PFOS・PFOA水質基準超過時の応急対応マニュアル|水道事業者が即日とるべき行動手順
2026年4月1日より、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は水道水の水質基準項目に正式に追加されました。基準値はPFOSとPFOAの合計で50ng/Lです。
水質検査でこの基準値を超過した、あるいは超過のおそれが生じた場合、水道事業者・簡易水道事業者・水道用水供給事業者はどのような行動をとればよいのでしょうか。国土交通省が令和8年3月に公表した「水道事業者等によるPFOS及びPFOA対応マニュアル」に基づき、即日から動き出すべき応急的対応の全手順を解説します。
応急対応の全体像:2つのパターン
基準値超過が判明した場合、まず「直ちに濃度を下げられるか否か」によって対応が2つに分かれます。
パターンA:即時対応できる場合
代替水源への切替や粉末活性炭の注入など、すぐに施策を打てる場合は、対策を講じながら住民・関係機関への情報提供と並行してモニタリングを継続します。
パターンB:即時対応できない場合
すぐに濃度を基準値以下にできない場合は、住民に飲用制限を要請しながら応急給水等を実施し、並行して対策を検討します。
どちらのパターンでも、以下の共通手順を踏みます。
ステップ1:水質検査結果の確認と再検査
基準値超過が疑われる検査結果が出た場合、まず検査結果そのものの正確性を確認します。
確認すべき点は次のとおりです。
濃度の単位は正しいか(基準値50 ng/L = 0.0000050 mg/L)
採水場所は給水栓等(水道原水ではなく最終給水箇所)か
誤りがなければ、直ちに再検査を実施します。初回と再検査、両方の結果を保存し、どちらを正式な結果とするかの記録を残してください。原則として初回の結果が正式な結果となりますが、採水ミスや分析操作の不備など合理的な理由がある場合に限り、再検査結果を採用できます。
ステップ2:住民への情報提供
基準値超過またはそのおそれが確認された場合、速やかに住民へ情報を公開します。透明性のある情報提供が住民の不安軽減につながります。
通常時(飲用制限なし)の公表内容
- 検出された濃度・検出場所
- 現在とっている対応策
- 水質検査の今後の予定
飲用制限を伴う場合の周知事項
- 水質に異常が生じていること(またはそのおそれ)
- 給水は継続しているが飲用は控えること
- 飲用制限の解除見込み時期
周知手段は複数を組み合わせることが重要です。ビラ・メール・ウェブサイト・連絡網・テレビ(データ放送)・ラジオ・広報車・防災無線など、高齢者や子どもなど情報格差が生じやすい層にも届く手段を選択してください。
住民からの問合せには、環境省が公表している「PFASハンドブック」や内閣府食品安全委員会の評価書Q&Aなどを活用して、丁寧なリスクコミュニケーションを心がけます。
ステップ3:関係機関への報告
基準値超過またはそのおそれが判明したら、同時に関係機関へ報告します。
| 認可区分 | 報告先 |
| 大臣認可の水道事業 | 国土交通省各地方整備局等水道担当 |
| 知事認可の水道事業 | 都道府県(水道行政担当部局等) |
さらに、水道原水または水道水でPFOS・PFOAが基準値超過またはそのおそれが判明した場合は、地方公共団体の環境部局等にも情報提供します。環境部局が実施する公共用水域や地下水のPFAS調査と連携することで、汚染源の特定や地域全体のばく露防止につながります。
ステップ4:応急対策の実施
応急対策には主に以下の3種類があります。現場の状況や保有設備に応じて選択・組み合わせてください。
① 水質検査の強化
給水栓等の水質検査地点・回数を増やし、濃度分布と変動状況を把握します。浄水場出口水・水道原水にも検査対象を拡大し、汚染の全体像をつかんだうえで具体的な対策を検討します。
② 代替水源への切替・混合による希釈
複数の水源を保有している場合、あるいは隣接する給水系統や水道用水供給事業と接続されている場合は、PFOS・PFOAが低濃度または未検出の水源からの給水量を増やし、配水池等で混合・希釈することで給水栓での濃度低減を図ります。
主な選択肢は次のとおりです。
- 既存の自己水源への切替・混合 :複数水源を持つ場合、汚染水源の取水を停止・減量し、低濃度水源の取水を増やす
- 隣接する給水系統との切替・混合:連絡管等が整備されている場合、隣接系統からの給水に切り替える
- 水道用水供給事業への切替・混合:既存の受水管や緊急連絡管を活用して低濃度の受水量を増やす
- 隣接する水道事業等からの応援 :緊急連絡管経由で隣接事業から低濃度水の供給を受ける
平常時から、切替可能な水量・範囲・必要な作業内容(洗管・バルブ操作等)・日数を確認しておくこと、また水質基準値より低い管理基準値を水安全計画等であらかじめ設定しておくことが重要です。
③ 浄水処理の強化
粉末活性炭の注入
粉末活性炭の注入設備がある、または人力投入が可能な場合は、粉じん対策・安全対策を講じたうえで注入します。基準値超過が判明した直後は予防的に多めに注入し、その後は給水栓の濃度を確認しながら、ジャーテスト等で適切な注入量に調整します。
注入量が増えると浄水発生土も増加します。凝集沈殿処理・ろ過処理の強化も同時に必要です。また、発生した浄水汚泥(使用済活性炭を含む)は「PFOS等を含む水の処理に用いた使用済活性炭の適切な保管等について」(環境省)に従い適切に保管・廃棄・再生します。
粒状活性炭の交換
粒状活性炭処理施設を導入済みの浄水場では、長期使用によりPFOS・PFOAへの吸着能が低下している可能性があります。新炭への入替で除去効果を回復できます。交換時期はモニタリングと破過曲線を基に設定し、全槽を同時に替えず各槽を時期をずらして交換することで処理水濃度を安定させます。
ステップ5:飲用制限を伴う応急給水等
即時に濃度を下げることが困難な場合は、住民に飲用を控えるよう周知したうえで給水を継続しつつ、以下の応急給水を実施します。
- 運搬給水:給水袋の各戸配布
- 拠点給水:仮設水槽等での給水
- 仮設給水:消火栓からの仮設給水
応急給水に使用する水は、PFOS・PFOAが未検出または低濃度であることを事前に確認してください。病院・学校など重要施設を優先的に対応し、地域の自治会・コミュニティ組織とも連携します。
ボトル水の提供や浄水器の設置も有効な選択肢です。浄水器を設置する場合は、飲用に使用する蛇口(食堂など)を優先し、設置後に水質検査で効果を確認します。カートリッジは長期使用でPFOS・PFOAの吸着能が低下するため、メーカー推奨の交換時期を目安に、安全余裕を確保して適切に交換してください。
応急対応後の次のステップ
応急対応で濃度を基準値以下に抑えられた場合でも、PFOS・PFOAは環境中に長期間残留する性質があるため、モニタリングを継続することが必要です。
濃度が再び増加傾向を示す場合や、応急対応にコスト増・水量不足などの課題がある場合は、粒状活性炭処理施設やイオン交換処理施設の整備といった中期的対応へ移行します。
まとめ:応急対応のチェックリスト
| 確認項目 | 対応 |
| 水質検査結果の単位・採水場所を確認 | 誤りがなければ直ちに再検査 |
| 住民への情報公開 | ホームページ・広報紙等で速やかに公表 |
| 関係機関への報告 | 国交省または都道府県へ報告、環境部局にも情報提供 |
| 代替水源や浄水処理強化などの応急対策 | 現場条件に合わせて選択・実施 |
| 飲用制限・応急給水(即時対応困難な場合) | 運搬給水・拠点給水・ボトル水等を組み合わせ |
| 継続的なモニタリング | 対策後も水質検査を継続し、濃度動向を把握 |
参考:国土交通省「水道事業者等によるPFOS及びPFOA対応マニュアル」(令和8年3月27日)、環境省「PFASハンドブック」(令和7年12月)









-水道法PFAS義務化と神戸・明石川の現状【2026年最新】.png)
:-「EU輸出企業向け完全対応ガイド.png)
















