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【第1回】PFAS専門家会議(2023年1月)解説|設置の背景と初回議論の内容をわかりやすく解説

2023.01.30

2023年1月30日午前10時、東京・霞が関の環境省第一会議室。「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」の第1回が始まりました。
この記事では、第1回の会議について公式資料をもとに詳しく解説します。

第1回が開かれた背景

2020年に水道水のPFOS・PFOA暫定目標値(50ng/L)が設定されてから、各地で超過事例が相次いで報告されました。
特に問題になっていたのは

  • 沖縄・東京・神奈川などでの水道水超過
  • 米軍基地周辺での高濃度汚染
  • 住民から「健康への影響はどうなのか」「国はどう対応するのか」という声の高まり

一方で国際的には、米国・EUがPFASへの規制を急速に強化しており、日本も総合的な対応方針の検討が急務となっていました。
こうした背景から環境省は、学識経験者・研究者・専門家で構成される専門家会議を設置し、科学的根拠に基づく総合的な対策を検討する場を設けることにしました。

会議の基本情報

項目 内容
開催日時 2023年(令和5年)1月30日(月)10:00〜12:00
開催場所 環境省第一会議室(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館 22階)
開催形式 対面・オンライン併用/YouTubeライブ配信あり(一般傍聴可)
事務局 環境省 水・大気環境局 水環境課基準係

参加委員(第1回時点)

以下の16名の専門家が委員として参加しています(五十音順、敬称略)。

氏名 所属・役職 専門分野
浅見 真理 国立保健医療科学院 生活環境研究部 上席主任研究官 水道・水環境
奥 真美 東京都立大学 都市環境学部 教授 環境法・政策
開沼 博 東京大学大学院 情報学環 准教授 リスクコミュニケーション・社会学
亀屋 隆志 横浜国立大学大学院 環境情報研究院 教授 環境化学・分析
鯉淵 典之 群馬大学 副学長 公衆衛生・医学
酒井 伸一 公益財団法人京都高度技術研究所 副所長 廃棄物・環境管理
柴田 康行 国立環境研究所 名誉研究員 有機汚染物質分析
白石 寛明 国立環境研究所 名誉研究員 リスク評価
鈴木 規之 国立環境研究所 企画部 フェロー 環境リスク管理
高野 裕久 京都先端科学大学国際学術研究院 特任教授 毒性学・健康影響
谷保 佐知 産業技術総合研究所 研究グループ長 PFAS分析技術
新田 裕史 国立環境研究所 名誉研究員 大気環境・健康影響
原田 浩二 京都大学大学院 医学研究科 准教授 環境疫学・PFAS健康影響
平田 健正 和歌山大学 名誉教 授水環境・地下水
広瀬 明彦 化学物質評価研究機構 技術顧問 毒性評価
松井 佳彦 早稲田大学 研究院客員教授 水道工学・水処理

特に注目すべき委員として、原田浩二委員(京都大学)はPFASの健康影響研究で国内屈指の実績を持ち、沖縄での血中濃度調査にも携わってきた専門家、谷保佐知委員(産業技術総合研究所)はPFASの分析技術の第一人者です。

配付資料一覧

資料番号 タイトル
資料1 PFASに対する総合戦略検討専門家会議について
資料2 PFASの概況と今後の対応資料3−1PFOS・PFOAの国際動向
資料3−2 PFOS・PFOA以外のPFASの国際動向
資料4−1 PFOS・PFOAの国内の検出状況
資料4−2 PFOS・PFOA以外のPFASの国内の検出状況
資料5 国民への情報発信のためのQ&A集 構成案
参考資料1 PFASの全体像について
参考資料2 「飲料水中のPFOS及びPFOA」WHO飲料水水質ガイドライン背景文書
参考資料3 暫定飲料水健康勧告:PFOS・PFOA(2022年6月)
参考資料4 水道におけるPFOS及びPFOAの検出状況等(令和2年度)
参考資料5〜9 全国存在状況調査・化学物質環境実態調査結果等

議事次第

  1. 開会
    議題
  2. (1)PFASに対する総合戦略検討専門家会議の開催について
    (2)PFASの概況を踏まえた今後の対応について
    (3)国民への情報発信及びリスクコミュニケーションの在り方について
    (4)その他
  3. 閉会

第1回で確認・決定されたこと

確認事項①:会議の役割と目的

この専門家会議は以下を目的とすることが確認されました。

  • PFAS(有機フッ素化合物)に関する国内外の最新の科学的知見を収集・評価する
  • 科学的根拠に基づくPFASへの総合的な対応策を検討する
  • 国民への情報発信・リスクコミュニケーションの在り方について提言する
  • 会議の成果を「対応の方向性」として取りまとめ、環境省の政策に反映させる

「行政の方針を一方的に決める場」ではなく、「専門家が科学的に議論し、政策の根拠を作る場」として設置されたことが明確にされました。

確認事項②:PFASの概況(現状把握)

事務局から報告された国内の状況
PFASとは何か(基本的な整理)
  • PFAS全体の定義と対象範囲
  • PFOS・PFOAの特性(難分解性・高蓄積性・長距離移動性)
  • 国内外での規制の経緯
国内の検出状況
  • 水道水・公共用水域・地下水での検出状況
  • 都市部・基地周辺での高濃度地点の分布
国内の状況
  • 水道水における暫定目標値(50ng/L)超過事例が全国各地で確認されている
  • 特に軍事基地・空港・工場周辺の地下水での高濃度検出が問題となっている
  • 地下水を飲料水として利用している住民のリスク対応が急務
国際状況
  • ストックホルム条約(POPs条約)でのPFAS規制の拡大
  • 米国EPA(2022年)がPFOS・PFOAの健康勧告値として非常に低い値(各0.004ng/L)を示した
  • EUでは飲料水指令の改正でPFAS規制が強化される方向
  • WHO飲料水水質ガイドライン(第4版)でPFOS・PFOA各100ng/Lの暫定ガイドライン値が示された
  • POPs条約でPFOS・PFOAに続き新たなPFASの規制拡大が進行中

確認事項③:住民向けQ&A集の骨格方針

第1回でQ&A集の「構成案」(骨格)が提示され、以下の方針が確認されました。

  • 「住民が実際に不安に思っていること」を起点に設計する
  • 科学的に不確定な部分は「わかっていない」と正直に伝える
  • 過度な恐怖を煽らず、しかし問題を矮小化しない表現を使う
  • 専門家会議の監修のもとで作成・公表する

確認事項④:予防原則の姿勢

健康影響について「どの程度の量で影響が出るか」の科学的知見がまだ不十分であることを認めつつも、「科学的証明を待つのではなく、予防的に対処する」という基本姿勢が確認されました。

第1回の重要ポイント

ポイント①:PFOS・PFOA「以外」のPFASも視野に

第1回の時点で、PFOS・PFOAだけでなく、それ以外の多数のPFAS(PFHxSなど)についても対応を検討する必要があることが共有されました。

世界には1万種類以上のPFASがあり、PFOS・PFOAの規制強化に伴って、別のPFASへの切り替え(代替物質問題)が起きる可能性もあります。「PFAS全体」として捉える必要性が第1回から認識されていました。

ポイント②:予防原則の重要性

どの程度の量で健康に影響が出るかについて、科学的知見がまだ不十分であることが確認されました。

このため「完全に危険だと証明されるのを待つのではなく、予防的に対処する」という予防原則の考え方が会議の基本姿勢として確認されました。

ポイント③:リスクコミュニケーションの重要性

「PFAS汚染の事実を住民に伝える際、パニックを招かずに正確な情報を届けること」の難しさが議論されました。

科学的に不確実な部分がある中で、どう住民に情報を伝えるか。これが5回を通じた会議の重要テーマの一つになりました。

第1回で示された今後の方向性

第1回を受けて、以下の方向性が示されました。

  • PFOS・PFOAの暫定目標値の取り扱いについて専門家的検討を継続する
  • PFOS・PFOA以外のPFASについても優先度を付けて対応方針を検討する
  • 住民向けQ&A集を早期に作成・公表する
  • リスクコミュニケーションの在り方について引き続き議論する

まとめ

第1回専門家会議は「問題の全体像を整理し、議論の土台を作る」回、つまり「PFAS問題に対する日本の総合的な政府対応の始まり」を宣言した回です。
それまで水道水の暫定目標値設定(2020年)はあったものの、「国としての総合的な対応方針」は存在しませんでした。
PFASが単なる水道水の問題ではなく、国際規制・健康影響・リスクコミュニケーションまで含む複合的な課題であることが確認された重要な第一歩です。

この会議の設置によって、PFAS問題が「個別の規制対応」から「総合的な政策課題」として正式に位置づけられました。
次の第2回では、PFOS・PFOA以外のPFASへの対応方針や、国内の検出状況のより詳細な分析が行われます。

資料・議事録へのリンク

議事次第・配付資料:https://www.env.go.jp/water/pfas/pfas_00001.html
議事録:https://www.env.go.jp/content/000122946.pdf
委員名簿:https://www.env.go.jp/water/pfas/pfas_meibo.html

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