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ダイキンPFAS公害調停が「申立人1,100人超」に ― 報道では見えにくい4つの論点を整理する

ダイキンPFAS公害調停が「申立人1,100人超」に ― 報道では見えにくい4つの論点を整理する

PFAS(有機フッ素化合物)をめぐる報道が続く中、2026年5月、「ダイキン工業へのPFAS公害調停の申立人が1,100人を超えた」というニュースが大きく報じられました。

しかし実際には現在、“ダイキン×PFAS”をめぐって、性質の異なる2つの案件が同時進行しています。

・摂津市の住民調停
・吉備中央町の企業間調停

この2つは論点が大きく異なりますが、共通しているのは、「過去に製造・使用されたPFASが、時間を超えて現在の企業リスク化している」という点です。

この記事では、環境コンサルティングの立場から、この一連の動きを、

・法的論点
・企業リスク
・規制動向
・今後の実務

の4つの観点から整理します。

製造業の経営・法務・環境部門の方が、「自社にとって何が論点になるか」を考えるための整理材料になれば幸いです。

まず「2つの案件」を切り分ける

現在報じられている“ダイキン×PFAS”には、性質の異なる2つの案件があります。

① 摂津市・住民調停

淀川製作所周辺の住民らによる調停で、2025年12月の第1次申立て(約800人)に、2026年5月に約300人が追加され、申立人は計約1,100人となりました。

相手方はダイキン工業で、申立先は大阪府公害審査会。住民主体のPFAS公害調停としては過去最大規模とみられています。

第1回の調停は2026年7月1日に開かれる予定と報じられています。

② 吉備中央町・企業間調停

こちらは、PFAS汚染源とされた活性炭の出所をめぐる案件です。
活性炭再生業者「満栄工業」が、ダイキン工業や吉備中央町などを相手取り、岡山県公害審査会に調停を申し立てています。

特徴的なのは、PFASをめぐる“企業間”公害調停として、全国初とみられている点です。
再生業者側は、
ダイキンから仲介業者を介して活性炭を受け入れた
と主張。

一方、ダイキン側は、
除去処理に使った活性炭が引き渡された事実は確認できなかった
として関与を否定しています。

つまりここでは、
誰が原因者なのか
その特定自体が争点になっています。

共通しているのは、過去に製造・使用されたPFOAの責任が、時間を超えて現在の経営課題として顕在化しているという点です。

論点1:PFASの「原因者責任」はどこまで及ぶのか

PFOAは「永遠の化学物質」と呼ばれ、自然には分解されにくい性質を持ちます。
だからこそ、製造・使用を終えた後も、過去の排出に起因する責任が長期間問われる可能性があります。
これがPFAS問題の難しさの一つです。

特に注目されるのが、吉備中央町の案件です。
ここでは、

・誰が原因者なのか
・どこから流入したのか
・サプライチェーン上で誰が関与したのか

その特定自体が争点になっています。

つまり、
「サプライチェーンを経由した物質の流れが、後年になって責任論の焦点になる」
可能性が現実化しているわけです。

これはPFASだけでなく、今後の化学物質管理全体に共通する重要論点とも言えそうです。
さらにPFAS問題が長期化しやすい理由の一つは、「分解されにくさ」にあります。
PFOAやPFOSは、自然界で極めて分解されにくく、地下水・土壌・河川などに長期間残留する可能性があります。

このため、

・過去に使用した薬剤
・過去の製造工程
・過去の廃棄物処理

が、何年も経ってから問題化するケースがあります。

特に地下水汚染は、時間をかけて広がることもあり、
当時は問題視されていなかった
というケースでも、後年になって調査・対策・説明責任が求められる可能性があります。
この“時間差”が、PFAS問題を複雑にしている大きな要因の一つです。

論点2:製造業は「自社のPFASリスク」をどう点検するか

ここからは、特に東海・中部圏の製造業の方にとって重要な論点です。
うちはPFASを製造していないから関係ない
そう考えていた企業にとっても、今回の事例は示唆的です。

直接の排出者でなくても、

・原材料
・副資材
・廃棄物
・委託処理
・サプライチェーン

を通じたPFASの流れが、後から責任問題になる可能性があるからです。

PFAS問題では、「製造企業」だけではなく、使用企業・加工企業・廃棄物処理に関わる企業まで含めて、サプライチェーン全体での対応が求められる流れが強まっています。

例えば、

・めっき
・撥水加工
・半導体関連
・樹脂加工
・界面活性剤
・洗浄工程

などでは、過去にPFASを含む薬剤や部材が使われていたケースもあります。

現在は使用していなくても、

「過去に使っていたか」
「どこで使われていたか」
「廃棄物がどう処理されたか」

を確認する必要が出てくる可能性があります。

特に欧州規制や海外顧客対応では、“現在の使用有無”だけではなく、“過去の使用履歴”まで確認対象になるケースも考えられます。

現時点で確認しておきたいポイントとしては、

・過去にPFOA/PFOSを含む薬剤・部材を使っていなかったか
・地下水・土壌の状況を把握しているか
・廃棄物・委託先までPFASの流れを追えるか
・開示要求に対応できるデータが整理されているか
・将来規制を踏まえた方針を持っているか

などが挙げられます。

摂津の案件で住民側が強調していたのは、
「敷地内対策だけではなく、敷地外調査や情報開示も重要」
という点でした。

つまり今後は、
「どれだけ対策費をかけたか」
だけでなく、
「どう説明し、どう協議し、どう開示するか」
その姿勢自体が企業評価につながる局面に入りつつあります。

論点3:PFAS規制は「今」より「これから」で見る

この調停の背景には、国内外で進むPFAS規制強化があります。
日本では、PFOS+PFOA合計50ng/Lの暫定目標値が、2026年4月から水質基準化される予定です。

一方で、土壌・地下水については基準整備が十分ではなく、これが今後の大きな論点になる可能性があります。

欧州では、ECHAによるPFAS包括規制案の審議が進行中。
フランスでは2026年1月から一部製品で規制が施行される予定です。
米国でも、EPAによるPFOA・PFOSの有害物質指定や、関連訴訟が各地で進んでいます。

ここで重要なのは、
「今、何が禁止されているか」だけではなく、
「数年後、何が規制対象になる可能性があるか」を前提に考える必要があるという点です。

現在、日本ではPFOS・PFOAを中心に水道水管理が進んでいますが、今後は土壌・地下水・製品含有・廃棄物管理などへ論点が広がる可能性があります。

また欧州では、特定物質単位ではなく、「PFAS群全体」を広く規制対象とする方向で議論が進んでいます。

これは従来のような、
「この物質だけ対応すればよい」
という考え方から、
「PFAS全体をどう管理するか」
へ移行しつつあることを意味しています。

企業側にも、

・代替物質の確認
・サプライチェーン調査
・データ管理
・説明可能性

が求められる局面が増えていく可能性があります。
国内で土壌・地下水基準が整備されれば、現在は問題化していない過去の汚染が、新たに対応対象になる可能性もあります。

論点4:PFAS問題は「企業説明責任」の時代へ

PFAS問題は、単なる環境規制ではなく、

・サプライチェーン管理
・ESG
・情報開示
・輸出対応
・企業説明責任

とも結びつき始めています。

特に欧州向け製品では、
「PFASを使用しているか」
その確認自体を求められるケースも増えています。

今後は、
「まだ規制されていないから大丈夫」
ではなく、
「将来の変化を前提に、どこまで整理・説明できるか」
が重要になっていく可能性があります。

現在、

・PFAS汚染
・PFOA問題
・PFOS規制
・地下水調査
・土壌汚染
・企業責任
・サプライチェーン管理

などをめぐって、国内外で議論が急速に進んでいます。

特に製造業では、
「自社が直接PFASを製造していなくても、どこまで関係する可能性があるのか」
を把握することが重要になりつつあります。

今後は、“規制対応”だけではなく、“説明責任への備え”も企業実務の一部になっていく可能性があります。

その意味で、今回の調停は単なる個別事例ではなく、
「PFAS時代の企業リスク管理」
そのものを象徴しているとも言えそうです。

おわりに:これは「氷山の一角」かもしれない

今回の調停は、
「過去に製造・使用されたPFASが、どこにどれだけ存在するのか」
を誰も完全には把握できていないという、構造的課題を映し出しています。

摂津市・吉備中央町の事例は、全国各地に眠る潜在的なPFAS課題の「氷山の一角」と見ることもできるかもしれません。

大切なのは、こうした動きを、
「報道を読む」
段階から、
「自社にとって何が論点になるかを判断する」
段階へ進めることです。

そのためには、規制動向を継続的に追い、自社状況に応じたロードマップへ落とし込む視点が欠かせません。

PFAS Solutions+では、規制動向のモニタリングや、企業ごとの対応ロードマップ整理を、中立的な立場から支援しています。

「製造はしていないが、過去の使用が不安」
「今後の規制影響を整理したい」

そうした段階からのご相談も承っています。

※本記事は公開報道等に基づく一般的な情報提供であり、法的助言を目的とするものではありません。個別案件については、弁護士等の専門家へご相談ください。

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