門人材の不足といった実務上の負担がありました。
こうした費用は、最終的に水道料金や自治体の負担に影響する可能性があります。
Q23.企業や水道事業者は、今後どのような点を確認すべきですか?
今回の提案だけを見て、「規制が緩和されたから対応は不要」と判断するのは適切ではありません。
確認すべき主な点は、次のとおりです。
- EPAの最終規則がいつ、どのような内容で確定するか
- PFOA・PFOSの遵守期限延長の対象条件
- 事業地域の州独自基準
- 取水源や水道水のPFAS測定結果
- 活性炭、イオン交換樹脂、膜処理などの対策に必要な期間
- 汚染者負担や訴訟に関する動向
- 取引先や住民への情報開示の必要性
PFAS規制は、対象物質、地域、用途によって異なります。連邦規制だけでなく、州法、契約条件、取引先基準などを含めて確認することが重要です。
ご注意
本記事は2026年7月時点で公開されている情報に基づいています。
EPAが公表した2つの規則は、いずれも提案段階であり、最終規則ではありません。パブリックコメントや法的手続きの結果により、内容やスケジュールが変更される可能性があります。
主な参照情報
- U.S. EPA「Proposed PFAS Rescission Rule」
- Federal Register「Rescission of Regulatory Determinations and Removal of Related Provisions for Four PFAS Substances」
- U.S. EPA「Proposed PFOA and PFOS Compliance Extension Rule」
- Federal Register「Extending the Compliance Deadline for the PFOA and PFOS Maximum Contaminant Levels」
- 環境省「水質基準に関する省令の一部を改正する省令等の公布について」
- 環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」
- 「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」等の公布について|環境省
- PFOS・PFOAに関するQ&A集|東京都環境局
- PFOS、PFOAに関するQ&A集(2024年8月時点)|環境省 専門家会議
- ミネラルウォーター類のPFOS及びPFOAに係る規格基準 Q&A|消費者庁
- PFAS対策に有効とされる浄水器の選び方|ユーロフィン
-





























